直前期は、原則、直前々期に構築した内部管理体制の運用期間です。株式公開準備責任者や担当者は、運用状況の確認と修正を行う業務が中心になります。

一方、直前期に入れば、主幹事証券会社の公開引受部門の担当者から、「そろそろ、Ⅰの部の作成にとりかかってくださいね」という”ありきたりのセリフ”が出てきます。

しかしⅠの部の作成要領を初めて見た株式公開準備担当者のほとんどは、「この分厚い内容のどこから作成すればいいの?」と思ってしまいます。

当然です。

ここでは、その悩みに対するヒントになればと思います。

Ⅰの部作成要領

Ⅰの部の作成要領の本や目次等が入ったフレームワークをワード形式で印刷会社から入手します。

作成要領は、印刷会社から直前々期中に入手するべきですが、その内容は毎年のように変わります。

直前期の期初からは「Ⅰの部」や「Ⅱの部」に記載する内容の根拠の収集・整理を行う業務を始める事になります。

「Ⅰの部」の中には、経理部門等の関係部署が作成した書類や定款・規程等から機械的に転記して作成できる箇所だけではありません。会社としての考え方や経営方針など、経営者の頭の中だけにあるような事や、また経営者も具体的に考えてこなかった事を文書化するような箇所が存在します。また法令上、決議が必要であるにも関わらず、見落としがちなことに関する事もあります。

つまりⅠの部の中の非財務情報において、社内で検討が未実施な事や決議が必要な内容を作成する事からスタートです

次にⅡの部の作成にとりかかります。マザーズかジャスダックを目指す会社にとっては、「Ⅱの部」の作成義務は無く、ジャスダックの場合は「Ⅱの部」に相当する上場申請提出資料が存在します。しかし、「Ⅱの部」の方が内容が濃いため、引受審査と上場審査の対応力を上げるためには、目標とする市場に関係なく「Ⅱの部」の作成を強くおすすめします。

「Ⅰの部」と「Ⅱの部」を作成するにあたって、最初に検討すべき箇所は次の表になります。

表 直前期の期初から、検討を開始したい内容例(「Ⅰの部」と「Ⅱの部」の記載要領より抜粋)

Ⅰの部
  • 配当の基本的な方針、 毎事業年度における配当の回数についての基本的な方針、配当の決定機関、最近事業年度の配当決定に当たっての考え方及び内部留保資金の使途
  • コーポレート・ガバナンス に関する基本的な考え方
  • 社外取締役又は社外監査役の選任状況に関する会社の考え方
  • 監査公認会計士等に対する報酬の額の決定に関する方針を定めているときは、当該方針の概要
  • 役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針の内容及び決定方法
  • 役員の報酬等に、業績連動報酬が含まれる場合、業績連動報酬と業績連動報酬以外の報酬等の支給割合の決定に関する方針を定めているときは、当該方針の内容。また、当該業績連動報酬に係る指標、当該指標を選択した理由及び当該業績連動報酬の額の決定方法
  • 役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針の決定権限を有する者の氏名又は名称、その権限の内容及び裁量の範囲
  • 純投資目的以外の目的である投資株式について、会社の保有方針及び保有の合理性を検証する方法
Ⅱの部
  • 上場を申請した理由(目的、メリット、上場申請を今期とした経緯等を含めて)
  • 会社を設立するに至った経緯
  • 工場、営業所、店舗等の事業所について、その展開の基本方針(過去及び今後の展開地域・展開事業所数に関する方針等)
  • 店舗展開における出退店について、 具体的基準(商圏、売場面積、店舗業績等)を有している場合にはその内容及び当該基準設定の前提となる考え方(商圏と売上高の関係性、売場面積と売上高の関係性等)
  • 物流拠点の展開の基本方針
  • 研究開発活動の方針。また、新製品、新技術等の研究開発状況が把握できるように、その内容(研究の目的、主要課題、研究成果、研究開発体制等)、研究開発費に対する基本的な考え方
  • 知的財産保護に関する考え方
  • 外注を活用する基本方針
  • 販売増加のために採用した具体的な方策(営業体制、販売先開拓、取引量の拡大策等)があれば、その内容
  • 申請会社の子会社及び関連会社に対する経営関与についての基本方針及び利益還元についての基本方針
  • 内部監査を導入した目的、期待される効果等を踏まえ、内部監査の基本方針
  • 業績予想の開示についての基本方針(開示する数値の種類、利益計画との整合性等)。また、 業績予想と実績の乖離状況の把握方法、業績予想の修正の要否についての判断基準
  • 自己株式を保有している場合には、取得経緯及び今後の保有方針
  • 申請会社及びその企業グループを含めた人事政策(採用方針並びに具体的な採用方法、人材教育及び人員配置等)
  • 関連当事者取引等の実施に対する基本方針
  • 会計参与設置に係る基本方針及び今後の方針
  • 所要資金の調達方針について、運転資金、設備投資資金等適当な区分で説明
  • 株式、社債、新株予約権付社債による資金調達について、企業集団としての基本方針
  • 営業活動に基づくキャッシュ・フロー増加のための方策がある場合には、その具体的方策
  • 余資の運用(預金、現先、株式等)について、基本方針及び具体的な運用方法
  • 資金繰り管理について、基本方針及び具体的な方法など
  • 役員の報酬に関しては、会社法第361条により、株主総会決議が必要な事項が存在します。非上場会社では見落としがちな決議事項です。
  • 外注に関する方針や、店舗展開における出退店基準など関連する規程が存在する場合は、整合性が必要になります。

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