上場を目指す会社の多くは、業績が伸びるにつれ、組織や従業員数を拡大させる一方、各部門のポジションに理想となる人材不足に悩みます。

そこで、どうしても発生してしまいやすいのが、「横の兼務」または「縦の兼務」です。

ここでは、「横の兼務」または「縦の兼務」について事例を交えながら、紹介させていただきます。

「縦の兼務」と上場達成会社事例

ある組織の長が、下部組織の長を兼任することをいいます。

2019年12月10日に東証2部に上場したテクノフレックスの役員の中には、次のような兼任があります。

川本哲夫取締役兼執行役員:管理本部副本部長⇒財務部長

このようなケースは、山のように存在しておりまして、IPO審査で問題視されるような事は無いと思われます。

しかし、3段階の兼務であれば、問題視されます。

3段階の兼務とは、例えば、テクノフレックスの川本哲夫取締役が財務部の下部組織の課長にもなっているという事です。

つまり、事業部長が下部組織の部長も兼務するというレベルでは問題ありませんが、事業部長&部長&課長、または部長&課長&係長というような場合は、問題視されます(無論、4段階以上も同様です)。

3段階の兼務者が存在する場合、起案者と決裁者が同一人物になるケースが多々存在してしまうと考えられます。つまり、牽制機能が低いと見做されます。さらに、そもそも組織体系に無理があり、人材不足が深刻な状態とも捉えられるため、問題視されます。

「横の兼務」と上場達成会社事例

ある部門の長が別の部門の長も兼任するというイメージになります。

上場達成会社の事例をいくつか見てみましょう(なお、正確に言えば、縦の兼務も含まれています)。

表1 横の兼務事例

兼務者 兼務内容
テクノフレックス 土方直哉取締役兼執行役員 製造部長&調達部長
サーバーワークス 羽柴孝取締役 営業1部長&営業2部長
コーユーレンティア 寺澤重治取締役常務執行役員 営業推進部長&法人営業部長&19-20プロジェクト推進室統括責任者

表1のように製造部門や営業部門内での兼務するという形は、認められることがわかります。

しかし、全く異なる部門、または内部統制上の牽制が機能しない恐れがあるような部門での横の兼務は、解消を求められます。

たとえば、次のような部門間での横の兼務があれば、解消を求められます。

解消を求められる横の兼務例
  • 営業部門長と管理部門長の兼務
  • 経理担当者と財務担当者の兼務
  • 製造業における営業部門と品質管理部門の兼務
  • 発注者と受入・検収者の兼務
  • 経理財務部門と内部監査部門の兼務など

    上で取り上げた部門は、日常業務や運営において、利益や役割が相反する場合があります。

    それを一人で自由に決断できるような状況になれば、最悪の場合、不正に走ってしまう懸念が出てしまいます。

    また、経理財務部門と内部監査の兼務については、理由が若干異なります。もし、経理部門が内部監査をしている場合、他の部門が経理部門への監査が出来ていれば、解消を求められる可能性が低下しますが、現実的には難しいと考えられているためです。

    兼務は最大、どこまで認められるのか

    IPO審査で横の兼任や役職がいくつまで許されるのかは、不明です。

    2019年以降のIPOを調査すると、2019年6月19日にマザーズへ上場したSansan株式会社の富岡圭取締役の兼務状況が最大であったように見受けました。

    Sansan株式会社のⅠの部によりますと、富岡圭取締役は、以下のような部門の責任者になっています。

    • Sansan事業部長
    • マーケティング部部長
    • サポート部部長
    • Global Department General Manager
    • Global Sales Development部部長

    凄い数の肩書ですね。

    しかし、上場申請翌期には、1組織だけの責任者へ集約されていました。

    まとめ

    上場を目指す会社組織にありがちな「縦の兼務」と「横の兼務」について紹介させていただきました。

    縦や横の兼務は、よくあるケースです。

    しかし、特に横の兼務は、理想形から言えば、満足な形とは言えず、一時的な措置として考える必要があるでしょう。

    したがいまして、IPOの審査では、縦や横の兼務者が発生してしまった経緯、兼務解消を目指す活動内容や解消目標時期などを問われる可能性がありますので、審査前には想定Q&Aを準備しましょう。

    上で取り上げましたSansan株式会社の富岡圭取締役に対しても、そのような質問があったと推察します。

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