事業等のリスクと上場審査

IPOの審査では、上場申請書類であるⅠの部のドラフトの内容について重点的にチェックされます。

Ⅰの部における非財務情報の中では、事業等のリスクの内容の確認が最重要視されます。

事業等のリスクについては、こちらで説明しています。ご参考ください。

事業等のリスク・リスク情報

事業等のリスクの内容に対する審査は、主に以下のようなQ&Aが基本になります。

  1. なぜ、これが会社のリスクとして認識するに至ったのか
  2. このリスクが顕在化したとき、会社にどんなダメージが出てくるのか
  3. 会社は、そのリスクを低減するために、どのような活動をしているのか

上の3つの側面から、事業等のリスクの過不足を調べ、審査を通じて修正加筆をしていきます。

事業等のリスクの好事例

2019年7月5日に上場したフィードフォースの目論見書を見ると、17の事業等のリスクがありますが、首尾一貫として、統一した書きぶりになっています。

フィードフォースのⅠの部の書きぶり

「当社は①をしています。②のようなことを努めています。しかしながら③のような影響を及ぼす可能性があります。」

① 会社事業内容や特徴などの説明

② 活動内容や取り組み

③ ②の活動がうまくいかなかった場合のリスク

代表的な事業等のリスクをみてみましょう。

フィードフォースの事業等のリスク((株)フィードフォース 目論見書より引用)
(2)技術革新について

当社が事業展開しているデジタルマーケティング領域では、技術革新のスピードや顧客ニーズの変化が非常に早く、新しいテクノロジーや広告手法が次々と開発され、それに基づく新サービスが常に生み出されております。【←会社事業内容や特徴などの説明】

当社においても、優秀なエンジニアの採用・育成や創造的な職場環境の整備に加え、毎年開催されている「Ruby Kaigi」や「AWS Summit」等外部イベントへの参加やオープンな技術勉強会の開催等により最新の技術動向や環境変化を把握できる体制を構築することで、技術革新や顧客ニーズの変化に迅速に対応できるよう努めております。【←リスク低減の活動内容や取り組み】

しかしながら、何らかの理由により新たな技術やサービスへの対応が遅れた場合、又は当社のサービスもしくは使用している技術等が陳腐化した場合や顧客ニーズへの対応遅れが生じた場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。【←リスク低減活動がうまくいかなかった場合のリスク】

(5)情報セキュリティ管理体制について 

当社は、「ソーシャルPLUS」において、Facebook、LINE、Yahoo! JAPAN等のアカウント情報を活用して会員登録やWebサイトログインを容易にする仕組みをクラウドサービス(SaaS)として利用企業に提供しております。【←会社事業内容や特徴などの説明】

本サービスにあたっては利用環境をクラウドサービスとして提供するのみであり、当社ではこれらの個人情報を取扱っていませんが、役職員を対象とした個人情報の取扱いに関する社内研修の実施、社内でのアクセス権限の設定、アクセスログの保存、データセンターでの適切な情報管理等クラウドサービス提供者として常時情報セキュリティの確保に努めております。【←リスク低減の活動内容や取り組み】

しかしながら、万一外部からの不正アクセスやその他想定外の事態の発生により情報の外部流出等が発生した場合には、当社への損害賠償の請求や当社の社会的信用を失うこと等が想定され、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。【←リスク低減活動がうまくいかなかった場合のリスク】

(11)特定の人物への依存について 

当社の代表取締役社長である塚田耕司は、当社の創業者であり、2006年の創業以来代表取締役を務めております。同氏は、当社創業前においてもWeb制作会社の経営を10年近く行ってきているなど経営経験が豊富であり、かつインターネット及びデジタルマーケティングに関する豊富な知識と経験を有していることから、経営戦略の構築やその実行に際して重要な役割を果たしております。【←会社事業内容や特徴などの説明】

当社は、豊富な経験や知識を有する人材を経営メンバーとして招聘することで経営体制の強化を図るとともに、各事業部門のリーダーに権限委譲を適宜行っていくことで、同氏に過度に依存しない体制の整備を進めております。【←リスク低減の活動内容や取り組み】

しかしながら、現状では何らかの理由により同氏が当社の業務を行うことが困難となった場合は、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。【←リスク低減活動がうまくいかなかった場合のリスク】

フィードフォースの全ての事業等のリスクには、審査で受けるであろう質問に対する回答が一定レベルで記入されています。

他の会社も、同じような書きぶりを採用している例は多数存在しますが、フィードフォースのように全てのリスク情報を首尾一貫として、この書きぶりを採用している例は極めて少数ではないかと思います。

フィードフォースの管理部門管掌役員である西山取締役は、元SMBC日興証券の社員であった事からも、IPO審査のノウハウを持っていたのではと推察します。

審査を円滑に進めるためにも、Ⅰの部の非財務情報に関しては、審査でのQ&Aを想定しながら、書くことを強くおすすめします。