このブログの訪問者の方であれば、IPOはメリットだけではなく、デメリットもある事をご存じの方ばかりだと思います。

ざっくりとした説明は↓でしております。ぜひご参考ください。

IPOのメリットとデメリット

上場をした会社の中には、上場してしまった事がかえって会社の成長を阻害させてしまったのでは思しき例も存在します。

ここでは、いくつか事例をピックアップして紹介させていただきます。

上場維持基準

上場を達成した会社は、上場維持基準をクリアし続ける事が求められます。

これをクリア出来なければ、株式市場から強制退場される結末になります。

上場維持基準の中で最も頭が痛いのは、流通株式時価総額でありまして、↓の表のようになる必要があります。

上場維持基準
プライム 100億円以上
スタンダード 10億円以上
グロース 5億円以上

MITホールディングスの状況

ここでは、上場維持基準と格闘中の会社を2社紹介させていただきます。

まずは、2020年11月に上場した「MITホールディングス株式会社」です。

MITホールディングスのIPOと現状について↓の表にまとめました。

上場日 2020/11/25
市場 ジャスダック⇒スタンダード
上場時手取金総額 1.5億円
本記事作成時時価総額(2022/7/28) 16.6億円
推定流通株比率※ 53.5%
推定流通株式時価総額(2022/7/28) 8.9億円

※ MITホールディングス株式会社第13期第2四半期報告書をベースにしてIPOAtoZ推定

スタンダード市場の上場維持基準の内、流通株式比率(25%以上)は上回っているようですが、流通株式時価総額(10億円以上)がヤバい水準です。

MITホールディングスが上場後、資本政策に関して、どのような取り組みをしたのかを↓でまとめました。

2020/11/25 ジャスダック市場上場
2021/1/13 増配(記念配当)発表
2022 /1/ 14 自己株式取得に係る事項について決議

上限:発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合 4.85%

2022/1/14 普通配当増配(配当総額は維持)

増配と自己株式取得の両方を実行して、株主還元を積極的に行うことにより、時価総額の維持向上を図っていることが見受けます。

連結ベースで配当性向は、50%(単体ベースでは800%)を超えています。

さらに、MITホールディングスは、IPO時の手取金が1.5億円強にすぎませんが、2022/1/14に発表した自己株式取得の上限額は、1億円です(なお、本記事作成の段階では、17,827,100円(2022/07/01のプレスリリースより)を自己株式取得に充てています。)。

ひょっとすれば、IPOのファイナンスで獲得した資金相当額を上場後たった2年で株主還元策(配当と自己株式取得)で費やすかもしれない状況にあります。

セイファートの状況

次に2022 年2月4日に上場した「株式会社セイファート」を取り上げます。

株式会社セイファートのIPOと現状について↓の表にまとめました。

上場日 2022/2/4
市場 ジャスダック⇒スタンダード
上場時手取金総額 4.2億円
本記事作成時時価総額(2022/7/28) 11.9億円
推定流通株比率※ 50.2%
推定流通株式時価総額(2022/7/28) 5.9億円

※ 株式会社セイファート有価証券報告書等をベースにしてIPOAtoZ推定

スタンダード市場の流通株式時価総額の上場維持基準(10億円以上)をかなり下回っている水準です。

セイファートが上場後、資本政策に関して、どのような取り組みをしたのかを↓でまとめました。

2022/2/4 マザーズ市場上場
2022/2/25 配当を発表
2022/5/13 上場記念配当を発表

増配を実行して、手厚い株主還元を行うことにより、時価総額の維持向上を図っているようです。

本ブログ記事の作成時点で予想配当利回りが4.98%という近年上場達成した会社の中では、傑出した高配当になっています。

また予想配当性向は、40%を超える計画になっています。

今後も流通株式時価総額のアップを目的とした施策を継続せざるを得ないと思われます。

上場維持のジレンマ

通常、企業は、上場企業であろうが無かろうが、またどこの市場に属していようが、成長を目指す事が最重要になります。

ましてや、上場ホヤホヤの会社は、どの市場に上場したとせよ、上場達成によるメリットを最大限に享受し、成長を加速させようとする企業ばかりのように思えます。

しかし、上場維持基準を下回っている会社、またはギリギリにある会社は、獲得したキャッシュを事業成長資金よりも、株主還元を第一に考えざるをえなくなります。

このような会社に対しては、傍からの立場で余計なお世話になりますが、「上場しなかった方が企業成長していたのでは?」と思えてしまいます。

上場維持基準をクリアするための施策としては、↓のサイトで説明しています。

ご参考頂ければと思います。

新市場区分の上場維持基準を適合させるための対応策

まとめ

上場維持基準のクリアと格闘している上場達成したばかりの会社2社を例に挙げて、IPOのデメリットを紹介させていただきました。

スタンダード市場の前進であるジャスダック市場の流通株式時価総額の上場維持基準は、2.5億円でした。

それが市場区分の変更に伴い、10億円に跳ね上がりました。ここで取り上げたMITホールディングスとセイファートは、ジャスダック市場であれば、上場維持基準を十分にクリアしていたという事になります。

しかし、市場区分の変更で大きく変わってしまいました。

グロース市場も同様です。

例えばグロース市場の場合、本ブログ記事作成時点でグロース市場上場会社481社の内、147社も時価総額40億円(グロース市場の上場維持基準の中に上場10年経過後の時価総額40億円以上が存在します)を下回っている状態にあります。

このような現実から、IPOを目指す会社経営者は、上場後の時価総額の見込みについて、冷静に判断する必要があると思います。

もし上場維持基準を意識した経営に時間を割く可能性が高い会社の場合、ブログの中の人は、東京プロマーケット市場の活用を推しています。

なお、上場のメリットは、キャッシュ面だけではありません。

それが十分でなければ、上場メリットが無いと申しているのではありません。

さらに、このブログで取り上げた2社に対する上場達成に関して、否定や疑問を呈したブログ記事ではないことにご注意いただきますようお願いします。

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