役員報酬の算定については、カルロスゴーン事件以降、役員報酬の決定プロセスについて関心が強まり、会社法でも改正がされました。
こちらでその内容を簡単に説明しています。
IPO審査においては、特にオーナー社長の報酬が高額な会社、また監査役・社外取締役の報酬が低額な会社に対して議論が発生しがちになります。
IPOAtoZでは、Ⅰの部に記載している役員報酬についてデータを収集しています。
ここでは、2019年以降、このブログを作成するまでにIPOを達成した197社の役員報酬についてまとめてみました。
「IPOを目指す会社の役員報酬の相場って、どの程度なのか?」「非常勤役員の役員報酬の相場って、どの程度なのか?」「常勤監査役の相場って、どの程度なのか?」というような疑問に対する参考になれば、幸甚です。
取締役(社外取締役除く)の役員報酬
197社の取締役(社外取締役除く)は、合計で808名分の報酬について開示がされていました。
つまり、いわゆる社内取締役の報酬として、ほぼ捉えることが出来ると考えられます。
報酬等の総額平均は、1,785万円でした
取締役(社外取締役除く)の役員報酬については、次のようになりました。
表1 取締役(社外取締役除く)の役員報酬
項目(カッコ内は、社数) | 結果 |
---|---|
報酬等の総額平均(197社) | 1,785万円 |
基本報酬・固定報酬平均(197社) | 1,646万円 |
ストックオプション報酬支給平均(197社の内6社) | 619万円 |
役員賞与支給平均(197社の内26社) | 372万円 |
評価・業績連動報酬平均(197社の内11社) | 454万円 |
退職慰労金平均(197社の内22社) | 270万円 |
非上場企業の役員報酬は、固定報酬以外の報酬に対する損金参入が困難なこともあり、ほとんどの会社は基本報酬・固定報酬しか支給していませんでした。
また、報酬等の総額平均については、ひょっとすると1億円以上の高額所得者が平均値を上げていると考え、197社中5名の高額所得者の合計(625,540千円)を除外して、報酬等の総額平均を計算し直すと、1,722万円になりました。
なお高額所得者等のランキングについては、こちらで説明しています。ご参考ください。
監査役(社外監査役除く)または、監査等委員である取締役(社外取締役除く)の報酬
監査役会設置会社は、常勤監査役を選任しなければいけません。
監査等委員設置会社の場合は、法律上では常勤の監査等委員である取締役の選任を求めておりませんが、一定規模以上の企業の場合は、常勤の監査等委員である取締役の選任を求められるという情報があります。
常勤役員の報酬額は、非常勤役員よりも高い報酬支払をすることが当然となっていますが、「常勤監査役の報酬額」または「常勤の監査等委員である取締役」として区分した開示事例はありません。
報酬等の総額平均は、548万円でした
常勤役員の報酬として、それに似た区分として「監査役(社外監査役除く)」または「監査等委員である取締役(社外取締役除く)」として区分した開示事例が2019年以降、このブログを作成するまでにIPOを達成した197社の内、75社ありましたので、表2にまとめました。
「常勤監査役の報酬額」または「常勤の監査等委員である取締役」に対する報酬を決定する際にご参考ください。
表2 監査役(社外監査役除く)・監査等委員である取締役(社外取締役除く)の報酬
項目(カッコ内は、社数) | 結果 |
---|---|
報酬等の総額平均(75社) | 548万円 |
基本報酬・固定報酬平均(75社) | 537万円 |
ストックオプション報酬支給平均(0社)※ | – |
役員賞与支給平均(75社の内5社) | 44万円 |
評価・業績連動報酬平均(75社の内2社) | 58万円 |
退職慰労金平均(75社の内6社) | 37万円 |
※ ストックオプションを付与された人がゼロではなく、費用計上が必要となるようなストックオプションを支給した会社がゼロである事に留意が必要です。
IPOの審査では、常勤監査役の報酬額が極めて安価な場合、議論になりやすくなることに注意が必要です。
社外取締役の報酬
IPOを目指すにあたり、社外取締役を選任しなければいけません。
社外取締役を選任するにあたっては、人材紹介会社や人脈を駆使して選定することになりますが、コストは大きな関心事だと思います。
社外取締役(監査等委員である取締役除く)として区分した開示事例が2019年以降、このブログを作成するまでにIPOを達成した197社の内、61社ありましたので、表3にまとめました。
報酬等の総額平均は、275万円でした
表3 社外取締役(監査等委員である取締役除く)の報酬
項目(カッコ内は、社数) | 結果 |
---|---|
報酬等の総額平均(61社) | 275万円 |
基本報酬・固定報酬平均(61社) | 269万円 |
ストックオプション報酬支給平均(0社)※ | – |
役員賞与支給平均(61社の内1社) | 150万円 |
評価・業績連動報酬平均(61社の内2社) | 58万円 |
退職慰労金平均(61社の内4社) | 15万円 |
※ ストックオプションを付与された人がゼロではなく、費用計上が必要となるようなストックオプションを支給した会社がゼロである事に留意が必要です。
社外監査役または、監査等委員である社外取締役の報酬
IPOを目指すにあたり、社外監査役または監査等委員である社外取締役を選任しなければいけません。
これらの役員を選任するにあたっては、人材紹介会社や人脈を駆使して選定することになりますが、コストは大きな関心事だと思います。
社外監査役または、監査等委員である社外取締役として区分した開示事例が2019年以降、このブログを作成するまでにIPOを達成した197社の内91社、227名ありましたので、表4にまとめました。
報酬等の総額平均は、309万円でした
表4 社外監査役または、監査等委員である社外取締役の報酬
項目(カッコ内は、社数) | 結果 |
---|---|
報酬等の総額平均(91社) | 309万円 |
基本報酬・固定報酬平均(91社) | 304万円 |
ストックオプション報酬支給平均(91社の内2社) | 45万円 |
役員賞与支給平均(91社の内1社) | 100万円 |
評価・業績連動報酬平均(0社) | – |
退職慰労金平均(91社の内9社) | 32万円 |
役員報酬の開示には、「常勤」「非常勤」という勤務形態による区分がされていません。したがいまして、表4の結果は、227名分の報酬額にもとづいて算出いたしましたが、非常勤と常勤が区別がされていないため、残念ながらIPO準備会社にとって、表4の結果はあまり参考にならないのではと考えています。
非常勤の監査役または監査等委員である社外取締役の参考値は、表4よりも表3の方が適当であると考えられます。
IPOAtoZのサービス
ここで取り上げた内容は、あくまでも197社の役員報酬の平均値にすぎません。
経営者が関心をもつのは、自社の規模や事業内容、目標とする市場などが適合した平均値やデータであると考えます。
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