IPOを目指す際、またIPOを達成した後、主に表1のような費用が必要になると言われておりまして、その総額は、会社の規模等によって相当異なりますが、IPOを目指す段階で最低5千万円、IPO後には最低年間3千万円のコストがアップすると言われています。

表1 上場準備および上場後に発生する主なコスト

時期 内容 支払先 支払頻度 必須/任意
直前々々期 ①ショートレビュー費用 監査法人 単発 必須
②社外役員・管理部門人材紹介手数料 人材紹介会社 単発 任意
直前々期~上場後 ③社外役員人件費 役員 毎月 必須
④管理部門人材人件費 従業員 毎月 必須
⑤ストックオプション・従業員持株会導入及び管理手数料 証券会社・信託銀行等 毎月/単発 任意
⑥監査報酬 監査法人 毎月 必須
コンプライアンス強化費用 弁護士・社労士・会計士・税理士等 毎月/単発 任意
⑦経営管理体制・Ⅰの部作成・内部統制コンサル等 IPOコンサル・ITコンサル・監査法人等 毎月/単発 任意
直前々期~上場時 ⑧IPO情報助言手数料 主幹事証券会社 毎月 必須
直前期~上場後 ⑨上場申請書類・法定書類の作成支援・印刷 印刷会社 毎月/単発 必須
申請期~上場後 ⑩株式事務代行手数料 株式事務代行機関 毎月 必須
上場申請時 ⑪上場審査料 東証 単発 必須
上場時 ⑫成功報酬 主幹事証券会社 単発 任意
⑬新規上場料 東証 単発 必須
⑭引受手数料 幹事証券会社 単発 必須
⑮公募又は売出しに係る料金 東証 単発 必須
上場後 ⑯年間上場料 東証 毎年 必須
IR支援 IR支援会社 毎月 任意
⑰新株発行・合併・ステップアップ等 東証 単発 任意

※ 「時期」や「支払頻度」等は、原則または推定です。

※ そのほかにも登記(新株発行、株式分割、ストックオプション発行、役員選任、譲渡制限撤廃等)に係る司法書士に対する費用や登録免許税等の追加も必要になります。

それぞれの費用の金額水準と、ベンチマークの方法などを以下で説明します。

ショートレビューのコスト

  • ショートレビューは、直前々々期に行うことが原則ですが、直前々期に行う事例も多くあります。
  • 会社の規模や業界等によって異なります。
  • 事例の確認方法は、EDINETで「全文検索」のコーナーで「予備調査」を文字列に入れ、「書類情報を指定する」をクリックし、「有価証券届出書」にチェックを入れると事例が出てきます。
    • 識学(50万円)
    • アンビスホールディングス(100万円)
    • フォースタートアップス(100万円)
    • ブシロード(700万円)など

社外役員・管理部門人材紹介手数料

  • ほとんどが成功報酬体系であり、採用人材の年収の30%前後が一般的といわれています。
  • 人材紹介会社を通した紹介以外に、銀行や証券会社から紹介を受けるケースもあります

社外役員人件費

ベンチャーの役員報酬を徹底分析【IPO分析】

管理部門人材人件費

  • 最も負担が大きいコストになります。
  • 全社員数が20名を割るような少人数規模の会社であったとしても、経理財務部門で責任者を含め3名、総務部門1名の計4名の人員が管理部門に確保が必要と言われるケースが多いようです。
  • 管理部門の体制に関しましては、こちらのブログをご参考ください。

ストックオプション・従業員持株会導入及び管理コスト

  • 費用体系は、依頼する会社によって異なります。
  • 従業員持株会と税制適格ストックオプションの管理については、遅くとも上場前までに証券会社と契約を締結すべきです。

監査報酬

  • 会社の規模や業界等によって異なります。
  • Ⅰの部や有価証券届出書においては、【監査報酬の内容等】の記載箇所が存在しており、その箇所で監査報酬の事例を確認できます。
  • 類似する会社もしくは会社規模が同等な会社の有価証券届出書をEDINETで検索し、【監査報酬の内容等】を文字検索してください。「監査証明業務に基づく報酬」が監査報酬です。

経営管理体制・Ⅰの部作成・内部統制コンサル等

  • EDINETで監査法人へ依頼した場合のコンサルフィー事例を確認できます。
  • 監査法人へコンサルを依頼していた一部の会社の参考事例が確認できます。ブログの中の人は、EDINETで「アドバイザリー業務」を文字検索して探しました。
    • コンピューターマネージメント(120万円 株式上場準備に関するアドバイザリー業務)
    • JMDC(56百万円 株式公開に関するアドバイザリー業務)
    • バルテス(936千円 上場申請に関するアドバイザリー業務)
    • アンビスホールディングス(300万円 内部統制構築・評価に関するアドバイザリー業務)
    • ブシロード(510万円 内部統制構築・評価に関するアドバイザリー業務)
    • オーウエル(200万円 株式上場に関するアドバイザリー業務)など

IPO情報助言手数料

  • 証券会社によって手数料の体系が異なります。

上場申請書類・法定書類の作成支援・印刷費用

  • 主に法定書類等(有価証券届出書や目論見書、株主総会招集通知等)の作成サポート費用、法定書類等の印刷費、システム使用料で構成されています。
  • 目論見書は公募株式数に、株主総会招集通知は株主数に、ほぼ比例します。
  • 金額水準を推定できる場合があります。

株式事務代行手数料

  • 株式事務代行機関に対するサービスの依頼内容と株主数・発行株式数で価格は大きく異なります。

上場審査料

  • 上場を申請する市場によって、金額が異なります。
市場 金額
プライム市場 400万円
スタンダード市場 300万円
グロース市場 200万円
  • 海外への視察などがあれば、調査費用として別途請求される場合があります。

成功報酬

  • 通常、主幹事証券会社を決定する際に決定します。
  • EDINETで水準を確認できます。類似する会社もしくは会社規模が同等な会社の有価証券届出書をEDINETで検索し、【発行諸費用の概算額】を文字検索してください。その金額は、成功報酬が大きく占めています。訂正される場合があるため、ベンチマークする際は、訂正された有価証券届出書の確認をおススメします。

新規上場料

  • 市場によって、金額が異なります。
市場 金額
プライム市場 1,500万円
スタンダード市場 1,200万円
グロース市場 100万円

引受手数料

  • 引受手数料は、【(発行価格-引受価額)×発行株式数】になります。引受手数料は、支払を行う手数料ではないため、会計上の仕訳を必要としません。
  • EDINETで事例を推定できます。一例を以下に示します。
会社名 発行価格 引受価額 発行株式数 推定引受手数料
HENNGE 1,400円 1,288円 50,000株 560万円
Chatwork 1,600円 1,480円 600,000株 7,200万円
ブシロード 1,890円 1,738.8円 1,670,000株 2億5,250万円

※ 海外発行分やオーバーアロットメント分を含めていません。

公募、売出しに係る料金

  • 以下のとおりです。
上場申請に係る株券等の公募 上場申請に係る株券等の売出し
公募株式数×公募価格×万分の9 売出株式数×売出価格×万分の1

※ グロース市場は、1900万円を上限としています。

    年間上場料

    • 各市場で時価総額によって変わります。
    上場時価総額 プライム スタンダード グロース
    50億円以下 96万円 72万円 48万円
    50億円を超え250億円以下 168万円 144万円 120万円
    250億円を超え500億円以下 240万円 216万円 192万円
    500億円を超え2,500億円以下 312万円 288万円 264万円
    2,500億円を超え5,000億円以下 384万円 360万円 336万円
    5,000億円を超えるもの 456万円 432万円 408万円

    この他にTDnet利用料として、年間12万円

    新株発行・合併・ステップアップ等

    • 新株式発行時、新株予約権発行時、上場株式の売出時には、株式数に比例する料金が発生します。
    • 吸収合併等を行う際、吸収合併等のために発行または自己株処分する株式数、および株価に比例する料金が発生します。
    • 一部指定または市場変更時にも審査料や市場変更料が必要になります。

    まとめ

    IPOAtoZは、IPOを達成した会社の有価証券届出書から非財務情報に関するデータを蓄積しています。

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