ブックビルディングを理解するとき、「発行価格」が決定するまでに「〇×価格」とか「△◇価額」とか、よく似た言葉が出てきて、とてもややこしいです。

またそれぞれの価格や価額をどのようなタイミングまでに決めなければいけないのか混乱しがちになります。

ここでは、ブックビルディングの流れをやさしく解説します。

まずブックビルディングの用語解説につきましては、こちらで説明していますので、ご一読ください。

ブックビルディング【IPO用語】

ブックビルディングの流れ

ブックビルディングの流れを図1にまとめました。また表1にポイントと注意点をまとめました。

それぞれの用語の定義につきましては、それぞれの用語の箇所をクリックしていただければ出てきます。

ブックビルディングの流れ

図1 「発行価格」が決定されるまで

表1 「発行価格」が決定するまでのポイントや注意点

時期 ポイントや注意点

目論見書校了日まで

【上場承認日から約2週間程度前】

主幹事証券会社との間で、目論見書有価証券届出書へ記載する「想定発行価格」や「想定発行価額」、また幹事証券の手数料となる「スプレッド」を検討して決定します。

  • 実質的に、株価に関して、発行会社の希望を叶えるための”駆け引き”ができるのは、ここまでです。
  • 主幹事証券会社の顔なじみの無い「エクイティ・キャピタル・マーケッツ部門」の担当者との間で検討をおこないますが、その顔なじみの無い担当者から、辛辣な発言を受ける場合もあります。
  • 社長は、上場審査の”メインイベント”である「社長面談」の最中という緊張感MAXの時でもあり、感情的になりやすい状況下になので、主幹事証券会社との関係が急速に悪化するケースもあります。
  • 「どの水準の発行価格が妥当なのか」「妥当なスプレッドの水準はこれくらいである」というような情報を会社側で事前準備したうえで、主幹事証券会社と話し合うべきでしょう(このサイトでは、将来的に、いくつか参考データを提供できるようにしようと考えています)。
  • 想定発行価格を高く設定しすぎてしまうと、ロードショーやブックビルディングで不評を買うことになります。そして

「想定発行価格」>「発行価格」

  となってしまうような事になれば、

「発行価格」>「初値」

  となりやすくなると言われています。(投資家からの評価は、低くなります)

  • 目論見書や有価証券届出書には、記載する必要はありませんが、「想定仮条件」も決定することになります。

ロードショーの終了後

【上場承認日から約2週間後】

機関投資家の意見を収集・分析して、「仮条件」を決定します。

  • ロードショーは、健康・気力・体力が一番重要です。
  • 「仮条件」は、実質的に主幹事証券会社側が主導権をもって、決定することになります。
  • 「仮条件」が決定すれば、自動的に「発行価額」が決まります。
ブックビルディング

【ロードショー終了後約1週間】

投資家からの需要状況を勘案し、「発行価格」を決定します。

  • 「発行価格」は、実質的に主幹事証券会社側が主導権をもって、決定することになります。
  • この期間は、IPO実務担当者が、久しぶりに落ち着いて過ごせる期間です。
  • 「発行価格」が決定すれば、自動的に「引受価額」「資本組入額」が決定します。

ブックビルディングから算出される価格

ブックビルディングとは、発行価格を決めるプロセスであり、発行価格を決めるにあたって、「仮条件」や「発行価額」、「引受価額」が決定されます。

それぞれの関係をイメージすると、以下のようになります。

価格

図 「発行価格」「仮条件」「引受価額」「発行価額」の関係イメージ

それぞれの価格と価額は「①想定発行価格」⇒「②発行価額」&「②仮条件」⇒「③引受価額」&「③発行価格」の順番で決まります。

想定発行価格は、仮条件の範囲内になりますが、発行価格は仮条件の下限の 80%以上かつ上限の 120%以下の範囲内(その旨及び当該決定される価格の範囲が、仮条件の決定に伴って提出される訂正有価証券届出書に注記されている場合に限る。)で決められます。

まとめ

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