IPOを準備する会社の多くがストックオプションを導入します。
ストックオプションを導入するにあたっては、最初にストックオプションの導入目的を整理することが重要になります。
ほとんどは、次の4点に集約されます。
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- ストックオプションで役職員のモチベーションを上げたい!
- ストックオプションで離職率を抑えたい!
- ストックオプションで優秀な人材採用を行いたい!
- ストックオプションで株主構成を是正したい!
ここでは、ストックオプションの導入目的ごとに、どのような論点が発生し、どのような対応例が存在するのかということを紹介させていただきました。
なおストックオプションについては、こちらで説明していますので、ご参考ください。
従業員がモチベーションアップをするために
IPOを達成するためには、これまで以上に役職員が大活躍する必要があるのは言うまでもありません。
従業員がモチベーションアップするための施策として、ストックオプション導入をしようとする経営者が多々存在します。
その際、主な論点は次のようになります。
どの数量であれば、モチベーションアップに繋がるか
ストックオプションを多く出せば出すほど、モチベーションアップに間違いなく繋がります。
しかしストックオプションの乱発をしてしまうと、IPO時の発行価格の形成をするにあたり、大きなネガティブ材料になってしまいます。
そこで、ストックオプションの発行数を出来るだけ抑えつつ、かつモチベーションアップに繋がるように、出来るだけ効果が高いストックオプションの量を検討することになります。
そこでよく議論になるのが株式分割です。
例えば、1株あたり権利行使価格10万円のストックオプションを1株割り当てるより、1株あたり権利行使価格1千円のストックオプションを100株割り当てる方がモチベーションアップに繋がるのではという議論です。
これは、意外とバカに出来ない議論です。
IPOの目標時期とのリンクさせる
IPOにより資金を獲得し、信用度を高めると、会社の成長速度が爆発的に上がることが期待できます。
そのため、経営者の多くは、結果的にIPOを達成すればOKということではなく、IPOの目標スケジュール通りに達成することを重要視します。
IPOの目標スケジュール通りに達成すれば、大きな果実を得ることが出来るとアピールするためにストックオプションを活用する例は多く存在します。
そのようなストックオプションの場合、ストックオプションの権利行使期間とIPOの目標時期をリンクさせることを検討します。
例えば、上場の目標スケジュールが明確になっている会社の場合、ストックオプションの権利行使期間を長期間にせず、あえて短期間に設定します。
これはスケジュール通りに、IPOを達成することを重要視し、それを達成出来なければ、改めてストックオプションを発行し直すことを念頭に置いています。
説明会の重要性
ストックオプションの説明会は、必須です。
「ストックオプションとは?」「IPOとは」「ストックオプションの導入目的」「ストックオプションを権利行使すると、どのような果実を得ることができるのか」などをしっかりと説明することは、絶対です。
ストックオプションの説明会を通じ、経営者が従業員に対して「うちの会社はIPOを目指す」という発表をするケースが多々あります。
ストックオプションの説明会では、IPOを達成すると、会社やオーナーだけではなく、従業員にメリットがあるということに時間をかけることになります。
離職率の抑制効果を高めるために
経営や会社運営を安定化するためには、離職率の低下が課題になります。
特に離職率が高い業界の経営者は、離職率の低下を期待してストックオプション導入を検討するケースが多々存在します。
ストックオプションを離職率抑制の施策として活用するためには、ストックオプションの制度設計を通じて「長期間勤務すれば、良いことがありますよ」というメッセージを届けることが重要になります。
勤務期間と割当数をリンクさせる
ストックオプションの割当数の配分を勤務期間に比例させる事例が多くあります。
例えば会社設立時から従事していた従業員に対しては、役職に関係なく、手厚く割り当てるという考えです。
この考えは、公平性が保たれやすいため、社内で納得感が得られやすくなります。
「長期間働く方が得をする」という社内アピールにも繋がります。
ブログの中の人が、お客様から「ストックオプションの割当の配分で困っている」と質問があれば、勤務期間で比例させることをおススメしています。
一気に権利行使させるような制度設計にしない
ストックオプションは権利行使期間に入れば、権利行使できるようになります。
しかし権利行使可能期間の開始日に一気に権利行使が出来るようにしないような制度設計にするという検討を行います。
例えば、権利行使期間を前半と後半の2つに分け、前半では半分しか権利行使できないというようなストックオプションに設計します。
全てのストックオプションを権利行使するためには、長期間働く必要があるというメッセージに繋がります。
次の会社で採用しています。
権利行使が可能となる開始日を遅くする
税制適格ストックオプションは、権利行使開始日を付与の決議日から2年後からになります。
その開始日を3年後や4年後等に遅らせることも検討することになります。
しかし権利行使開始日を遅いストックオプションの場合は、モチベーションアップに繋がらない可能性が出てきます。
優秀な人材を採用するために
IPOを目指すためには、管理部門を中心として、経験者を中心とした人材採用を検討することになります。
高給の人材採用は、業績に影響が出ることになるだけではありません。高給で採用した人材が「失敗したあ!」ってなれば、”後の祭り”です。
そこで、優秀な人材採用のためだけではなく、人材採用による業績とリスクを低減させるために、ストックオプションを活用する事例もあります。
その場合は、次のような議論が発生します。
ストックオプションの導入を複数回実施する
優秀な人材を採用する度にストックオプションの導入決議を行う例があります。
これは「君のために、会社はやっているんだよ」というメッセージを伝える効果を狙っています。
バランスが重要になる
優秀な人材を採用するために多くのストックオプションを割当てするケースは多く存在します。
しかし、社内から反発を招くというケースがあります。
つまり、割当数にバランスを欠いてしまうと、長期間、従事している従業員から反発を招く可能性が出てくるということです。
さらにIPO直前に入社した人にはストックオプションを割当てた一方、IPO直後に割り当てなかった場合、バランスを欠くことになる懸念も出てくるという議論が出てきます。
株主構成の是正のために
特にベンチャーキャピタルの出資率が高い会社、役員の株式保有比率が低い会社は、株主構成の是正を目的としてストックオプションを活用するケースがあります。
そのような場合、主に次のような論点が出てきます。
税制非適格ストックオプションや有償ストックオプションを候補に入れる
株主構成の是正は、基本的に上場前に行うことを求められるケースがほとんどになります。
つまり、株主構成の是正を目的としたストックオプションは、IPO前に権利行使を行うことを強く求められます。
その対応が可能なストックオプションを採用候補に入れることが議論になります。
税制適格ストックオプション以外を導入する場合、税制適格ストックオプションよりも、費用が増大したり、税制面が複雑になる懸念が生じることに留意が必要です。
(なお、ブログの中の人は、有償ストックオプションに対し、疑念を持っています)
上場審査で問われる可能性が高い
ベンチャーキャピタルの保有比率が高い会社以外で、株主構成の是正を目的としたストックオプションを発行した場合、その妥当性について、ほぼ間違いなく上場審査で問われると考えるべきです。
ストックオプションは、経営者の資質を現してしまう事例があります。
まとめ
ストックオプションを導入する際の目的に応じて、どのような論点が発生し、どのような対応例が存在するのかということを紹介させていただきました。
1回のストックオプションで全ての目的を補完することは困難だと思います。
「このストックオプションの導入目的は、これだ」ということをしっかり整理して、ストックオプションの制度設計をすることをおススメします。