監査役と内部監査担当者にとって、非常に参考になる情報が入っています。
公認会計士・監査審査会は、7月14日に「監査事務所検査結果事例集(令和2事務年度版)」を公表しました。
サイトは、こちらです。
公認会計士・監査審査会とは、監査法人をはじめとする監査事務所が監査の品質を確保・維持しているかどうかを定期的に検査する団体でありまして、この事例集は、公認会計士・監査審査会が、監査事務所の検査で確認された指摘事例をまとめたものになります。
これは、公認会計士・監査審査会が監査法人向けに作成したレポートですが、IPOを目指す会社の監査役や内部監査実務者にとりましても、非常に参考になる情報が入っています。
このレポートは、148ページにもなりますが、IPOを目指す会社関係者の方々にとって特におススメするのが、73ページ以降の「個別監査業務編」です。
この章では、不正事例がいくつか書かれています。
不正事例(出所:監査事務所検査結果事例集(令和2事務年度版)より)
- 被監査会社は、被監査会社との取引のみを営んでいる連結グループ外の取引先に対する業務委託費として期中に費用として処理した金額について、その大部分が取引先の負担すべきものであったことが後に判明したとして、期末決算作業において当該会社に対する貸付金に振り替えている。
- 被監査会社の子会社は、貸借対照表に計上されていた機械装置を売却した際に、通常は「固定資産売却損益」として会計処理するところ、同社は機械装置を商品勘定に振替えた上で、売却額相当を売上高に計上している。など
このレポートは、不正事例の紹介がメインではなく、不正リスクを防ぐための監査の考え方について紹介することがメインになっています。
監査の不備事例(出所:監査事務所検査結果事例集(令和2事務年度版)より)
- 被監査会社は、連結子会社が運営する店舗における設備等の固定資産を保有しており、連結子会社が当該設備等を使用する対価として設備使用料を受け取っている。被監査会社は、設備使用料を売上高に計上しているが、当該設備等に関する減価償却費等の費用は販売費及び一般管理費に計上している。しかしながら、監査チームは、被監査会社が売上高である設備使用料に対応する減価償却費等の費用を売上原価に計上しないことの妥当性について検討していない。
- 被監査会社は、出荷・検収を含む棚卸資産の管理を倉庫事業者に委託している。このような中、監査チームは、受託会社である当該倉庫事業者の業務を被監査会社がどのように利用しているかを理解していない。また、監査に関連する内部統制の理解において、当該倉庫事業者が提供する業務に関連する被監査会社の内部統制のデザインと業務への適用を評価していない。など
このレポートは、会計監査において、どのような視点で監査業務を行うべきなのか、大きなヒントを得ることが出来るレポートになっています。