東証の証券市場は、東証1部、2部、ジャスダック、マザーズ(以下「4市場」といいます)という市場に加え、「TOKYO PRO Market(以下では「TPM」といいます)」という市場で構成されています。

株式会社global bridge HOLDINGS(以下「global」といいます)は、TPMへ2017年10月17日に上場し、2019年12月23日に東証マザーズへ上場を果たしました。2年ぶり2社目の事例です。

ここではTPMに関することを述べさせていただきます。

TOKYO PRO Marketとは

TPMは、一般投資家が参加できない市場であり、機関投資家等のプロ投資家だけが参加できる市場です。

TPMへの上場と4市場への上場について、主な違いは、次の表になります。

表1 TPMと4市場の主な違い

4市場 TPM
主な投資家 一般投資家 プロ投資家
形式要件 ある ない
監査証明 2期分 1期分
四半期開示/内部統制報告書 義務 任意
上場審査 ある 実質的にない

TPMへの上場は、4市場への上場と比較すると、ハードルが低くなることがわかります。

TPMは、プロの投資家しか株式の売買が出来ないこともあり、株式の売買が活発に行われているとは決していえない市場です。なお、TPM市場における2019年の一日平均売買代金は、11百万円のみにすぎない状況です。

実質的にIPO準備の開始当初からTOKYO PRO Marketへの上場を目標としている会社はゼロと言って過言ではありません。引受審査もしくは上場審査をクリア出来なかった会社ばかりが上場している市場であることは、間違いないと思います。

IPOを目指した当初に作成したスケジュール通りにIPOを達成した会社は、間違いなく少数派です。つまり多くの会社は、上場延期の経験をすることになりますが、その際にTPMを活用する選択肢が出てきます。

TOKYO PRO Marketへ上場するメリット

PMへ上場するメリットと留意点を以下にまとめます。

TPMへ上場する主なメリット
  1. 金融機関や取引先からの信用力アップを期待できる。
    • TPMへ上場すると、財務諸表に対して監査法人による監査証明が必要となり、適時開示も必要となります。会社の情報を定められた規則に基づいて開示している会社は、金融機関や取引先からの信用が高くなることを期待できます。
  2. 4市場への上場に向かって、実戦的な準備期間として位置づけできる。
    • TPMへ上場すると、上場会社として東証が定めた規則で開示等が必要になります。非上場会社として、水面下で任意に準備するよりも、はるかに実戦的であり、内部管理体制の整備に向けて有効な期間になると考えられます。
  3. 東証による4市場への市場変更に向けたサポートを受けることができる
    • 市場変更に関する相談を受けるサポートだけでなく、上場会社の成長支援として、ビジネスマッチングや上場会社同士の交流イベントなどに参加できるようになっています。また上場制度の変更などの最新情報を東証から入手できるようになります。

この中で最も大きなメリットは、信用力の向上であると思います。特に金融機関からの信用力は、非上場会社のときよりも上がることが期待でき、借入に対する個人保証の解除や借入金利の低下の効果を期待できます。

TOKYO PRO Marketへ上場するデメリット

TOKYO PRO Marketへ上場するデメリットや留意点は、主に次のようになると考えます。

TPMへ上場する主なデメリットや留意点
  1. 4市場への上場が楽になるのではない
    • TPMは前進のTOKYO AIM取引所が2009年に開設して以来、10年以上の歴史がありますが、globalでようやく2社目です( なお、後に2020年3月29日にニッソウ株式会社が 名証セントレックスへ上場しました)。その反面、4市場への上場以外の理由で、TPMから退場した会社数は、8社になります。この現状をみると、TPMへ上場することによって、4市場への上場の早道になるとは、いえないようです。
  2. 経済的メリットは、期待しない方がよいかもしれない
    • TPMの上場維持コストは、4市場の上場コストと比較すると低い額になります。しかし適時開示に必要な体制や監査法人による監査コスト等、一定のコストが必要になります。
    • 4市場への上場を前提に作成していた公募株式数や売出株式数は、大幅に減少せざるをえないと考えられます。資本政策や投資計画は、大幅に見直す必要が出てきます。
  3.  役職員へのインセンティブプランが利用できない
    • 上場準備段階で発行していたストックオプションは、権利行使出来ません。従業員持株会の運用は、非上場会社における運用と変わりません。つまり、役職員に対するインセンティブプランは、非上場会社の時のままで変わりません。

まとめ

引受審査または上場審査が不調な結果になってしまった場合、次のような選択肢があります。

IPOの審査が不調に終わった場合の選択肢
      1. 上場申請期を1期延期して、IPO審査を再チャレンジする
      2. 主幹事証券会社を変更してIPO審査に再チャレンジする(原則、申請期は2期間以上延期になります)
      3. 上場準備を一旦中断または断念する
      4. TOKYO PRO Marketで上場する

上の4つの選択肢の中では、「④TOKYO PRO Marketで上場する」という選択は最も少数であることは間違いないと思われます。

TOKYO PRO Marketは、上場申請から10営業日程度で上場承認を受けることができます。

したがいまして、期越え上場のスケジュールでIPOを目指した会社以外は、IPOの審査をパス出来なかった場合に上場申請期の延期をせずに、上場が不可能ではない市場であるということになります。

ブログの中の人は、不動産業や卸売販売業など信用力アップが重要な会社、また銀行からの借入に対する負担が大きな会社などは、TOKYO PRO Marketへの上場メリットがあると考えています。