種類株式とは

種類株式とは、株主としての権利が普通株式を保有する株主とは異なる権利を持つことになる株式のことをいいます。

特にベンチャーキャピタルの出資時に種類株式を発行しているケースが多くなってきています。

例えば

種類株式の種類
  • 配当が優先または劣後する株式
  • 残余財産分配が優先または劣後する株式
  • 他の種類株式への転換権を保有する株式
  • 1単元あたりの議決権が普通株式よりも多い、または少ない株式
  • 株主総会議案へ拒否権を持つ株式など

があります。

種類株式を発行する大きな理由としては、会社側にとっては”経営権の安定確保をしつつ活動資金を得たい”というニーズがあり、ベンチャーキャピタル側にとっては”資金を出すからには経営陣の暴走防止を主目的とした経営関与をしたい”をはじめとするニーズがあります。

つまり会社側とベンチャーキャピタル側の間には相反するニーズが存在します。種類株式は、この相反するニーズを調整する役割があります。

Sansanの目論見書

2019年6月19日に上場したSansan株式会社の目論見書を拝見すると以下のようなことがわかります。

  1. 普通株式以外に4種の種類株式を発行していた。
  2. 2019年1月30日開催の臨時株主総会ですべての種類株式を廃止し、普通株式へ転換した。

Sansanの場合は、上場承認日の5カ月前に種類株式を廃止しました。その頃は、引受審査を行っている最中もしくは直前であることが推察できます。

種類株式を発行している会社のほとんどは、Sansanと同様なタイミングで行われ、遅くとも上場審査入りするまでには、全て普通株式へ転換しており、種類株式がゼロという状態になっています。これは、東証が上場会社に対し株主平等の原則を重視しているため、それに応えるために行う手続きになっています。

しかし、上場会社の中には種類株式を発行したまま上場している会社、もしくは上場後に種類株式を発行した会社が存在します。

なお、東証は、種類株式を保有したまま上場を申請しようとする会社は、市場や投資者に重大な影響を及ぼす可能性が高いと考えられる会社として捉えています。このような会社は、審査上の確認項目が多岐にわたることが想定されるため、標準審査期間に加えて1か月以上の審査期間の確保が必要になります。

種類株式の上場

種類株式を上場させようとする場合、いくつかの要件が必要になります。ここでは、その要件の中で主なものを取り上げます。

上場対象となる議決権種類株式

上場対象になる議決権種類株式が定められています。

例えば、議決権の無い株式や議決権の少ない株式の上場は、不可能ではありませんが、議決権の多い株式の上場は出来ません。

表 上場対象になる議決権種類株式

上場会社 未上場会社
単独上場 普通株式と同時上場
議決権の少ない株式 × ×
議決権の多い株式 × × ×
無議決権株式

上場種類株式の必要性や相当性

議決権の多い株式等の利用が、株主共同の利益の観点から必要かどうか(必要性)、また、議決権種類株式のスキームが、議決権の多い株式等の利用の必要性に照らして相当であると認められるかどうか(相当性)について審査されます。

このハードルが極めて高いと考えます。

無議決権株式の発行は、発行済株式総数の1/2まで

会社法第115条において、無議決権株式の発行は、発行済株式総数の1/2までにしなければいけないと定められています。

したがいまして、無議決権株式を発行するファイナンスには、限界があるということになります。

種類株式の事例

ここでは、種類株式を発行している上場会社の事例を3社取り上げます。

サイバーダインの種類株式

2014年3月に東証マザーズへ上場したCYBERDINE株式会社は、種類株式を発行したまま上場を達成しました。

  • 身体が不自由な人、または倉庫や工事現場等で重量物を運ぶ人のために身体機能を補助する目的とした”ロボットスーツ”を開発生産販売をする会社です。
  • CYBERDYNEの製品は、軍事転用が出来るとの懸念があり、それを心配する経営者が企業買収の可能性を低減させるために、種類株式を発行しています。

表 CYBERDYNEが発行している株式の概要

普通株式(上場株式) B種類株式(非上場株式)
単元株式 100株 10株
議決権 100株につき1個 10株につき1個
譲渡制限 なし あり
取得請求権 なし あり
取得条項 なし あり

伊藤園の種類株式

「おーいお茶」で有名な伊藤園は、すでに上場している2007年9月に無議決権種類株式を上場させました。

伊藤園の場合は、サイバーダインとは違い、種類株式と普通株式の両方が上場しています。つまりすべての株式を上場させています。

伊藤園が無議決権株式を上場させた理由は、議決権よりも配当を重要視する個人投資家の意見に応えるためであると言われています。

表 伊藤園の優先株式と普通株式の違い

見出し1 優先株式(上場株式) 普通株式(上場株式)
議決権 なし あり
配当 優先配当
普通配当額×125%(注2)
未払い分は累積
普通配当累積しない
普通株式への転換権 なし

国際石油開発帝石の種類株式

石油や天然ガス、鉱物の採掘や販売等を行っている国際石油開発帝石株式会社は、いわゆる”黄金株”という株式を経済産業大臣に交付しています。

この株式はたった1株で株主総会決議をひっくり返すことができる株式です。

しかしどんな決議でもひっくり返すことができるものではなく、一定のガイドラインが定められています。