東京への一極集中が社会問題になっていますが、IPOにおきましても同様です。例年、IPOを達成した企業の内、首都圏に本社がある会社が80%前後占めておりまして、IPOに関与する専門家は首都圏に集中しています。

しかし首都圏以外に本社を持つ会社の中にも、IPOを目指す会社が多く存在します。

東名の目論見書

2019年4月3日に東証マザーズへ上場した株式会社東名は、三重県四日市市に本社を置く地方企業です。

株式会社東名主幹事証券会社は東海東京証券株式会社です。

2019年に東海東京証券会社を主幹事証券会社としてIPOを達成した会社は4社のみですが、全て名古屋を中心とした中京圏に集まっています。

東海東京証券会社は、名古屋を地盤とした準大手証券会社の1社であり、東海地区企業のIPO支援に熱心な証券会社です。

地方企業のIPOに熱心な証券会社

2019年にIPOを達成した会社の本社住所を地区別に分類し、それぞれがどの主幹事証券会社になっていたのかという表を次にまとめました。

表 2019年にIPOを達成した会社の本社地区別の主幹事証券会社

関東地区 近畿地区 東海地区 四国地区 中国地区 九州地区
野村 12 1 2 1 1 0
大和 15 2 2 0 0 0
日興 18 2 0 0 0 0
みずほ 11 0 0 0 0 1
三菱UFJ 2 0 2 0 0 0
SBI証券 5 1 0 0 0 0
いちよし 0 1 0 0 0 0
東海東京 0 0 3 0 0 0

大手銀行は、緩やかな形で地盤をもっています。三井住友系は関西に強く、三菱UFJ系は中部地区に強く、みずほ系はどちらかというと東京一極集中型です。

このイメージは、特に銀行系証券会社も同様な感じです。一方、独立系証券会社の野村証券と大和証券は、全国的にブランドイメージが浸透しているようです。

東海東京証券は、中部地区に絞り込んでいるような感じです。

地方企業が主幹事証券会社を選定する際のアドバイス

証券会社の人事施策において、社内のエース級・準エース級人材は、強い地域に集中して配置されるのが当たり前であり、それは証券会社ではなくても、どの会社でも同じだと思います。したがいまして、証券会社の公開引受部門のエース級人材は東京に集まらざるを得ないのが現実だと思います。

そこで、IPOを目指す地方企業が主幹事証券会社を選定する際、その地方の実績は意外と重要だと思います。

東京にIPO関係部門の拠点を一極集中させている証券会社の場合、地方企業にとっては、「気軽に打ち合わせ等がやりづらくなる」というデメリットがある反面、「東京での豊富な経験や最新情報を持つスタッフが担当してくれる」という期待や安心感が持てます。

一方、拠点を地方分散させている証券会社の場合、「気軽に打ち合わせ等がやりやすくなる」というメリットがある反面、「担当するスタッフが豊富な経験や最新情報を持っているのか」という不安が出てきます。

地方企業が主幹事証券会社を選定する際、その地方の実績だけではなく、特に証券会社の公開引受部門の体制について確認しましょう。拠点を地方分散させている証券会社の場合は、公開引受部門の人事ローテーションや東京の公開引受部門との情報交換活動内容について確認しましょう。