会社法第390条第3項では、「監査役会は、監査役の中から常勤の監査役を選定しなければならない。」となっています。

つまりIPOを目指して監査役会を設置しようとする会社は、常勤監査役を選定する必要があるということになります。

上場を目指す会社は原則、直前々期末までに常勤監査役としての業務を開始しなければいけません。

常勤監査役を招聘する際、常勤監査役は毎日出勤出来る人を招聘しなければいけないとお考えの方がいらっしゃると思います。

そこで常勤監査役の勤務体系と兼務について調べてみました。

上場を目指すスタートアップの経営者が常勤監査役を招聘する際の参考になれば幸甚です。

常勤監査役の勤務時間

常勤監査役の勤務体系は、無論、常勤性が必要になります。

常勤監査役の出勤が、週3日以下程度であれば、常勤性を満たさないと判断されると思われます。

最近、コロナの影響でリモートワークの会社が増加しました。

ブログの中の人が把握している情報では、リモートワークが中心となっている常勤監査役は、リモートワークとしての業務実態が一般社員と比較して、リモートワーク比率が高い場合、常勤性を疑われるようです。

つまり常勤性とは、一般社員と比較してどうなのかと問われることが多く、ブログの中の人は担当会社の常勤役員に対して、タイムカードで勤務時間を管理するように指導していました。

なお、社会保険の加入要件(所定労働時間及び所定労働日数の4分の3以上)を準拠した考えが一部であるようです。

また常勤監査役の中には、他社の役職員と兼務しているケースがあります。そのようなケースでも常勤性に疑念を持たれることになります。

東証の上場審査では↓のようなことをクリアし、業務の執行状況をキチンと説明出来れば、常勤監査役が他の会社等の役職員等を兼職出来ることになっています。

申請会社の役員が他の会社等の役職員等と兼職関係にある場合については、まず、取締役会への出席状況などから、当該役員がその求められる監督機能を十分発揮しているかどうかを確認するとともに、常勤役員については、その業務の執行の機動性が損なわれていないかどうかを確認します。

(出所:株式会社東京証券取引所 新規上場ガイドブックより)

したがいまして、現段階で東証は、他社の役職員を兼務している常勤役員に対しては、上場申請企業のために時間を使っているかどうかを確認することになっています。

なおコーポレートガバナンスコードでは、補充原則4-11②において、「取締役・監査役が他の上場会社の役員を兼任する場合には、その数は合理的な範囲にとどめるべき」と明記されています。

監査役の兼務禁止例

↑で説明させていただきましたが、監査役は、常勤監査役も非常勤監査役も他の会社の役職員を兼務することが禁止されていません。

しかしどの兼務でも良いのではなく、兼務の内容によっては、法律面で禁止されています。

また法律面で禁止されていませんが、IPO審査等でネガティブな判断をされるケースもあります。

会社法における監査役の兼務禁止

会社法によると、監査役は、次のような兼務が認められていません。

  • その会社の取締役や執行役、会計参与
  • その会社の使用人
  • その会社の会計参与や会計監査人
  • その会社の子会社の取締役や執行役、会計参与
  • その会社の子会社の使用人
  • その会社の子会社の会計参与や会計監査人
  • その会社の親会社の会計参与や会計監査人

これらの兼務が禁止される主な理由は、自己監査の防止になります。

IPOの審査で問題視される監査役の兼務禁止例

監査役は表向き、会社法や各業法が定める欠格事由に該当しない場合、また上場申請企業の監査業務時間が十分であることを説明出来れば兼務が認められることになっています。

しかし監査役が次のような兼務をしている人である場合、表立って禁止されていませんが、IPOの審査等で間違いなくネガティブに捉えられます。

コンサルタントや顧問等との兼務

監査役が、監査役を務める会社の法務や税務等の顧問やコンサルティングサービスを行うことは、利益相反要因になると考えられています。

競合、同業他社の役職員等との兼務

競業避止義務や善管注意義務、利益相反要因などの観点から、競合や同業他社の役職員等との兼務は、ネガティブな判断をされます。

主要取引先や政策保有株式銘柄企業等の役職員等との兼務

独立性の観点から、主要取引先や政策保有株式銘柄企業等の役職員等との兼務は、ネガティブな判断をされます。

事例等は、多くありますが、親会社や関係会社等の役職員等との兼務もネガティブな判断をされます。

常勤監査役の兼務事例

常勤監査役の中には、他社の役職員等との兼務をしている事例は、少なからず存在します。

上場を達成した会社の中には、3社も他の会社等の役職員等との兼務をしている常勤監査役の事例がありました。

↓で紹介しています。

4つの兼任がある常勤監査役事例【IPO事例-35】

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