
東証は、現在5つの市場(東証1部・2部、マザーズ、JASDAQグロース・スタンダード)が存在します。JASDAQ市場とは元々、東証が運営していた市場ではなく、大阪証券取引所(現大阪取引所)が運営していた市場でした。大阪証券取引所は、2013年に東証へ実質的に吸収合併されました。その際、JASDAQの編成が議論になりましたが、混乱が予想されたため、JASDAQは継承され、現在に至っています。
しかし、各市場の特色・特徴が曖昧であるという指摘が以前からありました。IPOを目指す会社にとっては、特に「JASDAQスタンダードと東証2部」「JASDAQグロースとマザーズ」の違いがあまり理解できないため、自社の特性にとってどちらを目指すべき市場なのかという判断がしづらい状況です。
そこで東証は、2018年から市場の再編成を検討開始し、2020年2月に「新市場区分の概要等について」を公表しました。その内容は以下のようになります。
市場区分が5市場⇒3市場になる
新市場区分は、現在の5市場から3市場へ削減することが公表されました。3市場のコンセプトは以下のとおりです。
表 新市場区分名(仮称)と各市場のコンセプト
市場名(仮称) | コンセプト |
---|---|
プライム市場 | 多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額・流動性を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資家との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業及びその企業に投資をする機関投資家や一般投資家のための市場」 |
スタンダード市場 | 「公開された市場における投資対象として一定の時価総額・流動性を持ち、上場企業としての基本的なガバナンス水準を備えつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業及びその企業に投資をする投資家のための市場 |
グロース市場 | 「高い成長可能性を実現するための事業計画及びその進捗の適時・適切な開示が行われ一定の市場評価が得られる一方、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業及びその企業に投資をする機関投資家や一般投資家のための市場 |
各市場の新規上場基準(形式要件)や上場維持基準は以下のとおりになりそうです。
表 新市場区分での新規上場基準と上場維持基準の概要
新市場区分 | 項目 | 新規上場形式基準 |
---|---|---|
プライム | 流動性 | 新規時価総額:250億円以上
株主数:800億円以上 流通株式数:20千単位 |
ガバナンス | 流通株式比率:35%以上
コーポレートガバナンスコードの遵守:高い水準を求められる |
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経営成績・財政状態 | 利益水準:最近2年間の利益水準が25億円※以上
純資産:50億円以上 |
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スタンダード | 流動性 | 流通株式時価総額:10億円以上
流通株式数:2千単位以上 株主数:400人以上 |
ガバナンス | 流通株式比率:25%以上
コーポレートガバナンスコードの遵守:全原則を適用される |
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経営成績・財政状態 | 利益水準:直前期の利益が1億円以上
純資産:正 |
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グロース | 流動性 | 流通株式時価総額:5億円以上
流通株式数:1千単位以上 株主数:150人以上 |
※ 最近2年間の利益水準が25億円に達していない場合、売上高100億円以上かつ時価総額1千億円以上
流通株式の定義が見直される
現在の定義では、保有比率が10%未満である株主の株式であれば、一律に流通株式として取り扱っています。流通株主の定義において、保有比率を関係なくすように見直される。
コーポレートガバナンス・コードが改訂される
コーポレートガバナンス・コードが改訂され、プライム市場とグロース市場は、全ての原則が適用されるようです。一方、グロース市場は、基本原則の適用でOKのようです。
市場区分の変更前に形式要件が変更される
- 2020年7月に以下のような見直しが行われることになりました。
- 市場第一部への新規上場・市場変更等基準の共通化
- 市場第二部及びJASDAQスタンダードの上場基準の共通化
- マザーズの上場基準の見直し
- JASDAQグロースへの新規上場受付の停止など
2022年4月1日に一斉移行される
- 基本的に次のように移行されることが想定されており、次の5つとは異なる移行(マザース上場会社がプライム市場もしくはスタンダード市場への上場等)を希望する会社に対しては、審査が行われる。
- 東証1部上場会社 ⇒ プライム市場上場会社 or スタンダード市場上場会社へ
- 東証2部上場会社 ⇒ スタンダード市場上場会社へ
- JASDAQスタンダード上場会社 ⇒ スタンダード市場上場会社へ
- マザーズ上場会社 ⇒ グロース市場上場会社へ
- JASDAQグロース上場会社 ⇒ グロース市場上場会社へ
- 2021年9月から12月までの間に市場選択の意向について、取締役会で決議し、所定の申請書で申請をする。
- 東証は、2021年6月末を基準日として、新市場区分の上場維持基準に適合しているか否かの判断をし、通知する。上場維持基準を満たしていないと通知された会社は、上場維持基準の適合に向けた計画書を提出・開示しなければいけない。