IPOを目指す会社に関係会社が存在する場合、各関係会社を連結決算の対象範囲に加えるべきかどうかの検討が必要になります。
出資比率が50%超の会社が連結決算の対象となることは理解されやすいのですが、連結決算の対象はそれだけではありません。
ギークスのIPO
2019年3月20日に東証マザーズへ上場した株式会社ギークス(以下では「ギークス」といいます)には、NexSeed Inc.という連結対象子会社があります。
しかし、ギークスはNexSeed Inc.の議決権を39.8%のみ保有しているにすぎません。
ギークスの目論見書には、「持分は、100分の50以下でありますが、実質的に支配しているため子会社としております。」という説明が記載されています。
なお、ギークスは、NexSeed Inc.に対し、2千万円の資金貸付を行っています。
連結子会社の範囲
関係会社を連結子会社にするかどうかを決めるには、次のチェックポイントが必要です。
- 子会社に該当する?
- 重要性がある子会社?
この2つのチェックポイントを通過した会社だけが連結子会社に認定されます。
他の会社を連結対象子会社に含めるかどうかを判断するルールは「連結財務諸表に関する会計基準」と「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」(以下ではまとめて「基準」といいます)で定められています。
基準によりますと、連結対象子会社となる子会社とは、他の企業の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関)を実質的に支配されている会社であり、それは必ずしも、過半数の議決権(ここで言う議決権とは、期末段階の議決権のことであり、かつ自己株式や相互保有株式等は除いた数になります。以下も同じです)があるかないかだけで判定されるのではないことがわかります。
議決権が50%以下(ゼロも含みます)の会社でも、以下のような場合は連結対象子会社として含まれることになります。
「経営や営業、財務、人事、融資、事業方針などで支配している」(↓で説明しています)
「緊密な者が保有している議決権と合わせて、議決権の過半数を占めている」(↓で説明しています)
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「経営や営業、財務、人事、融資、事業方針などで支配している」(↓で説明しています)
連結子会社の要件
「経営や営業、財務、人事、融資、事業方針などで支配している」とは
例えば、次のようなケースです。
- 役員や従業員が兼任や出向をして、取締役会の過半数を占めている
- ブランド使用や商品・サービスの取引関係があり、その取引依存度が極めて高い
- B/Sの負債の部に計上されている負債総額の過半を融資している
詳しい内容は、「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針12.」にあります。
緊密な者とは
ここでいう「緊密な者」とは、以下のような者とされています。
- 議決権の 20%以上を所有している
- 役員や従業員が兼任や出向をして、取締役会の過半数を占めている
- ブランド使用や商品・サービスの取引関係があり、その取引依存度が極めて高い
- B/Sの負債の部に計上されている負債総額の過半を融資しているなど
連結子会社の範囲からの除外
上に掲げるような要件に合致する子会社があったとしても、次のような子会社は、連結対象子会社から除外されます。
- 支配が一時的である子会社
- 更生会社、破産会社その他これらに準ずる企業であって、かつ、有効な支配従属関係が存在しない子会社
- 資産や売上高等が連結の範囲から除いても、企業集団の財政状態や経営成績などの状況に関する合理的な判断を妨げない程度の小規模な子会社