IPO前に株式の発行や譲渡、ストックオプションの発行はよくありますが、たまに新株予約権の譲渡を行っている事例があります。
たまにしかない事例に対しては、審査で必ず問われます。
JMDCの目論見書チェック
2019年12月16日東証マザーズへ上場した株式会社JMDCの目論見書によれば、上場前に新株予約権の譲渡が行われていることがわかります。
この件について、以下のような説明があります。
当社は2013年9月に、ノーリツ鋼機グループに所属する役職員に対し当社の新株予約権を有償で発行しました。ノーリツ鋼機グループでは、投資事業を継続的に営む中で、投資ファンドやコンサルティング会社などの出身者で構成する投資チームを構築しておりました。そして、確実な投資回収のための投資担当者に対する業績伸長のインセンティブ付けを目的に、投資担当者の自己負担を伴う有償型の新株予約権を発行することをルール化しておりました。当社においてもノーリツ鋼機グループの当該方針に従い、新株予約権を発行しました。
今般当社が上場するにあたり、ノーリツ鋼機グループからの独立性を確保する観点から、当社が投資担当者へ発行した新株予約権の取り扱いについて、ノーリツ鋼機株式会社の監査等委員及び外部の弁護士を構成員とした特別委員会を設置し検討を行いました。検討の結果、当社がノーリツ鋼機グループの傘下に入った後、投資担当者の貢献もあり当社の業績が拡大した事実を踏まえ、当社の事業運営に直接かつ継続的に関与している者を除き、投資担当者へ発行した新株予約権を時価にて買い取ることとしました。当該方針に従い、2018年3月30日付でノーリツ鋼機株式会社の100%子会社であるNKリレーションズ合同会社へ当該新株予約権の譲渡が行われました。
新株予約権の譲渡価格は、「直近に行われた株式譲渡の譲渡価格から当該新株予約権の行使価額を控除した金額を参考として、当事者間で協議の上決定した価格であります。」と説明しています。
要約すると、株式会社JMDCは、IPO前に新株予約権を持たざるべき者から、適正価格で新株予約権を買い取った。ということになります。
新株予約権の譲渡
JMDCは「有償型の新株予約権である」「IPO時に持たざるべき者が新株予約権を保有している」という二つの条件があったため、新株予約権の譲渡を行ったと思料します。
もし「無償」であれば、新株予約権の消却を行っていたと予想しています。
ここでいう「有償型の新株予約権」とは、新株予約権を貰うときに金銭を払い込んだ新株予約権のことを指します。一般的なストックオプションは、「無償型の新株予約権」であり、つまりタダで貰った新株予約権になります。
新株予約権の譲渡に関して、検討する会社は意外と多く存在します。そのほとんどは、
「税制適格ストックオプションを付与した人が退職した。退職者が保有していた税制適格ストックオプションを取り上げて、最近入社した人(税制適格ストックオプション発行後に入社した人)へ譲渡させたい」です。
税制適格ストックオプションの要件のひとつに「譲渡不可」があるため、税務上の解釈においても、税制適格ストックオプションの譲渡は不可になっています。