東証は、2020年2月に「新市場区分の概要等についてを公表し、2022年4月に現在の5つの市場区分から3つに削減することに向けて活動を進めると発表しました。

このブログでは、その3つの市場の内、マザーズ市場とジャスダックグロース市場(以下では「JQグロース」といいます)と同様のポジションになるグロース市場(仮称)について、まとめました。

グロース市場のコンセプト

グロース市場は、次のようなコンセプトでスタートする予定です。

特に重要なところは、赤字の箇所であると東証は、述べています。

グロース市場のコンセプト

高い成長可能性を実現するための事業計画及びその進捗の適時・適切な開示が行われ一定の市場評価が得られる一方、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業及びその企業に投資をする機関投資家や一般投資家のための市場

マザーズとジャスダックグロース市場には無いコンセプトとしては、特に「進捗の適時・適切な開示」と「リスクの高い企業」というところです。

グロース市場の新規上場基準

グロース市場の新規上場基準(形式要件)は、マザーズとJQグロースと以下のような点で異なります。

表 新規上場基準の違い

グロース市場 マザーズ JQグロース
株主数 150人以上 200人以上 同左
流通株式数(注1) 1,000単位以上 2,000単位以上 1,000 単位以上(注3)
流通株式時価総額 5億円以上 同左 同左
時価総額 10億円以上
流通株式比率 25%以上 同左 10%以上(注3)
純資産 連結純資産が正
コーポレートガバナンス・コード 基本原則適用(注2) 努力義務 同左

注1:流通株式数の定義が変更になります(以下同じ)。

注2:コーポレートガバナンス・コードは、今後の改訂される模様

注3:新規上場申請日から上場日の前日までの期間に、1,000単位又は上場の時において見込まれる上場株券等の数の10%のいずれか多い株式数以上の新規上場申請に係る株券等の公募又は売出しを行うこと。

グロース市場がマザース・JQグロースと異なるポイントは、①流通株式比率が上がること②コーポレートガバナンス・コードの基本原則が高くなることの2点です。

グロース市場の上場維持基準

グロース市場の上場維持基準は、マザーズやJQグロースと以下のような点で異なります。

表 上場維持基準の違い

グロース市場 マザーズ JQグロース
株主数 150人以上 400人以上 150人以上
流通株式時価総額 5億円以上 5億円以上 2.5億円以上
流通株式比率 25%以上 5%以上
流通株式数 1,000単位以上 2,000単位以上 500単位以上
時価総額 上場から10年経過後40億円以上 10億円 注1
コーポレートガバナンス・コード 基本原則の遵守を求められる 努力義務 努力義務

注1:株価が10円未満となった場合において、3か月以内に10円以上とならないとき

注2:マザーズやJQグロースには、猶予期間、また上場後10年間は表の数値より低く設定しているものが存在する。

特に時価総額が40億円以上必要になるという点が最も変化することだと思います。

グロース市場へのIPO準備の変化

本ブログ作成時点(2020/11/11)におけるマザーズ上場会社332社の時価総額は、次のようになっています。

上場維持基準(40億円)との比較 時価総額 社数
極めてヤバい水準 20億円以下 14社(4.2%)
ヤバい水準

20億円~40億円

55社(16.5%)
ドキドキする水準 40億円~60億円

47社(14.1%)

今のところ安全水準 60億円超 216社(65.0%)

実は、本ブログ作成日は、日経平均が29年ぶりに25000円台に突入したというニュースがあり、市況としては悪くない状況です。そのような日であるにもかかわらず、時価総額が40億円に満たないマザーズ上場企業数は、マザーズ上場企業の内、20%を超えています。

グロース市場へ上場する場合、事業成長性に関する説明が、これまでより重要視されそうです。