コンプライアンス体制の意味
大企業では、法務部門とコンプライアンス部門の2つの部門があります。
法務部門とコンプライアンス部門は、非常に似た性質を持つ部門ですが、業務が若干異なります。
ブログの中の人が勤めていた証券会社では、主に次のような業務で区分されていました。
法務部門 | コンプラ部門 | |
---|---|---|
契約書作成支援 | 〇 | – |
訴訟案件、弁護士・官公庁との交渉 | 〇 | – |
インサイダー取引監視、リスクマネジメント | – | 〇 |
情報流出防止、内部通報制度、ハラスメント | – | 〇 |
コンプライアンス組織は、単なる法令遵守のためだけにあるのではなく、会社のリスク低減のために幅広く対応しています。
継続した企業経営を目指すにあたって、極めて当たりまえのことですが、コンプライアンス体制の充実は必須です。コンプライアンス体制が脆弱であれば、以下のようなリスクが高まります。
- 損害賠償賠償などの法的責任リスクが増大する。
- 取締役は、株主代表訴訟で法的責任を問われるリスクが増大する。
- 信用失墜により、売上が低下し、社会的責任を負うリスクが増大する。
- 行政からの罰則・処分により営業停止するリスクが増大する。など・・・
コンプライアンス部門がカバーしなければいけない法令とは、広範囲になります。
- 会社法・金融商品取引法・労基法・下請法・独占禁止法・特許法等、どの会社でも共通して遵守しなければいけない法令。
- 宅地建物取引業法・建築業法・電気工事業法・古物営業法等、それぞれの会社が事業を行う上で必要とする法令。
コンプライアンス体制に対する調査
新規上場ガイドブックには、上場審査時にコンプライアンスに関する組織や意識に関して、次のような調査確認を行うと記載されています。
- 社長(CEO)面談では、審査担当者が申請会社に赴き、社長(代表者、経営責任者)へのヒアリングを行います。この席では、(~中略~)コンプライアンスに対する方針・現状の体制及び運用状況、適時開示に関する体制及び内部情報管理に関する体制などについてヒアリングを行います。
- 独立役員面談では、(~中略~)経営者のコンプライアンスに対する意識(~中略~)についてどのように認識しているのかヒアリングを行います。
(出所 東京証券取引所 「新規上場ガイドブック」より抜粋)
コンプライアンス体制強化
IPOを目指す会社にとって必要となる法務・コンプライアンス体制とは、以下のような目的をもった体制になります。
- 社内業務の運営全般が法令遵守していることを確認・管理する体制
- 自社の取引が、不利または不公正な取引になることを防止する体制
- 自社が展開する事業に関連する知的財産を保全、また他社を監視する体制
これらの体制の維持強化をするためには、顧問弁護士などとの連携は必須になります。
また上場審査に備えて、次のような対応やアピールできるようにすることを強くおススメします。
- 法務部門の立場が、社内において高いことがわかるようにしましょう。過去に不祥事を起こした会社に共通しているのは、法務・コンプライアンス組織が脆弱、もしくは社内における立場が低い文化を持っていました。審査等では、社内の法務・コンプライアンスの統括部門が社内において”うるさい組織””面倒な組織”であることをアピールできるようにしましょう。
- 「会社が遵守しなければいけない法令とは、何か」というのは、審査における定番の質問です。その法令を会社が認識していない場合、審査では大きなネガティブ材料になってしまいます。
- 基本取引契約書や雇用契約書などのひな型の作成を顧問弁護士や社労士に確認しているかどうか、また法令改正等にあわせて内容を適宜改訂しているかどうか、さらに取引先との交渉時において、ひな型と異なる内容で契約締結を求められた場合の社内フローを確定する必要があります。
IPO AtoZは、コンプライアンスに関する情報が満載です。
IPO AtoZでは、法務・コンプライアンスに関する参考事例や基本的な用語などの情報を掲載しています。
- Ⅰの部や有価証券届出書の記載内容から法務・コンプライアンスに関して述べたブログ IPO失敗事例
- 法務・コンプライアンスに関する最新情報 IPO最新情報
- IPOに接すると初めて知るような法務・コンプライアンス関連用語 法令・規制関連用語
法務・コンプライアンス体制に関するおススメ本
某証券会社の公開引受部のオフィスには、法務・コンプライアンス関連の書籍として、次のようなものがあります。
実務に役立つ 企業法務のポイント55
直前々期の期初には、「うちの会社の事業では、何の法令を遵守しなければいけないのか」というリストアップしなければいけません。この本を参考にすれば、その作業が簡単にできるようになります。
「ハンドブック企業法務」「コンプライアンス・内部統制ハンドブックII」
某証券会社の公開引受部には、部ではなく、それぞれの課でハンドブックを保有しています。
企業法務に関するハンドブックは、IPOを目指す会社では必須アイテムです。この2冊のうち、最低どちらかの購入を強くおススメします。
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