配当還元方式とは
非上場会社株式を相続や贈与、遺贈によって、同族株主等以外の人が取得した場合の評価方式です。
配当還元方式は、その株式を所有することによって受け取る一年間の配当金額を、一定の利率(10%)で還元して元本である株式の価額を評価する方法です。
配当を資本に還元して算出する株価算定方式であり、比較的割安になりやすい株価算定方式です。
国税庁は、配当還元方式を使った評価方式についてタックスアンサー「No.4638 取引相場のない株式の評価」で説明しています。
それはこちらになります。
株価算定方式の種類
株価算定方式は、配当還元方式以外にもあります。ぜひご参照ください。
配当還元方式の計算方法
配当還元方式は、次のような式で算出されます。
【配当還元方式による株価】=【1株あたりの年間配当額】/10%×【1株当たりの資本金等の額/50円】
- 年間配当額が2.5円未満(無配も含む)の場合、【1株あたりの年間配当額】は、2.5円となる
配当還元方式での売買事例
配当還元方式は、税務上、非上場会社株式を相続や贈与、遺贈によって、同族株主等以外の人が株式を取得した場合の評価方式になりますが、それとは別の目的での株式譲渡やストックオプション発行時の株式時価評価時に配当還元方式を利用する事例があります。
IPOを達成した会社は、株式譲渡や第三者割当、ストックオプション発行時などの際、様々な方式を使って株価算定をしていますが、配当還元方式を使っているケースは意外と少数派です。
2019年と2020年に東証へIPOを達成した会社は、計174社になりますが、その中で7社だけが配当還元方式を使って算定しておりますが、配当還元方式だけで算定した事例は、リックソフトの1例だけでした。
表 配当還元方式を採用した事例(2019年と2020年にIPOした会社)
社名・上場日 | 算定方法 | 内容 | 株式譲渡:移動前⇒移動後 SOP/第三者割当:割当対象者 |
移動理由など |
---|---|---|---|---|
SANEI (2020/12/25) |
配当還元・類似業種比準価額・純資産方式による算出価格 | 株式譲渡 | 元従業員⇒役員・資本的関係会社役員 | 経営参画の意識向上のため |
いつも (2020/12/21) |
配当還元・純資産・類似業種比準方式による算出価格 | 株式譲渡 | 役員⇒資産管理会社 | 資産管理会社への譲渡 |
アディッシュ (2020/3/26) |
配当還元方式・簿価純資産額方式による算定価格 | 株式譲渡 | 元従業員⇒役員 | 所有者の退職による |
SOP | 役職員/子会社役職員 | – | ||
日本インシュレーション (2020/3/19) |
配当還元・類似業種比準方式・売買実例による算出価格 | 株式譲渡 | 取引先⇒取締役等 元役員⇒役員 元役員の妻⇒従業員持株会 元従業員⇒従業員持株会等 |
所有者の意向による |
ウイルテック (2020/3/6) |
配当還元方式・時価純資産価額方式による算出価格 | SOP | 役職員 | – |
第三者割当 | 社長 | – | ||
アミファ (2019/9/19) |
配当還元・純資産価額・DCF方式による算出価格 | SOP | 役職員 | – |
第三者割当 | 監査等委員である取締役 | – | ||
リックソフト (2019/2/26) |
配当還元方式による算出価格 | 株式譲渡 | 大株主⇒取締役 | 当事者間の事由による |
※ SOP:ストックオプション
配当還元方式は、出来るだけ株価を安価に設定したい場合に利用するケースが中心になります。
例えば、ベンチャーキャピタルや法人に対して第三者割当を行う場合には、出来るだけ高い株価で株式を希望するため、採用しているケースは無く、役職員への第三者割当時またはストックオプション発行時など、株式を買い取る側または割当対象者にとって、有利な株価にしたいというケースに採用されているようです。
IPOAtoZによるサービス
IPOAtoZでは、IPOを達成した会社のⅠの部やプレスリリース等のデータを収集しています。
この中には、IPOの前にどのような株価算定方式を参考にして、株式譲渡、ストックオプション発行、第三者割当等を行ったのかというデータが入っています。
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