投資家のタイプをざっくりと2つに類別すると金融商品取引法上、特定投資家と一般投資家に分かれることになります。
一般投資家というのはイメージがつきやすいのですが、あくまでもイメージだけと思います。
特定投資家を知れば、一般投資家が理解できることになりますので、ここでは特定投資家について主に説明させていただきます。
特定投資家と一般投資家の違い
ざっくりとした説明になりますが、特定投資家はプロの投資家、一般投資家はアマチュアの投資家という違いになります。
投資家に関するプロとアマチュアについて主な違いは、次の3つになります。
特定投資家のみがTOKYO PRO Market市場で株式の買付が出来る
TOKYO PRO Market市場への上場審査水準は、グロース市場等の他市場に比べ、非常に緩く設定されています。
したがいまして、TOKYO PRO Market市場は、投資リスクが非常に高い市場であり、一般投資家の投資が不向きな市場として位置づけられています。
特定投資家のみが、TOKYO PRO Market市場を使って、株式の買付が出来ます。
一般投資家は、TOKYO PRO Market市場におきまして、売却注文のみ可能になっています。
特定投資家に対する取引は、適合性の原則から解放される
適合性の原則というのは、↓のような内容です。
【適合性の原則(金融商品取引法第40条第1号)】
- 金融商品取引業者等は、業務の運営の状況が、次に該当することのないように、業務を行わなければならない。
- 金融商品取引行為について、
- 顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして、
- 不適当と認められる勧誘を行って投資者保護に欠け、又は欠けるおそれがあること
金商法では、証券会社等の金融商品取引業者は、特定投資家に対してリスクが高い商品をガンガン提案して良く、一般投資家に対しては丁寧に扱いましょうというものです。
逆に言えば、一般投資家は証券会社等が扱っている有価証券等の内、一部の有価証券等しか売買できませんが、特定投資家になれば、その制限が外れて、どんな有価証券も売買できるようになるという事になります。
書面の交付義務が異なる
証券会社に口座をお持ちの方は、ご存じだと思いますが、証券会社は顧客に対し、「小さな文字で長々と書かれており、誰が読むねん!」と思うような資料をあれこれ郵送し、「同意しました」「読みました」などのチェックを促します。
これらのほとんどの資料は、金商法において交付義務がある資料になります。
証券会社は、特定投資家に対する書面の交付義務は、一般投資家相手に比べると簡略化されます。
逆に言えば、特定投資家になれば、面倒な書面の多くが簡略化されますので、一般投資家にありがちな「〇×書類が提出されませんでしたので、株の売買が出来ない状態です」というような事を証券会社から言われにくくなるという事になります。
一般投資家に移行出来ない特定投資家
法令上、特定投資家より一般投資家の方が保護対象になっています。
そこで「一般投資家の方がメリットあるわ」と考える特定投資家が出てくる可能性は、ゼロではありません。
しかし、一般投資家に移行出来る特定投資家と移行出来ない特定投資家の2パターンが存在します。
一般投資家に移る事が出来ない特定投資家とは、どのような投資家になるのでしょうか?
次のような投資家になります。
- 適格機関投資家
- 国
- 日本銀行
プロ中のプロは、一般投資家に移行出来ないということになります。
一般投資家に移行出来る特定投資家
上述に挙げた特定投資家以外の特定投資家は、一般投資家に移行出来ます。
次のような特定投資家になります。
- 特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人(いわゆる「特殊法人」及び「独立行政法人」をいいます。)
- 投資者保護基金
- 預金保険機構
- 農水産業協同組合貯金保険機構
- 保険契約者保護機構
- 特定目的会社
- 金融商品取引所に上場されている株券の発行者である会社
- 取引の状況その他の事情から合理的に判断して資本金の額が5億円以上であると見込まれる株式会社
- 金融商品取引業者又は特例業務届出者である法人
- 外国法人
特定投資家に移行出来る一般投資家(2022/9 update)
特定投資家に関するカテゴリーは、3つあります。
上で取り上げた「一般投資家に移行出来ない特定投資家」と「一般投資家に移行出来る特定投資家」、そして「特定投資家に移行出来る一般投資家」です。
2022年6月30日に「金融商品取引業者等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」等が公布され、7月1日から施行され、「特定投資家に移行出来る一般投資家」について改正があり、若干の緩和がされました。
特定投資家に移行出来る一般投資家とは、以下になります。
- 特定投資家以外の法人
- 一定の要件に該当する個人
-
- 匿名組合の営業者、民法組合の業務執行組合員又は有限責任事業組合の重要な業務執行決定に関与し自ら執行する組合員である個人(出資合計額3億円以上の組合、全組合員の同意取得が要件)
- 下記の①~④の要件のいずれかに該当する個人
①次の全てに該当する個人
(ⅰ)取引の状況その他の事情から合理的に判断して、純資産の合計額が3億円以上と見込まれること。
(ⅱ)取引の状況その他の事情から合理的に判断して、投資性のある金融資産の合計額が3億円以上と見込まれること。
(ⅲ)最初に申出に係る契約の種類に属する契約を締結した日から1年を経過していること。②次のいずれかに該当し、かつ、①(ⅲ)に該当する個人
(ⅰ)取引の状況その他の事情から合理的に判断して、純資産の合計額が5億円以上と見込まれること。
(ⅱ)取引の状況その他の事情から合理的に判断して、投資性のある金融資産の合計額が5億円以上と見込まれること。
(ⅲ)取引の状況その他の事情から合理的に判断して、前年の収入が1億円以上と見込まれること。③承諾日前1年間における1月当たりの証券・デリバティブに関する取引契約等の平均的な契約の件数が4件以上である場合において、①(ⅰ)又は(ⅱ)に該当し、かつ、①(ⅲ)に該当する個人
④特定の知識経験を有する者で、次のいずれかに該当し、かつ、①(ⅲ)に該当する個人
(ⅰ)取引の状況その他の事情から合理的に判断して、純資産の合計額が1億円以上と見込まれること。
(ⅱ)取引の状況その他の事情から合理的に判断して、投資性のある金融資産の合計額が1億円以上と見込まれること。
(ⅲ)取引の状況その他の事情から合理的に判断して、前年の収入が1千万円以上と見込まれること。※「特定の知識経験を有する者」は、次のいずれかに該当する者になります。
(ア)金融業に係る業務に従事した期間が通算して1年以上の者
(イ)経済学又は経営学の教員職・研究職にあった期間が通算して1年以上の者
(ウ)証券アナリスト、証券外務員(1種・2種)、1級・2級ファイナンシャル・プランニング技能士又は中小企業診断士のいずれかに該当し、その実務に従事した期間が通算して1年以上の者
(エ)経営コンサルタント業に係る業務に従事した期間が通算して1年以上の者その他の者であって、(ア)~(ウ)の者と同等以上の知識及び経験を有するもの -
つまり金商法で定める金持ちの基準になります。
みなさん、これを目指して頑張りましょう!
まとめ
特定投資家と一般投資家の用語について紹介させていただきました。
IPO準備をすると「〇×投資家」という類似用語が出てくるため紹介させていただきました。
Disるわけではありませんが、このブログを作成した日現在、野村證券さんの特定投資家に関する説明は、古い情報です。
こちらになります(あえてスクショを止めました)。
特定投資家に移行出来る一般投資家に関する法令(金融商品取引業者等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令)が公布されてから1カ月を経っておりますが、古いままです。
このような事は他にもありまして、例えば日本版スチュワードシップ・コードに関する説明です。
こちらになります(あえてスクショを止めています)。
野村證券さんの証券用語解説集には、日本版スチュワードシップ・コードには、7つの原則があると記載しておりますが、これも古く、今は8つの原則です。
根拠は、こちらの11頁になります。この改訂は、2年以上前になります。
「スチュワードシップ・コード」でググると、野村さんのこのサイトは、トップページに出てきますが、IPOAtoZのスチュワードシップ・コード記事は、ググっても中々出てきません(悲しい限りです)。
IPOAtoZが発信する情報は、絶対正しいという保証は出来ませんが、大手企業が発信している情報の中にも正しくない情報が存在するので注意しましょう。
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