女性役員の多い会社
2019年10月8日に東証マザーズへ上場した株式会社AI CROSSの役員構成は、以下のようになっています。
- 役員は、男性4名 女性3名で構成されている(役員のうち女性の比率42.9%)
- 社長は、女性である
株式会社AI CROSSは、女性の登用に積極的な会社であることがわかります。
ここでは、女性の役員について取り上げます。
女性役員の登用
日本は先進国の中で女性役員の比率が低水準であることから、政府は女性の活躍推進を進めています。
女性を役員に登用している会社は、多様な価値観を受容する組織であると評価され、企業価値の向上にもつながるともいわれています。
内閣府には、男女共同参画局という組織があり、そのサイトによりますと、次のようになっています。
- 2012年から2019年の7年間で、上場企業の女性役員数は約3.4倍に増えている
- 女性役員の比率は、2019年時点で5.2%である。
となっています。その影響は、IPO関連にも若干でありますが、影響が出てきています。
まずコーポレート・ガバナンス・コードの改訂があり、以下のような記載が追加されました。
上場会社は、社内に異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在することは、会社の持続的な成長を確保する上での強みとなり得る、との認識に立ち、社内における女性の活躍促進を含む多様性の確保を推進すべきである。
次に開示布令の改正が行われ、Ⅰの部や有価証券報告書等に会社の役員の男女別人数及び女性比率の記載を義務付けることになりました。
2022年4月以降に東証は、3つの新市場区分に移行します。
3つの新市場の内、2つの市場(「プレミア市場」「スタンダード市場」)はコーポレート・ガバナンス・コードの原則の遵守を求められる模様です。すなわち「プレミア市場」または「スタンダード市場」への上場を目指す場合、女性の活躍促進に向けた活動をしていることが形式要件に加わるかもしれません。
また議決権行使助言会社のグラスルイスは、次のように表明しています。
東証1部と2部に上場している企業において、女性役員が1人もいない場合、原則として、ジェンダー・ダイバーシティーの欠如に責任があると思われる取締役に反対助言をする。
IPOを達成した会社の女性役員の比率
2019年に東証へIPOを達成した会社(Tokyo Pro Market除く)82社の役員の男女比率等は次のようになっています。
表 2019年にIPOを達成した会社の女性役員
データ | |
---|---|
男性役員数:女性役員数 | 643人 : 55人(女性役員比率:8.5%) |
女性役員ゼロの会社数:役員を登用している会社数 | 47社 : 35社(女性登用比率:42.6%) |
複数の女性を役員に登用している会社数 | 15社(18.2%) |
2019年では、IPOを達成した会社の過半数が、女性役員ゼロになっています。
上場会社全体における女性役員の割合が5.2%である現状に比べると、IPOを達成した会社の方が女性役員比率が高いように見受けます。
女性役員ゼロの会社の場合
社外取締役として候補となり得るようなキャリアを持つ女性は”ひっぱりだこ”のようであり、IPOを目指すレベルのベンチャー企業が簡単に出会える機会が少ないようです。
そこで女性役員ゼロの会社がIPOの審査に挑むにあたっては、最低限以下のような準備が必要となると考えます。
- コーポレート・ガバナンス・コードの中に、女性の活躍促進に関する項目が存在していることを理解すること
- 審査において、女性活躍促進(特に役員への登用)に向けた取り組みに関する質問があったときの回答を事前準備すること