ツイッターアカウントに東プラ社長(崖っぷち)さんという方がいらっしゃいました(このブログ作成後、残念ながら、アカウントを削除されました)。
プロフィールを見ますと、東証プライム上場企業のオーナー経営者です(どこの会社であるかは、伏せさせていただきます)。
その東プラ社長(崖っぷち)さんは、次のようなツイートをされていらっしゃいます。
IPO準備。大抵はこの流れ。まず社長が社内の管理系の「IPO準備の未経験者」に頼む。社長は営業または技術系の出身者が多い。管理系は素人。「頼んだらできる」と信じている。命じられた方は頑張る…頑張るが…進まない。辛くなる。辞める…または社長にプロが欲しいと伝える…ここまでが第一段階 笑
続いて第二段階。社長はどうやら普段の財務経理総務のお仕事と…IPOとは全く別の種類の仕事であることに気がつく。IPO準備のプロを探す。…給与水準がまるで合わない。それまでの人材の2~3倍はかかる。ショックを受けるが…やると決めたので募集をする…それなりの条件なので沢山の応募者が来る 笑
素晴らしい経歴のプロが面接に来る。…来たように見えるが…本当のプロは極一部…かなりの割合でまがいものが来る。面接官たるこちらは未経験者なので…真贋の見極めがつかない!…そして後は運…最初にあたりを引く会社もある…雇っては辞め…雇っては辞め…で騙され続ける会社もいる 笑
(出所:東プラ社長(崖っぷち)さんのツイートより)
要するに東プラ社長(崖っぷち)さんは、上場準備を始めると、社内人事が混乱してしまうリスクがあるぞと仰っています。
「従業員の士気向上」を上場メリットとしてあげている本やサイトがよくありますが、東プラ社長(崖っぷち)さんが仰っていることは、その逆のようなことに思えます。
しかし、ブログの中の人は、東プラ社長(崖っぷち)さんが仰ることが間違いではないと考えておりまして、実際そのような場面を何度か見てきております。
ここでは、ブログの中の人が勤めていた証券会社時代の担当先が上場準備を始めるにあたって、社内人事が混乱してしまった経験談を紹介させていただくとともに、上場準備を始める会社の経営者は、どのような配慮が必要になるのかを紹介させていただきます。
なお、本ブログ記事は、あくまでもブログの中の人の経験だけの話であり、上場準備会社全般の話ではない事をご理解ください。
また、ブログの中の人の古い記憶範囲内の話であり、正確性を保証できません。
上場準備中に起こった管理部門従業員の人事の問題経験談
プロパー社員が反乱して退職した事例
東京のソフトウェアの会社です。Aさんは、経営企画業務を一人でやり繰りする第1号プロパー社員でした。
Aさんは、独りで手作り管理会計を作ったり、規程整備、フローチャート作成。。。
上場準備作業をほぼ独りで行っていました。
彼は上場準備作業を通じてキャリア形成しようとする意識が強い人であり、仕事に積極的な方でした。
まだ若かったこともあり、ハードワークを耐えていました。
しかし彼は「Ⅰの部」という言葉さえ、初めて知るような人物であり、あらゆる全ての仕事が初体験でした。
彼が私に提出したフローチャートは、決裁権限規程の内容といくつも相違があるような状態であり、彼は、私の千本ノックを連日受けていた状態でした。
そんな中、社長は、”IPO経験者”のCFO候補者Bさんを採用しました。
Bさんが入社して2カ月後、Bさんは私に次のような相談をしました。
「Aさんは、社内情報を私に隠蔽するので、証券さんに話せる事が少ないんです」との相談です。
そこで後日、私はAさんに尋ねると「Bさんは、能力が無い」「Bさんの実務能力って大したことないのに、給料が俺と全然違う」「社長は、Bさん採用前に俺と相談してくれなかった」などの不平・不満・悪口が連発でした。
総じて、Aさんは自分なりに頑張っていたにも関わらず、Bさんの採用により、社内におけるプレゼンスが低下する事に対する不安、さらに経営陣が自分自身を信じてもらえなくなったのではという疑心暗鬼になってしまった感じでした。
雰囲気は最悪です。
Aさんは退職しました。なおAさんは退職時、サーバー内に保存されたⅠの部、またフローチャート等のⅡの部作成のためのエビデンス資料を壊して退職しました。
何度もデータを書き込み削除を繰り返し、その都度データ更新したり、また何度もファイルの分割・結合を繰り返す等をしていたため、データ復旧は困難と聞いた記憶があります。
結局、入社半年足らずでBさんも退職しました。Aさんの退職理由がBさんのマネジメント能力不足だと社長から言われたためのようです。
Bさんが退職した事をきっかけにして上場準備作業は中断しました。その会社は今も上場出来ていません。
新任CFO候補者が部下からイジメにあって退職した事例
私の担当先C社は、BIG4の監査法人出身者の公認会計士Dさんを採用し、Dさんは即時、管理部門を管掌する取締役に就任しました。
就任2カ月~3カ月後にDさんは、私に対して次のような相談をしてきました。
「社内資料の居場所を教えてくれない」「ファイルのパスワードを無断変更され、見れないファイルがある」との事です。
そしてDさんは、私に「社内で居場所が無いんですよ。。。」と寂しそうに笑います。
Dさんは、そのように私に社内で孤立しているような事を訴えた一方、取締役として招聘されたプライドから私に対して「社長には決して言わないでくれ」と懇願されました。
やがてDさんは、半年も経たずに退職しました。
社長に聞くと、「CFOとしては能力不足だった」「部下から総スカンだった」などなど
Dさんが正しいのか、社長が正しいのかわかりませんが、Dさんの採用は、C社にとって結果的に混乱しか生まなかったのは、確かです。
C社は、今も上場していません。
CFOの地位が低く退職した事例
私の担当先E社は、確か社員200人前後の会社です。
そこでCFOのFさんから、次のようなことを言われました。
「私、CFOと言ったって、給料は社内で50位に入っていないんですよ。ストックオプションだって、少ないでしょ?私だけではなく、管理部門従業員に対する評価は、全社比較で評点が低い所からスタートするので、給料が総じて低いんです。」「上場達成すれば、サッサと辞めますよ」
また、特に他役員に対する悪口が連発でした。
はっきり言いましてFさんは、明らかにモチベーションが低く、役員就任半年もなく退職しました。
ちなみにその会社のCFOは、Fさん以前から、1年で何人も変わるという状態でした。
業務改善は遅々として進まず、監査法人も管理部門の脆弱性について厳しい評価をしていました。
社長が管理部門の人材の価値を低く考えていた事が原因であることは間違いなさそうです。
その他にも経験がありますが、生々しい事例も存在しますので、以上で経験談は終了させていただきます。
上場準備中に起こった技術部門従業員の人事の問題経験談
上場準備を開始するにあたり、管理部門の強化だけではなく、企業価値向上を意識することは自然です。
G社は、2つの事業がある会社でした。
主たる事業は、労働集約型的な事業、かつ下請け的な事業(以下、「事業A」といいます)でした。
そして、もう片方の事業は、法人向けのパッケージソフトウェア(以下、「事業B」といいます)でした。
第三者から見れば、事業Aよりも事業Bの方が価値として、魅力的に感じることは明らかでした。
A事業とB事業の両方を抱えたままで上場を目指すと、A事業が主たる事業として捉えられる可能性があり、もしそのような評価になってしまうと、形式要件に抵触してしまう可能性が高くなるような業績水準でした。
そこで、早期に上場するためには事業Aを売却し、その売却資金を事業Bの開発資金に振り向けた上で、事業Bに特化した会社として上場を目指す方向で進めるべきであるという案が以前から出ていました。
オーナー社長もその案を具体的に進めていくという決断をしました。
しかし、この情報がどこから漏れたか知りませんが、会社経営を支えていたと自負する事業Aの責任者達は反論し、数多くの社員を引き連れて突然退職してしまいました。
会社経営を支えてきた事業でありながら、上場を目指すというきっかけで売却されるというのは納得できないという理由からです。
G社の社内は相当混乱したと思われます。結果的に、上場準備作業も終了し、今も上場出来ていません。
G社のホームページを見ると、企業規模がかなり縮小してしまっていまい、事業Aではなく、事業Bの方がありません。
G社にとりまして、結果的に上場準備が経営悪化を招いてしまった事は確かなようです。
まとめ
上場準備を始めるにあたって、社内人事が混乱してしまった会社の事例を紹介させていただきました。
改めて申し上げますが、これらはあくまでもブログの中の人の個人的な経験にすぎません。
しかし上場準備を開始すると、社内人事が混乱するリスクが存在し、そのリスクは最悪のケースとして、会社経営存続を揺るがす可能性があることをご理解頂ければ幸いです。
ちなみにブログの中の人は、↓のような記事を書いております。
この記事では、上場準備を開始するにあたって、
- 反社排除に向けた取り組みを行う
- 反社との関係に問題無いと判断した後、「株式新規上場(IPO)のための事前準備ガイドブック」を読む
- 「株式新規上場(IPO)のための事前準備ガイドブック」の9ページ以降を対策し、ショートレビューの段階で監査法人担当者から評価される体制を作る
- ショートレビューを行う
としています。
ショートレビューの次のプロセスは、「上場準備を進めることによって、(一時的に・短期的に)能力・実績・企業貢献度等と給与・報酬の間に歪みが発生する可能性があることを役職員に理解させる」であるとブログの中の人は考えています。
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