以前、ブログの中の人がサポートしていた会社役員が上場準備中、SNSへ個人的に描いた記事が原因(他にも原因はありますが。。。)で訴訟を受けることになり、上場準備作業をストップしたことがあります(コンサル契約が終了し、私は経済的打撃を受けました(´;ω;`)ウゥゥ)。

その会社役員に対して訴訟提起した原告側は、競合企業(社長)でありまして、その競合企業が行っている「アコギな商売」に対し、会社役員がSNSで発信し、それ以降、お互いに感情がエスカレートしてしまったようです。

ブログの中の人は、つい先日、ある大手主幹事証券会社の公開引受部門担当者と話す機会があり、その中で上場を目指す会社のSNS発信に関する話しがありました。

その担当者は、10年以上、引受部門で働いていますが、10年前と今とでは、SNSに対する位置づけが全く違うと言っていました。

ここでは、その席で聞いた内容も含め、上場準備企業が準備すべきSNS利用に関する対策例を紹介させていただきます。

ブログの中の人が実際に使ったSNS関連規程をベースにした規程案も掲載しています。

記事の内容につきましては、保証等は一切できない事をご了承いただきますようお願いします。

主幹事証券会社や証券取引所は、SNSをチェックしています

主幹事証券会社の公開引受部門の担当者は、担当が決まった会社が発信するSNSをチェックすることから作業が開始することが定番になりつつあるようです。

チェックするSNSは、フェイスブックやツイッター、インスタグラム、Youtube、Tiktokは勿論、5chや発言小町などの掲示板サイトもチェックしているようです。

主に次のような情報の有無をチェックしているようです。

  • 経営者の資質に疑問が生じるような情報の有無
  • 取引先や顧客等から、商品やサービスに対する品質・クレーム情報の有無
  • 元従業員・現従業員から投稿された労務問題に関する情報の有無
  • SNS上で炎上やトラブル等の有無等

そこで「経営者の資質に疑問が生じる」とは、例えば、「会社が外部に公表している内容と異なる内容の投稿をする」「外部に公表してもよい情報と公表すべきではない情報の区別が出来ていない」という事になります。

主幹事証券会社との契約前、引受審査や上場審査に入る直前等にネガティブな評価を受けそうなSNS記事・投稿を削除しましょう。

SNS利用の全面停止を求める主幹事証券会社がある

ブログの中の人が現在関与している某会社の主幹事証券会社は、全役員及び執行役員に対し、SNSのアカウント(いわゆる”裏アカ”含む)の全面停止を求めました。

全面利用停止を求められたSNSとは、連絡手段と使われているLINEを除き、ツイッターやインスタグラム、フェイスブック等があり、そしてブログも含まれていました。

この要請は口頭だけで終わらず、「念書を徴収しろ」との要請もありました。

ブログの中の人は、このブログとツイッターのアカウントの存在を伝えた所、何とか了承を得ております。

これは上場直前期末に、いきなり要請を受けてしまい、相当戸惑いました。

主幹事証券会社を選定する際、役職員ならびに会社公式アカウントを使って発信しているSNSに対して、上場準備における対応について質問してみましょう。

個人利用SNSの完全制限は、不可能

ツイッターやフェイスブック等の多くのSNSは、いわゆる”裏アカ””捨てアカ”を作成することが出来、匿名で発信・投稿が容易に可能です。

SNSの全面停止を会社側が求めたとしても、SNSは裏アカ・捨てアカを簡単に作成出来るため、会社側の思惑通りになるのは、実質的に不可能だと思われます。

SNSの全面利用停止を要請した主幹事証券会社担当者は、SNSがマーケティングや人材採用等、幅広い目的に利用できるメリットを十分に認識しています。しかし大事な時期にトラブル等のリスク低減を最重要に考えてしまうようです。

つまり、会社は、上場直前にSNSでトラブル等が起きる心配を可能な限り排除する取組みが求められます。

まずは、SNSのリテラシー向上に関する啓蒙やセミナー等の開催が必要になってくるかもしれません。

SNSの研修をサービスとして展開している会社が存在します。問い合わせしてみてはいかがでしょうか?

SNSの利用に関する規程を作りましょう

SNSは、投稿者の個人的なリテラシーに依存してしまうリスクが存在する一方、会社が商品やサービスをSNSを使って発信する事は、一般的になりつつあります。

そのため、会社関係者がSNSを利用するにあたって、会社は一定のルールを作る必要性が高まっていると思われます。

そこで、ブログの中の人がつい先日、IPOに向けてサポートした会社へ提出したSNSの利用規程をひな型化してみました。

ぜひご参考ください。

ソーシャルメディア利用規程事例

第1章  総則

(目的)

第1条 本規程は、●株式会社(以下、「当社」という。)と当社子会社(以下合わせて、「当社グループ」という。)における保有情報について、役員及び従業員(契約社員、パート、アルバイト等を含む。以下、「役職員」と いう。)がソーシャルメディアを利用するに際し、そのリスクを理解した上、当社グループのみならず、取引先、その他の利害関係者の利益や権利を害しないために、必要な事項を定めたものである。 ただし、当社子会社において個別に規程類を制定している場合は、各社の個別規程類が本規程に優先する。

(適用範囲)

第2条 本規程は、当社グループの役職員に適用する。

(定義)

第3条 本規程において定めるソーシャルメディアとは、 SNS (フェイスブック、ツイッター、インスタグラム、 ユーチューブ、ティックトック等)、また電子掲示板やブログなど、インターネットを利用してユーザーが相互にコミュニケーションを行うことのできる情報伝達媒体をいう。

第2章 アカウントの作成と管理

(アカウント作成関連義務)

第4条 業務を目的にソーシャルメディアを利用する者(以下「業務目的利用者」という。)は、事前に、利用目的、利用ソーシャルメディア、作成予定利用アカウント名(作成したアカウント名が異なった場合は、作成後報告のこと)を情報セキュリティ管理規程に定められた情報管理統括責任者(以下「情報管理統括責任者」という。)に申請し承認を得なければならない。

【⇒ 業務目的に利用するアカウントは限定し、登録すべきと考えます。】

2 前項の定めとは別に、業務目的以外で役職員がソーシャルメディアへ当社グループの社名等を投稿(プロフィール等における記載含む)する場合、事前に情報管理統括責任者に申請し承認を得なければならない。

【⇒ 役職員は、個人SNSのプロフィールに勤務先を記載する事、また勤務先に関する投稿を行う可能性が考えられます。本規程案では、勤務先について投稿等を行おうとする際、事前承認を要するとしています。】

3 前項の定めとは別に、役員がソーシャルメディアのアカウントを保有する場合、また新規に作成する場合、情報管理統括責任者に申請し承認を得なければならない。

【⇒主幹事証券会社や証券取引所は、役員が発信するソーシャルメディアを確認する可能性が非常に高くなっています。会社は、事前に管理すべきと考えます。】

第3章 ソーシャルメディアの管理体制

(情報管理統括責任者)

第5条 情報管理統括責任者は、当社アカウントのソーシャルメディアから発信する情報を統括するとともに、その責任を負うものとする。

(業務を目的にソーシャルメディアを利用する者)

第6条 業務目的利用者は、情報管理統括責任者が認めた者のみとする。

【⇒ 業務目的利用者は限定し、登録すべきと考えます。本規程案には記載していませんが、業務目的利用者の資格(例えば、「社内研修修了者」)を定める事もアリだと思います。】

第4章 ソーシャルメディアから発信する情報の方針

(当社がソーシャルメディアから発信する情報の基本原則)

第7条 前条の定めにもとづき認められた業務目的利用者が、業務を目的にソーシャルメディアを通じ、発信できる情報は、当社グループの企業秘密に関する情報以外の情報であり、かつ次に限るものとする。

  • 当社が取り扱うサービスの広告目的に発信する情報
  • 当社が取り扱う製品・商品の広告目的に発信する情報
  • 人材採用を目的に発信する情報
  • 当社グループの会社情報の変更及びIRを目的に発信する情報

【⇒ 業務目的に利用するアカウントから発信できる情報は限定しましょう。そこで、あえて本規程案には「その他」や「等」という文言を記載しておりません。】

第8条 当社グループ役職員は、ソーシャルメディアから情報発信する場合、次の基本原則を理解し、遵守しなければならない。

  • 役職員として自覚と責任を持つこと。
  • 法令および就業規則その他の各種規程を遵守すること。
  • ソーシャルメディアへの情報発信が半永久的に残ることおよび瞬時に拡散し得ること並びに炎上リスクがあること等を理解し、発信する情報の内容を吟味すること。

(禁止事項)

第9条 当社グループ役職員がソーシャルメディアを通じ、情報発信する場合、次の各号に掲げる情報を発信してはならない。

  • 当社グループの企業秘密に関する情報
  • 職務上知り得た秘密や個人情報を含む情報
  • 当社グループまたは第三者の権利を侵害する情報
  • 当社グループを代表する見解や意見と誤解され得る意見等の情報
  • 誹謗中傷、虚偽の内容を含む情報
  • 人種、思想、信条等の差別、または差別を助長させる情報
  • 違法行為または違法行為を煽る情報
  • その他、法令、就業規則、その他の規程で禁止された情報

第5章 罰則

(懲戒)

第10条 役職員が故意又は重大な過失により、本規程に違反し、就業規則に定める各種懲戒事由に該当する場合は、同規則による措置を講じる。

2. 役員については、会社法等に照らして処遇が決定される。

附 則

(改廃)

本規程の改廃は、取締役会の決議による。

(所管部門)

本規程の所管部門は、●部とする。

(施行期日)

本規程は、令和●年●月●日より施行する。

誹謗中傷とは

商事法務研究会は、「インターネット上の誹謗中傷をめぐる法的問題に関する有識者検討会」という検討会を立ち上げ、本年5月に取りまとめの資料を公表しました。

こちらになります。

この資料は、インターネット上の誹謗中傷にあたる投稿等に関する法的問題が整理されています。

もし役職員、または会社組織がインターネット等で誹謗中傷を受けていると相談された際、また社内で啓蒙活動をする際、参考資料になると思われます。

まとめ

IPOを目指す会社にとってのSNSのあり方について、紹介してみました。

上場を目指す会社の役職員がSNSを利用するのであれば、証券会社や証券取引所は、炎上リスクやトラブルリスクを非常に毛嫌いする事を理解した上で利用しなければならない事を認識しましょう。

このブログ記事を書く直前、某暴露系Youtuberと某政党党首が某有名企業の有名社長のスキャンダルを暴露をしていました。

もし、このような事が上場直前に暴露されてしまった場合、真偽は別にして、上場準備作業の延期は間違いないですね。

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