ランサーズの想定発行価格

募集株式総数や想定発行価格は、いろいろな要因によって決まりますが、大きく見誤ってしまうと、大変です。

2019年12月19日に東証マザーズへ上場したランサーズ株式会社は、ブックビルディングで大苦戦したようです。

表 ランサーズのIPO

上場承認時 IPO時
新規発行株式数(株) 2,270,000株 1,600,000株
売出株式数(株) 5,067,400株 1,008,700株
公募株式数(株) 7,337,400株 2,608,700株
発行価格(円) 900円 730円
吸収金額(円) 6,603,660,000円 1,904,351,000円

ランサーズの吸収金額は、想定した金額から1/3を切る事態になってしまいました。

IPOによって得た資金の一部を当初、オフィスの移転費用に充当する予定でしたが、新規発行株式数と発行価格の減少により、取りやめた模様です。さらに申請翌々期の人件費拡充資金への充当がゼロになったため、中長期の人員計画に影響が出ています。さらに銀行への返済資金を半減することになりました。

低評価を受け、ランサーズの経営者のショックは大きかったことでしょう。

ランサーズの発行価格は、IPO前の株価より安くなってしまった

想定発行価格は、主幹事証券会社と発行会社が相談して決まり、発行価格は投資家からの意見を集約して決まります。そのプロセスについては、こちらで説明しています。ご参考ください。

ブックビルディングの流れを理解しましょう

ランサーズの想定発行価格は900円であり、発行価格はそれより下がって730円になってしまいました。

一方、その価格を決定するにあたって重要な位置づけにあった第三者割当がありました。

それは直前々期に行った第三者割当増資であり、その第三者割当増資は934.91円という株価でした。

通常であれば、IPOによって株価は上がり、含み益が増大するのですが、ランサーズの一部の株主は、IPOすることによって含み損を抱えてしまったということになります。

第三者割当のリスク

会計上の有価証券の評価は、その保有目的によって会計の考え方が変わります。

ベンチャーキャピタルは、ほとんど売買目的で株式を購入しています。

売買目的で購入した株式は、決算期末で時価評価をすることになりますので、ランサーズのようなケースが発生した場合、そのベンチャーキャピタルは早い時期に損失計上しなければいけなくなる可能性が高くなることになります。

ランサーズの株主の中には、ランサーズがIPOしたと同時に約1億7600万円の含み損を抱えてしまった株主が存在します。

最終的には投資を実行した株主の自己責任になりますが、このようなケースが発生してしまうと、IPOの延期を求める株主が現れてしまうというリスクが発生することだけは理解しなければいけません。

上場審査をクリアした後、上場延期する会社が毎年のようにありますが、そのうち何割かは、株主からIPOに対して反対意見が出たことによって、上場延期せざるを得なくなったという会社があります。