株主総会の運用の幅が広がります。

現段階では、株主総会資料は、株主に対し、書面で提供することが会社法での原則になっています。会社法上は、株主総会資料を株主総会の日の2週間前までとなっていますが、株主総会資料の印刷期間を加味すると、実務的には株主総会の1か月以上前に株主総会の付議議案が内定し、取締役会はシャンシャンっていう感じでスルーしている会社(つまり取締役会が形骸化している会社)が存在しているのが現実と思われます。また2週間前に書面を株主へ郵送しても、株主の元へ書面が到着するのは、その後になるため、株主が株主総会資料の内容を検討する時間が短いという議論がありました。

それがインターネットを利用する方法によって株主総会資料を提供できるようになれば、印刷期間の大幅短縮とコストダウンが図れるため、会社と株主の両方にメリットが生まれます。

そこで以下のような改正が行われるようです。

表 株主総会の運用に関する改正内容

現行 今後
株主総会資料のインターネット利用 株主の個別の承諾が必要(会社法299条2項・3項、301条1項・2項等) 定款の定めに基づき、取締役が、株主総会資料の内容である情報を自社のHP等のウェブサイトに掲載し、株主に対して当該ウェブサイトのアドレス等を株主総会招集通知に記載して通知した場合は、株主の個別の承諾が必要なくなる(会社法325条の2~7等)

株主総会資料をインターネットで開示しようとする場合(「株主総会資料の電子提供制度」といいます)、以下のような留意点等があります。

表 株主総会資料の電子提供制度を行う場合の主な留意点等

項目 内容 関連会社法条文
定款内容 電子提供措置をとる旨を定めるだけでOK(ウェブサイトのアドレスまで記載する必要なし) 325条の2
パスワード パスワード設定は自由(株主が情報提供を受ける環境を設ければOK) 325条の2
掲載書類 議決権行使書面、株主総会参考書類、計算書類や事業報告等、インターネットで提供しなければいけない資料が決まっている 325条の3第1項
情報提供期間 株主総会の日の3週間前の日または株主総会の招集の通知を発した日のいずれか早い日から、株主総会の日後3か月を経過する日まで 325条の3第1項
株主総会招集通知 公開会社、非公開会社を問わず、株主総会招集通知をインターネットで提供する場合は、株主総会の日の2週間前までが発出の期限 325条の4第1項
書面交付請求措置 株主総会資料の電子提供制度を導入したとしても、株主は書面で株主総会資料の提供を求めることができる 325条の5第1項
上場会社に義務 上場会社は、電子提供措置をとる旨を定款で定めなければならない 整備法による改正後の振替法159条の2第1項
登記 電子提供措置をとる旨を定款に定めた場合、登記しなければならない 911条3項12号の2

プロネクサスと宝印刷の経営にとっては、非常に厳しい法律です。

ポイント

IPOを目指す会社にとっては、主に以下のようなポイントがあると考えられます。

株主総会資料の電子提供制度に関するポイント
  1. 上場承認を受ける直前または直後までに定款変更の手続きが必要になる。
  2. 上場後のコスト(株主総会資料印刷コスト)は、会社法の改正により低くなる。
  3. 株主総会資料の印刷部数を抑えることはできるが、一定数の準備は必要になる。