上場審査のスケジュールに関して、説明させていただきます。

上場審査の期間

上場審査の期間は、おおよそ次のようになると東証は、述べています。

会社 上場審査の期間
①【市場や投資者に重大な影響を及ぼす可能性が高いと考えられる申請会社】かつ【東証プライム・東証スタンダード上場申請会社】

【市場や投資者に重大な影響を及ぼす可能性が高いと考えられる申請会社】とは次のような会社です。

  • 民営化企業
  • 議決権種類株式の活用などガバナンス上議論を要するスキームを採用している申請会社
  • 再上場企業
  • 申請会社グループやその経営陣が過去に重大な事件・法令違反を起こしているなどコンプライアンス上の重大な懸念のある申請会社
  • その他新たな論点が含まれる申請会社
  • 上場時に見込まれる時価総額が概ね1,000 億円を超える申請会社等
4ヶ月
②【東証プライム・東証スタンダード上場申請会社】(①の会社を除く) 3ヶ月
③【市場や投資者に重大な影響を及ぼす可能性が高いと考えられる申請会社】かつ【東証グロース上場申請会社】 3ヶ月
④【東証グロース上場申請会社】(③の会社を除く) 2ヶ月

上場審査の期間は、あくまでも目安であり、この期間をオーバーすることは、頻繁にあります。

特に上場審査中、予算達成状況に不安が出た場合や市場環境が急変した場合などは、上場審査期間が軽くオーバーします。

上場審査スケジュールとポイント

上場審査のスケジュールと、各スケジュールのポイントを説明させていただきます。

上場申請エントリー(上場申請2週間前までに)

  • 東証へ主幹事証券会社が行う所定のフォーマットで上場申請を申し込む手続きです。
  • エントリーシートには、希望する上場承認日と上場日を記載することになります。
  • エントリーの前に事前相談する事も多く、稀にエントリーの段階で上場申請が却下されるケースが存在します。
  • 申請期中に上場申請が行われる必要があります。

ヒアリング

  • 上場申請書類(プライム市場及びスタンダード市場上場の場合は、特に「Ⅱの部」の内容が多いです。)の内容に関して、東証から文書で質問があり、上場申請会社が回答を文書で提出。その回答をベースにして、面談で口頭による質疑応答があります。
  • ヒアリング回数は、基本的に3回(4回以上になる場合も多くある)になります。
  • 東証からの文書による質問に対し、7営業日後あたりに文書での回答の期限が設けられます。
    留意点・事前準備など
    • 引受審査の内容と重複する質問あり。上場審査前に引受審査における対応の反省や検証が必須です。
    • 回答期限は、遵守しなければいけません。
    • 質問と回答の内容は、書面だけではなく、口頭での回答を含め、面談予定者(社長・監査役・独立役員)と情報共有が必須です。

    実地調査

    • 本社や主要工場、主要事業所、主要店舗等を訪問します。
    • 会計伝票・帳票等の会計手続き、安全衛生状況等を確認されます。
    留意点・事前準備など
    • 実地調査を受ける前に行う準備は、まず5S(整理・整頓・清潔・清掃・躾)の徹底です。直前に大掃除する事を強くおススメします。特に倉庫(工場内・事業所内・店舗内)、薬品庫、廃棄物処理場なども5Sを徹底しましょう。
    • 実地調査で安全衛生面、リスク管理面、労務管理面で指摘を受け、審査がストップする事例があります。
    • 海外に主要事業所や子会社があれば、実地調査対象になる可能性が高くなります。その際の宿泊費や交通費は、上場申請会社が全額負担する事になるケースが多いようです。

    eラーニングの受講

    • 東証が求める上場会社の責務やコーポレート・ガバナンス体制、内部者取引の未然防止など、上場するにあたって理解しなければいけない基礎的な事項をeラーニングで受講します。
    • 対象は、上場申請会社の役員(特に面談予定者は必須)になります。

    役員面談(社長、監査役、独立役員)(ヒアリングが終了した約4~6営業日後)

    • 社長には、会社や業界について経営者としてどのようなビジョンをもって経営に当たっているか、上場会社となった後のIR活動、申請会社のコーポレート・ガバナンス及びコンプライアンスに対する方針・ 現状の体制及び運用状況、業績開示に関する体制及び内部情報管理に関する体制などが問われます。
    • 常勤監査役に対して、実施している監査の状況や申請会社の抱える課題などが問われます。
    • 独立役員には、独立役員として果たすことが期待される役割・機能等についてどのように認識しているのかなどが問われます。
    • その他の役員(特にCFO)に対しても、面談される可能性があります。
        留意点・事前準備など
        • Ⅰの部をはじめとする上場申請書類やヒアリング内容と異なる回答をすれば、審査がストップする可能性が高くなります。
        • コーポレート・ガバナンスやコンプライアンスなどの基礎知識不足、eラーニングで受講した内容の理解不足が露呈されると、審査がストップする可能性が高くなります。
        • 目論見書の校了日と重なります。経営者にとって、一番イライラする時期です。

        社長説明会(役員面談終了後、約7営業日後)

        • 社長が東証へ訪問し、会社のビジネスモデルや事業計画等について説明します。
        • 東証の役員クラスだけではなく、日本取引所自主規制法人の役員も出席します。
        • 上場申請会社は、社長だけではなく「情報取扱責任者」も同席します。
        留意点・事前準備など
        • Ⅰの部をはじめとする上場申請書類やヒアリング内容と異なる回答をすれば、審査がストップする可能性が高くなります。
        • 特に適時開示と内部者取引の理解不足が露呈されると、審査がストップする可能性が出てきます。

        上場承認(社長説明会から3営業日程度後)

        • 新株発行の取締役会決議を行います。
        • 有価証券届出書をEDINETに開示します。