大規模な会計不正を行い続けたグレイステクノロジー株式会社は、証券市場から速攻で退場することになりました。

そのグレイステクノロジー株式会社は、財務局から2022年7月28日を期限とする有価証券報告書の提出を命令されていましたが、その期限日になんとか提出できました。

その数は、有価証券報告書1部、4年分の訂正有価証券報告書、10四半期分の訂正四半期報告書という計15部のビックプロジェクトでした。

関係者の皆様は、大変だったと思います。本当にお疲れ様でした。

まず、そこまでに至る出来事を説明させていただきますと、ざっくりと↓のとおりになります。

年月日 出来事
2021/4/13 会長逝去
2021/11/9 特別調査委員会の設置及び2022年3月期第2四半期決算発表の延期を公表(粉飾決算の疑いがある旨を公表)
2021/12/17 代表取締役の異動及び取締役の辞任
2022/1/27 上場廃止の見込みを公表
2022/1/27 特別調査委員会の調査報告書を公表
2022/2/22 証券取引等監視委員会による課徴金納付命令の勧告及び財務局から有価証券報告書等の訂正報告書の提出命令の勧告を受ける
2022/2/28 上場廃止
2022/5/31 株主から集団証券訴訟を提起される
2022/7/28 2022年3月期 有価証券報告書提出

会社がこんな状態になれば、役職員の方々は、1日も早く、こんな会社から逃げ出したいと思うのが普通だと思います。

会社の実態がわからない上、大規模な訴訟を受ける事が確定的であるため、役職員の皆様は、不安でいっぱいだと思います。

ブログの中の人は、てっきりグレイステクノロジーは経営破綻しており、有価証券報告書を出すような状態ではないと予想していましたが、その予想を良い意味で完全に裏切る形になりました。

ここでは、グレイステクノロジー株式会社が7月28日に提出した2022年3月期の有価証券報告書について取り上げさせていただきます。

なお、本ブログは、引用以外、個人の想像が多いため、保証等は一切できない事にご留意くださいますようお願いします。

業績はどうだったのか?

足元の業績

↓に2022年3月期の四半期別の売上と営業利益の推移について簡単にまとめました。

1Q 2Q 3Q 4Q 通期
主な出来事 会長急逝

粉飾公表

社長辞任

上場廃止
売上 748百万円 926百万円 815百万円 796百万円 3,285百万円
営業利益 123百万円 186百万円 168百万円 102百万円 579百万円

(出所:グレイステクノロジー株式会社 2022年3月期有価証券報告書より)

グレイステクノロジーは、2022年3月期の下期に粉飾、社長辞任、上場廃止がありましたが、黒字基調であるようです。

さらに通期の決算は、前年比、売上高、営業利益、経常利益で増収増益に終わっています。

特別損失として、不正会計を調査するための特別調査関連費用として、317百万円を計上していますが、当期純利益は1億円を超える黒字でまとめています。

そして有価証券報告書には、以下のような文面があります。

「当社の取引は、受注から売上計上までの期間が比較的短く、また、企画・構成、編集、制作及び翻訳の途中で仕様変更・内容変更が発生する場合もあるため、受注実績の記載を省略しております。」

つまり4Qの売上には、粉飾が公表された後でも、受注を獲得し、売上計上できた額が多いと思われます。

また「これまでのところ、当社の業績に大きな変調は見受けられません。」という文面が有価証券報告書にあります。

特に粉飾が公表された2021/11/9に激震が走り、役職員の皆様に大きな不安が出たと思いますが、これら、この2つの文面からは、営業活動自体は、引き続き活発に行われているように見受けます。

リスク

ブログの中の人が考えるグレイステクノロジーに関するリスクは、次のような3点です。

① ダイキン工業株式会社との取引継続リスク

業績面で最もリスクが高そうなのは、2022年3月期売上高3,285百万円の内、ダイキン工業株式会社向けの売上が1,592百万円(2022年3月期売上高の約48%)も占めている点です。

2022年3月期のグレイステクノロジーが増収に終わった理由は、ダイキン工業株式会社向けの売上が伸長(前年度272百万円、当年度1,592百万円)したことが最も大きな理由のようです。

今後、ダイキン工業株式会社がグレイステクノロジーへ引き続き発注するのか不明ですが、グレイステクノロジー存続のためには、最重要であることは間違いなさそうです。

なお、ダイキン工業との取引については、リスク情報等に記載されていないため、引き続き良好な関係にあるのかもしれません。

② 訴訟リスク

グレイステクノロジーに対して、集団証券訴訟が提起されています。その額は約5億4千万円になるようです(こちらになります)。

訴訟は、これだけに終わらない可能性があります。

山崎・丸の内法律事務所は、第二次訴訟を行う検討をしているようです。

③ 資金繰り・キャッシュフロー・財務リスク

キャッシュフローを見てみますと銀行への返済を軸にして、現預金が20億円超、減っています。長期借入金は返済予定日から前倒しして返済しているようです。

銀行から返済を求められ、借入・借り替えが不調に終わった可能性も否めません。

バランスシートは「仮受金(2,008,087千円)」が目立ちます。この金額は、粉飾の元となった偽装入金の金額になります。

当期純利益が黒字であっても、営業CFが赤字であり、前年度も架空売上に係る入金額が無ければ、営業CFは実質的に赤字でした。

他にも気になるところはいくつもあります。

例えば仕入です。

前年度より原価が倍増しているため、仕入も増えると思います。しかし仕入債務が前年度より減っています。

仕入先から支払サイトの短縮を迫られた可能性がありますね。

いずれにせよ20億円近いキャッシュが手元にあるため、2億円の借入を返済し、訴訟に全面敗訴したとしても、即時倒産というのは無さそうです。

しかし、グレイステクノロジーは、粉飾決算で大変な状況下にありますが、粉飾決算の元である偽装入金のキャッシュによって会社が支えられているというのは、悲しい現実ですね。

なお、同社は、子会社の印刷事業等を774百万円で譲渡し、手元のキャッシュをさらに手厚くしているようです。

従業員はどうなっているのか?

不正会計が発覚したことにより、従業員は、どうなったのかを確認することにしました。

グレイステクノロジーの有価証券報告書等を比較すると、↓のようになりました。

2021/3/31現在 2022/3/31現在
MMS事業 5(0) 22(1)
MOS事業 132(15) 120(14)
全社(共通) 18(0) 11(0)
合計 155(15) 153(15)

※ カッコ内は、臨時雇用者数

(出所:グレイステクノロジー株式会社 2021年3月期及び2022年3月期有価証券報告書より)

勝手な予想ですが、MOS事業の人員の一部をMMS事業へ転属・転勤させたように思えます。

この程度であるようなので、事業部門(MMS事業及びMOS事業)については、大きなリストラや大規模な退職は無かったように思われます。

経理や総務等の管理部門の人員は、おそらく全社(共通)に該当すると思われますが、18人から11人へ激減していますね。

11名を全て管理部門の人員として考え、その半分が経理・財務のスタッフとして推定すると5~6人で日頃の決算業務、特別調査、有価証券報告書作成への対応したことになります。それは、相当な激務だったと思われます。

この経理・財務スタッフは、転職市場で引っ張りだこかも知れませんね。

余計なお世話かも知れませんが、「当社及び連結子会社には労働組合は結成されておりませんが、労使関係については円満に推移しております。」という一文につきましては、少し疑問を感じてしまいました。

コーポレートガバナンスはどうなったのか?

この会社が粉飾した原因は、前会長の資質を起因として、コーポレートガバナンスが無茶苦茶になっていたことが明確です。

関連したブログがこちらになります。ぜひご参考ください。

グレイステクノロジー粉飾事件によるIPO準備への影響

粉飾が発覚した後、コーポレートガバナンスがどのように変わったのかをいくつか説明させていただきます。

取締役会

会長が急逝し、そして社長が辞任するなどがあり、取締役会のメンバーが取締役3名(内、社外取締役2名)、監査役3名と会社法上、最小限の構成になりました。

各役員に対し、調査報告書において記載されている内容について、以下に示します(F氏、G氏、H氏は、調査報告書で書かれていた名称)。

役員 調査報告書における主な言及
代表取締役社長

大池 信之(F氏)

  • 前会長より個人的な投資資金の借入れとして200,000,000 円を受領しており、受領後には、実際に同金員全額を自身の証券会社口座に振り込んでいた。
  • 経理に関する業務を分掌する業務執行取締役としての責任を負っていたものというべきである。
  • 法令遵守義務に違反したとは認められない。
  • 他の役職員が売上の前倒しを行っていることについて認識していたとは認められない。
  • 管理部長としての職務遂行について義務違反があったとまで断定することはできない。
社外取締役

村田 斉(G氏)

  • 前会長が営業担当役員に対して恫喝するような言葉を浴びせているのを社外取締役らが制止しなかったこと等の事実を摘示して、前会長に対する監視機能を発揮しなかった
  • 本売上前倒事案における不適切な会計処理を認識していたとも、認識すべきであったとも認められないから、監視・監督義務に違反したとは認められない。
  • 善管注意義務違反があったとは認められない。
  • 在任期間が長いため 前会長や経営陣からの独立性が相当程度減退していた。
社外取締役

藤原 達也(H氏)

  • 架空売上計上を認識していたと思われるメールは検出されていない。
  • 不適切な会計処理を認識していたと思われるメールは検出されていない。
  • 善管注意義務違反があったとは認められない。
  • 就任後間もなく在任期間が短いため未だ監視機能を期待できる状況に至っていなかった。

(出所:グレイステクノロジー株式会社 特別調査委員会の調査報告書を元にIPOAtoZ作成)

内部監査

グレイステクノロジーの内部監査は、問題がある部署や内容に関し、わざとスルーしていたという内部監査でした。

つまり、内部監査の機能が、崩壊状態にありました。

そこで有価証券報告書には、↓のような文面が存在します。

内部監査室のサポートとして、公認会計士資格を有する外部専門家と業務委託契約を締結し、内部監査の有効性を高めております。

(出所:グレイステクノロジー株式会社 2022年3月期有価証券報告書より)

内部監査につきましては、一定の改善を進めたようです。

まとめ

グレイステクノロジー株式会社が7月28日に提出した2022年3月期の有価証券報告書について紹介させていただきました。

グレイステクノロジーに関する今後についての素人予想をさせていただきます。

すでに株主からの訴訟が提起されておりますが、次にグレイステクノロジーが前会長の相続人に対し、相続財産に関する訴訟を提起するものと予想します。

ひょっとすると相続人側がグレイステクノロジーに対し、偽装入金(約20億円)の返済(この偽装入金額は、ほぼ前会長の個人資産のようです)を求める反訴を行うかも知れません。

しかし、この粉飾のシナリオの、ド真ん中に前会長の妻がいるところが相続人側の弱点だと思います。

ちなみに前会長の妻が実質的にグレイステクノロジーの経理を担っていたようです。

無論、その他の元役員に対しても、訴訟を提起する可能性があると思います。

ブログの中の人は、株を買っておけばなぁと後悔しています。

大株主の中に”山師”も連なり、株主になっておけば、色々な人間模様を見る事が出来、深い人生勉強ができたかもしれません。

グレイステクノロジーの最後の株価は、18円でした。

一方、1株当たり純資産額(BPS)は、65.63円、1株当たり当期純利益金額(EPS)は、3.81円でした。

ホルダーの皆様、おめでとうございました!!!

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