通算規定は、有価証券を短期間で複数回、発行・売出しした場合に気を付けなければならない規則です。

通算規定を理解するためには、まず募集と私募を理解する必要があります。

こちらで説明していますので、ご参考ください。

募集【IPO用語】

私募

通算規定とは

企業が新たに有価証券を発行する場合、又は、有価証券の売出しをする場合、その勧誘を行う相手の人数や発行(売出)価額の総額等が一定の基準に該当するときは、有価証券通知書又は有価証券届出書の提出が必要となります。

有価証券届出書というのは、数百ページに至る書類であり、会社の財務諸表等を細かーく記載する必要がある書類なので、非公開企業はIPO時を除き、有価証券届出書を作成する事は、極めてハードルが高く、現実的ではありません。

そこで、有価証券届出書の提出を逃れようとして、複数回に分けて、有価証券の募集を行うという手段が考えられます。

例えば、50名の人に対し、総額1億円の発行価額になる第三者割当増資を行おうとする場合、有価証券届出書の提出が必要になってしまいます。そこで25名づつ総額5千万円の第三者割当増資を2回に分けて行えば、有価証券届出書を提出しなくていいじゃんという考えが頭に過ります。

しかし、通算規定がそれを阻みます。

「通算規定とは」

  1. 今回の有価証券の募集・売出しを開始する日前1年以内に同一の種類の有価証券の募集・売出しをしている場合で、発行価額や売出価額の総額を通算して1億円以上となるときは有価証券届出書が必要
  2. 今回の有価証券の発行日以前6月以内に同一種類の有価証券を発行している場合で、勧誘の相手方の人数・延べ人数を通算して50名以上となり、かつ、発行価額の総額を通算して1億円以上となるときは有価証券届出書が必要
  3. 今回の有価証券の売付け勧誘等が行われる日以前1月以内に同一種類の有価証券の売付け勧誘等が行われた場合で、勧誘の相手方の人数・延べ人数を通算して50名以上となり、売出価額の総額を通算して1億円以上となるときは有価証券届出書が必要

1.の「同一の種類の有価証券」と2.及び3.の「同一種類の有価証券」は定義が異なることに注意が必要です。

「同一の種類の有価証券」と「同一種類の有価証券」
  • 「同一の種類の有価証券」

金融商品取引法第2条各号に掲げる有価証券の区分が同一のもの(企業内容等の開示に関する内閣府令第2条第4項第2号及び第1条第2号、金融商品取引法第2条参照)(なお、株券、新株予約権証券、新株予約権付社債券は同一の種類の有価証券です)

  • 「同一種類の有価証券」

金融商品取引法第2条に規定する定義に関する内閣府令第10条の2の各号に掲げる有価証券の区分に応じ、当該各号に定める事項が同一である有価証券(金融商品取引法第2条に規定する定義に関する内閣府令第10条の2をご参照ください)

有価証券届出書の提出を忘れてしまったことが判明すると、IPOの準備作業はひとまずストップになります。

関東財務局のサイトがもっともわかりやすいと思います。