IPO準備が始まると、ほぼ同時に監査活動が始まります。
監査に関する用語をいろいろ聞くことになります。その中のひとつの監査調書について説明します。
監査調書とは
監査法人や監査役、内部監査部門が作成した監査計画や監査手続の内容、課題などの書類一式のことです。
監査法人、監査役、内部監査部門が用意すべき監査調書の内容は、ほぼ同じですが、各協会が考えている監査調書の内容について次で紹介します。
監査法人の監査調書の内容
日本公認会計士協会監査基準委員会報告書 230「監査調書」にあります。
本報告書の要求事項及び他の監査基準委員会報告書の文書化に関する特定の要求事項を満たす監査調書は、以下の証拠を提供する。
- 監査人の総括的な目的の達成に関する監査人の結論についての基礎となる証拠
- 一般に公正妥当と認められる監査の基準及び適用される法令等に準拠して監査計画を策定し監査を実施したという証拠
そこで「1.監査人の総括的な目的の達成に関する監査人の結論についての基礎となる証拠」というものは、次のようなものになります。
財務諸表監査の実施における監査人の総括的な目的は、以下のとおりである。
- 不正か誤謬かを問わず、全体としての財務諸表に重要な虚偽表示がないかどうかについて合理的な保証を得ることにより、財務諸表が、すべての重要な点において、適用される財務報告の枠組みに準拠して作成されているかどうか(適正表示の枠組みの場合は、財務諸表がすべての重要な点において適正に表示されているかどうか。)に関して、監査人が意見を表明できるようにすること。
- 監査人の発見事項に従って、財務諸表について監査意見を表明するとともに、監査基準委員会報告書により要求されるコミュニケーションを行うこと。
監査役の監査調書の内容
監査役が作成する監査調書の内容等については、公益社団法人日本監査役協会が公表している「監査役監査実施要領」の第8章第2項6「監査調書等の記録」が基本になります。なおその内容は以下のとおりになります。
- 監査調書
- 監査調書の記載事項
- 監査調書は、自己の監査実績の記録であると同時に、他の監査役及び監査役会に報告するための文書であり、監査役間で情報を共有化し、各監査役が必要に応じ参照する共有の記録となるため、次の事項を記録し保管する。
- 監査実施年月日
- 監査対象先、対応者
- 監査担当者
- 実施した監査方法(報告徴取・資料閲覧・立会い・視察等)
- 監査結果・指摘事項・所見等
- 監査意見の形成に至った過程・理由等
- その他補足説明
- 監査調書は、自己の監査実績の記録であると同時に、他の監査役及び監査役会に報告するための文書であり、監査役間で情報を共有化し、各監査役が必要に応じ参照する共有の記録となるため、次の事項を記録し保管する。
- 監査調書の活用
- 監査調書は、期末に作成する法定の「監査役監査報告」ではないため、監査役会外(株主等)に報告することを求められていないが、代表取締役及び監査役会への報告のほか取締役及び使用人(監査役監査の被監査部門含む)に対し助言・勧告等を行うために必要に応じて活用する場合がある。ただし、情報提供者を保護する必要や、機密事項が含まれる場合等は、監査調書から必要事項のみを抜粋する等、取扱いに配慮する。
- 監査調書の記載事項
- その他、監査調書に準ずる記録
監査役は、取締役及び使用人等の業務執行者若しくは会計監査人からの随時の報告を受けた場合や意見交換を行った場合、その他重要会議出席に際して当該会議の議事録に記載されない監査役としての所見等で監査役間の内部で記録に残すことが適切と判断した事項等について、会見記録、報告徴取記録、会議出席記録等により、記録を残すことが望ましい。
内部監査の監査調書の内容
内部監査の監査調書については、日本内部監査協会の「内部監査基準実践要綱」に書かれている内容が基本になります。
- 監査調書は監査実施過程に関連する文書のファイルであり、これには例えば次のものがある。
- 監査計画書
- 内部統制システムの妥当性と有効性の調査と評価に関する資料
- 実施した手続の内容を示す文書、入手した情報、内部監査人の意見形成過程を示す文書
- 報告書の草稿、報告書
- フォローアップの実施状況を示す文書
- 監査調書には、具体的には、次のようなものも含まれる。
- 監査計画書と内部監査実施計画書
- コントロールに関する質問書、フローチャート、チェックリストおよび業務概要
- インタビューから得られたノートやメモ
- 組織図や職務記述書などの組織のデータ
- 重要な契約書や合意書のコピー
- 経営方針や財務方針に関する情報
- コントロール評価の結果
- 確認書や陳述書
- 取引、処理および勘定残高の分析およびテスト
- 分析的手続の結果
- 監査業務の最終報告と経営管理者の回答
- 監査結果を文書化した業務の通信文
上場準備における監査調書
上場審査への提出資料として、監査役や内部監査の監査調書が含まれ、また監査法人から受けた指摘内容や対応について書面で提出する必要があります。上場準備では次のような対応が求められます。
- 監査法人から提出をうけた監査調書の内容は、取締役会や取締役会に準じた会議体の中で話し合いましょう。
- 監査計画などを入手次第、監査法人による監査を受ける前に、社内で改善を目指しましょう。
- 監査調書の内容を通じて、監査役の監査の質・量が判断されます。
- Ⅰの部には、監査役や監査役会の主な活動状況(監査役会の開催頻度や主な検討事項等)を記載する項目があります。さらに金融庁は「監査役、監査委員及び監査等委員の活動状況については、常勤者のみの活動の記載だけではなく、非常勤の者も含めて記載される必要があります。」 との考えを明確にしています。監査役は、監査調書がⅠの部の記載内容のエビデンスになる事を意識しましょう
監査調書と監査報告書
類似用語として、監査報告書があります。
↓で説明しています。
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