ストックオプションの種類
今日、役職員に対して割り当てるストックオプションには、大きく分けて3つのタイプがあります。
- 税制適格ストックオプション
- 税制非適格ストックオプション
- 有償ストックオプション
IPOを目指す会社のほとんどが採用しているストックオプションが税制適格ストックオプションであり、近年、有償ストックオプションを採用しているケースも増加していますが、税制非適格ストックオプションを採用しているケースは少数派です。
なお税制適格ストックオプションに関する説明は、こちらで行っております。ご参考ください。
Freeeの目論見書チェック
2019年12月17日に東証マザーズへ上場したFreee株式会社は、IPO準備段階で複数回に渡って、1円ストックオプションを発行し、役職員に割り当てています。
1円ストックオプションとは、権利行使価格が1円/株という新株予約権を役職員に割り当てるストックオプションであり、税制非適格ストックオプションの中の1つの形態になります。
1円ストックオプションのデメリット
1円ストックオプションは、上場会社で多く採用されていますが、なぜ非上場会社であまり採用されていないかというのは、主に以下のようなデメリットがあるためです。
- 費用が発生する
- ストックオプションを発行した時点の株価(時価)から1円を除した額に対して、費用計上が必要になります(freeeは、累計320百万円強)。
- 役員に付与した1円ストックオプションに係る費用については、損金算入できません(非上場会社の場合は、この費用に対して損金算入の対象となりません)。
- 一方、税制適格ストックオプションは、費用計上を要しません。
- 権利行使時に所得税が課税される
- 権利行使をした時点の株価(時価)と権利行使価額との差額が給与所得となり、所得税が課税されます。
- 権利行使をした時点ということは、単に株式を得た時点であり、金銭的なメリットを享受した時点ではありません。
- 給与所得に該当するということは、毎月の給与や賞与の税率にも影響が出る可能性があるということになります。
- 権利行使をする人の課税額の計算や徴収について、会社の実務部門(人事総務部門?)の業務が煩雑になります。
- 一方、税制適格ストックオプションは、権利行使時に所得税課税義務がなく、さらに分離課税のため、給与や賞与の税額に影響がありません。
1円ストックオプションは、権利行使価格が1株につき、たった1円のため、経済的メリットが大きいストックオプションであると思われがちです。
上場会社の場合は、ストックオプションの発行時点で株価が高値で形成されていることが多いため、1円ストックオプションが税制適格ストックオプションより、経済的メリットが多くなり、有効な手段になり得る会社が多々想定されます。
一方、非上場会社の場合は、そもそも株価(時価)が安価であることが多いため、税務・会計・事務作業量等、総合的に判断すると、1円ストックオプションは税制適格ストックオプションより、経済的メリットが少なくなるケースが多く発生します。
新株予約権の贈与
税制適格ストックオプションとは、一般的にIPOに近づけば近づくほど、インセンティブが低下するというデメリットがあります。Freeeが1円ストックオプションを活用した大きな理由は、この点を懸念したためであることが推察できます。
税制適格ストックオプションのデメリットと1円ストックオプションのデメリットをある程度補完した形の資本政策を行った事例を紹介します。