上場審査と引受審査の想定問答集づくりに大きな参考材料となります。

引受審査と上場審査は、書面で膨大な質問をされ、定められた期限内に書面で回答する必要があります。

IPOを目指す会社が、審査から受けた全質問に対し、質問を受けてから回答を社内で考え始めるというのは非現実的であり、事前に最大限の想定問答を準備しておく必要があります。

想定問答の作り方は、自社の事業内容や会社規模などを考慮しつつ、基本的な想定問答をベースにして作成することが基本になります。

つまり世間一般の企業が回答するような内容から、多少のアレンジを加えた回答が模範的な回答であり、上場審査ではウケ狙いの奇抜な回答を行う必要は全くありません。

想定問答は基本的に、証券会社の公開引受部門担当者、またはIPOコンサルタント等の専門家から提案をうけるケースが多いですが、100%専門家に頼ることは危険な行為です。

想定問答の内容は法令や社会問題等で変化するものですが、数年前の事例をそのままコピペして、想定問答を提案する専門家が多数あるため、専門家が提案してきた想定問答の内容を社内で評価できるようにしなければいけません。

それを行うための参考資料として、上場審査用の想定問答集が販売されていれば最もピッタリなのですが、残念ながら、そのような書籍は、存在しません。

しかし、それに最も近い書籍として取り上げられるのが、株式会社商事法務が毎年出版している株主総会想定問答集です。

この株主総会想定問答集は、毎年出版されており、会社法などが改正されるとその改正に応じた回答案に反映されています。

株主総会想定問答集は、毎年以下のような想定問答が入っています。

株主総会想定問答集の主な内容やポイントなど
  1. 解説編
    • 「最近の企業をめぐる諸問題」という章があります。特にこの章で取り上げられた内容に関係する業種の会社は、想定問答作成の参考材料になります。
    • 「議長・説明担当役員の発言例」は、役員や監査役など上場審査において面談対象となる人の参考材料になります。
  2. 質疑応答編
    • 具体的な質疑応答例が数多くあります。以下のような箇所が上場審査の想定問答作成の参考になりそうです。
      • 経営方針に関する質疑応答例
      • 財務諸表(貸借対照表、損益計算書など)に関する質疑応答例
      • 取締役・取締役会に関する質疑応答例
      • 監査役・監査役会に関する質疑応答例
      • 役員報酬・賞与に関する質疑応答例
      • 剰余金配当等に関する質疑応答例など

ただし、想定問答で作成する回答は、この本をコピペするだけでは明らかに不十分です。この本にある回答内容より、1段も2段も具体的なものを作成する必要があることに留意が必要です。