トゥエンティーフォーセブンのIPO
トゥエンティーフォーセブンの上場前の売上高と経常利益の推移は以下のとおりです。
表 トゥエンティーフォーセブンの上場前の売上高と経常利益の推移
直前々期 | 直前期 | 申請期(第3四半期) | |
---|---|---|---|
売上高(百万円) | 4,094 | 6,801 | 5,911 |
経常利益(百万円) | 438 | 1,108 | 926 |
そして上場日である2019年11月21日には、申請期の業績予想として、
売上高:7,791百万円
経常利益:1,158百万円
を発表し、好業績を期待できる銘柄として、上場直後の株価は堅調でした。しかしその1か月後の12月20日に業績予想の修正発表をし、株価が大きく下がりました。
売上高:7,697百万円
経常利益:971百万円
さらにその後、2020年1月10日に決算短信の発表を行いました。
表 トゥエンティーフォーセブンの上場後の売上高と経常利益の推移
申請期業績 | 申請翌期業績予想 | |
---|---|---|
売上高(百万円) | 7,697 | 8,732 |
経常利益(百万円) | 971 | 162 |
上場までは、右肩上がりであったトゥエンティーフォーセブンの業績は、申請期に減益となるだけではなく、申請翌期には大幅な減収になるとの発表であり、株価はさらに大きく下がり、発行価格を大きく下回る株価になりました。
なお申請翌期は、コロナショックの煽りを受け、大幅な赤字計上をしています。
財テクLIFE.COM「上場ゴール! 新規上場後に最速で下方修正を発表した銘柄はどこ!?(ランキング)」によると、なんと第1位に輝いています❕🎊
トゥエンティーフォーセブンが下方修正した経緯
2020年1月10日にトゥエンティーフォーセブンが発表した決算説明会資料を見ると以下のような文言があります。
上記を説明するため、申請期の広告宣伝費の推移が記載されており、下期は上期に比べ、広告宣伝費を抑えた事をアピールしているグラフが存在します。トゥエンティーフォーセブンは、トレーニングジム運営をしている会社であるため、公告宣伝は非常に重要な営業活動なはずです。しかし申請期の下期は、公告宣伝を抑えました。
つまり、このようなシナリオが想定されます。
- IPOが直前に迫ってきた
- 発行価格を高くしたい
- 発行価格を高くするには、申請期も業績が急成長している事をアピールしなければいけない
- しかし申請期の増益額が物足りない
- コストを抑える事で増益を維持するしかない
- コストの中で大きな地位を占める広告宣伝費をカットするのが一番の得策だ
- 広告宣伝費を抑えたために、申請期の売上が伸びず、減益になってしまった
- 申請期だけではなく、申請翌期にも影響が出る事になってしまった
IPOを意識して、目先の利益向上に走り、売上アップのための重要なコストである広告宣伝費を絞った結果、こんな状況になったと言わざるを得ません。
つまり、この会社は、IPOを発行価格業績が良好な銘柄として評価されたものの、特にIPO時における申請期(第3四半期)の業績は、真の実力による業績では無かったという事になります。
トゥエンティーフォーセブンが下方修正した原因
IPOのために目先の利益獲得を優先し、マーケティング経費を絞るという経営者としての心情は、一定の理解ができます。しかし、投資家からの信用や期待を大きく裏切ったのは間違いありません。
トゥエンティーフォーセブンがIPOを目的として、会社経営に必要なコストを削り、見かけの業績アップをしてしまったのは、以下のような要因があると考えます。
- いわゆる「上場ゴール」といわれる会社経営者が陥ってしまう典型的な思考です。
- トゥエンティーフォーセブンの失敗を他山の石とするためには、「上場ゴールと呼ばれるような会社は、恥である」ことをしっかりと認識しましょう。
- Ⅰの部によれば、社外取締役は1名のみであり、その岩田氏は、2社の社長、5社の社外取締役を兼任しています。また、常勤監査役の山口氏は、常勤監査役であるにも関わらず、他社の監査役も兼任しています。また社外監査役の略歴を見ると数多くの会社と兼任しています。つまり会社が、あるべき方向に進んでいない場合、それを止めるべき社外取締役や監査役がトゥエンティーフォーセブンの経営状況に対して、大きな関心や十分な時間を割いて、細かい指摘や意見具申ができるような人物が社外取締役や監査役になっていなかったのではないかと考えます。
- トゥエンティーフォーセブンの失敗を他山の石とするためには、社外取締役や社外監査役を選定する際、ネームバリューや資格等に惑わされるのではなく、会社のために働いてくれそうな人物にしましょう。
IPOAtoZはIPOの失敗事例を取り上げます
IPOAtoZでは、IPOを達成した会社の中で失敗事例も取り上げています。
失敗事例は、他山の石として非常に参考になります。
失敗事例は、こちらにあります。