上場準備を初めて携わると、類似用語が数多く出てきます。

例えば、↓のような用語です。

上場準備会社担当者が知るべき「支配株主」とは

「支配株主」「特別支配株主」・・・訳がわかりませんね。

類似用語の中には、役員に関連する用語も存在します。

ここでは「特別取締役」を紹介します。

なお、「特別監査役」という制度は、存在しません。

なお、本ブログは、IPOに関する東証グロース、スタンダード、プライム市場を目標とする会社関係者向けのブログである事から、その関係者向けだけの説明になります。

記事の内容は、ブログの中の人が旬刊商事法務の記事を確認しながら書いておりますが、内容を保証するものではなく、ご不安な方は、直接、条文をお読みくださいますようお願いします。

「特別取締役」とは

会社法は、取締役会で決議しなければいけない内容を定めています。

その中には、「重要な財産の譲受け」と「多額の借財」についても定められています(会社法第362条第4項第1号及び第2号又は第399条の13第4項第1号及び第2号)。

そこで特別取締役を選任している会社の場合は、特別取締役だけが取締役会を開催して、決議ができるという制度(会社法第373条)です。

特別取締役のメリットと導入企業事例

「重要な財産の譲受け」や「多額の借財」に関しては、金融機関や交渉相手の事情もあり、緊急に取締役会決議をしなければいけない場合が出てくると想定されます。

しかし、特に大手企業の取締役会では、本業で忙しい社外取締役、非居住者、海外出張中の人等もいることがあり、スケジュールがどうしても合わない場面が発生するかもしれません。

特別取締役の制度を導入している場合、そのようなリスクを低減できることが期待されます。

つまり、「重要な財産の譲受け」や「多額の借財」に限り、比較的、集合しやすい取締役だけで取締役会決議ができるということになります。

なお、特別取締役だけでの取締役会には、監査役の出席が必要となり、さらにその決議内容を特別取締役以外の取締役に対し、遅滞なく報告する必要があります。

本ブログ記事を作成した日(2022年5月17日)段階で採用している会社をEDINETで文字検索してみると、特別取締役を採用している会社は、三井不動産株式会社、株式会社ドウシシャ、三菱商事株式会社、ソフトバンクグループ株式会社等があります。

また、EDINETで検索可能が範囲では、上場前に特別取締役を導入して上場達成した事例は存在しませんでした。

特別取締役制度の導入要件

特別取締役制度は、どの会社でも採用できるのではなく、一定の要件があります。

以下のような要件です。

  • 取締役の数が6人以上であること。
  • 取締役のうち1人以上が社外取締役であること。
  • 特別取締役は、3人以上で構成されること。

そもそも東証へ上場するためには、どの市場を選択するにせよ、社外取締役を確保しなければいけないため、取締役が6人以上就任している上場会社であれば、どの会社でも特別取締役制度を採用することが可能ということになります。

特別取締役制度の導入手続きと開示

特別取締役は、取締役会決議が必要になります。

上場前に特別取締役制度を採用すると、Ⅰの部等の「コーポレート・ガバナンスの概要」という欄に記載することになります。

上場後は、有価証券報告書に記載する必要があります。

また、登記も行う必要があります。

まとめ

特別取締役について、紹介させていただきました。

上場準備を初めて携わると、類似用語が何度も出てきます。

IPOAtoZでは、初めて上場準備を担当した方が混乱しそうな用語を今後もまとめていく予定です。

用語は、「IPO用語」というカテゴリーでまとめております。

上場準備に携わる方々にとりまして、広くご活用いただければ幸甚です。

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