IPO前に採用するインセンティブプランは、ストックオプションが最も多い手段ですが、ストックオプションは無償で取得できる手段のため、インセンティブとして物足りないと感じるオーナー社長は多く存在します。

そこでオーナー社長が役職員へ保有する一部株式を購入させ、役職員が自社株式を保有させる手段があります。

メドレーの目論見書チェック

2019年12月12日に東証マザーズへ上場した株式会社メドレーの代表取締役は、直前期や直前々期において「インセンティブ付与のため」という理由で役職員へ個人保有している自社株式の一部を役職員へ売却しています。

なお、売買の際の株価は「直近の第三者割当増資の価格等を参考として、当事者間で協議の上、決定した価格です。」となっています。

オーナー社長と役職員間で自社株式を売買するときの留意点

IPO前に株式を売買する際、税務面だけではなく、上場審査面、実務面で留意点があります。

税務に配慮しましょう
  • 売買する株価が時価より高い場合、または低い場合、株式の買い手、もしくは売り手に贈与税課税がかかるため、気を付けましょう。
売り手 買い手
時価 所得税法・相続性法上の時価 相続税法上の時価
売価<時価の場合(低廉譲渡) 売価-取得価額(所得課税) 時価-売価(贈与税課税
売価=時価の場合 売価-取得価額(所得課税)
時価>時価の場合(高額譲渡) 時価-取得価額(所得税課税)・売価-時価(贈与税課税
  • 特に従業員持株会へ低廉譲渡を行ってしまうと、従業員持株会会員個人が贈与税課税義務が生じてしまうため、気を付けましょう。
オーナー社長個人が短期売買で利益を得た場合、ネガティブです
  • 自社株式を短期売買によって、オーナー社長が利益を得ている場合、ネガティブです。
  • 例えば、会社がオーナー社長へ第三者割当増資し、その後、短い期間で、第三者割当増資における株価より高い株価でオーナー社長から役職員へ株式を売却するような行為はネガティブです。
退職や個人的な経済的事情を考慮する必要があります
  • 株式をオーナー社長から買い取った役職員が退職した場合、または経済的事情により売却意向が出たときのことを考える必要性が出てきます。
  • メドレーでは、代表取締役が頻繁に株式の買い戻しをしています。