特定子会社は、連結財務諸表における重要な位置づけにある子会社のことをいいます。

どのような子会社が特定子会社になるのか、また特定子会社があれば、どのような義務などが必要になるのかを簡単に説明させていただきます。

特定子会社とは

特定子会社とは「企業内容等の開示に関する内閣府令第19条第10項」で定義が定められておりまして、その内容は次のようになります。

「企業内容等の開示に関する内閣府令第19条第10項」の要約
  1. 親会社(上場申請会社)に対する子会社の売上高の総額が、上場申請企業の仕入高の総額の10%以上を占める子会社
  2. 親会社(上場申請会社)に対する子会社の仕入高の総額が、上場申請企業の売上高の総額の10%以上を占める子会社
  3. 親会社(上場申請会社)の純資産額の30%以上を持つ子会社
  4. 資本金又は出資額が親会社(上場申請会社)の資本金の10%以上に相当する子会社

つまり、特定子会社は、子会社の中で業績面またはバランスシート面でグループ内で重要な位置づけにある子会社になります。

特定子会社の開示

特定子会社を保有する上場申請会社は、上場時に提出する「Ⅰの部」や「目論見書」、「有価証券届出書」の「関係会社の状況」という項目において、特定子会社について開示する必要があります(企業内容等の開示に関する内閣府令 第2号4様式より)。

2019年以降、この記事記載開始までに東証へIPOを達成した企業232社のうち、99社が特定子会社を保有していました(IPO AtoZ調べ)。

さらに上場後に提出する「有価証券報告書」にも「関係会社の状況」という項目において、特定子会社について開示する必要があります。

特定子会社の異動

上場後、特定子会社が異動した際にも開示が必要になります。

  1. 臨時報告書
    • 特定子会社が異動する際、つまり特定子会社であつた会社が子会社でなくなること、又は特定子会社でなかった会社が特定子会社になることが起きた場合、臨時報告書において、「名称」「住所」「代表者の氏名」「資本金又は出資の額」「事業の内容」などを開示する必要があります(「企業内容等の開示に関する内閣府令 第19条2項3号」より)。
  2. 決算短信
    • 決算短信でも、連結範囲の変更を伴う特定子会社の異動の有無を開示することになります(東京証券取引所「決算短信・四半期決算短信作成要領等」より)。

株式会社フェローテックホールディングスが開示漏れをしていたようです。こちらになります。

親会社を含めてグループ企業で、増資や減資を行った際、注意が必要ですね。

関連

特定子会社の株式等に係る控除額に関する計算書

IPOとは直接関係ありませんが、特定子会社という用語は、開示だけではなく、税法(地方税法第72条の21)にも存在します。

この法律における特定子会社とは、持株比率等が50%超の子会社などが該当することになります。

該当する子会社を持つ会社は「特定子会社の株式等に係る控除額に関する計算書」を所轄の都道府県税の事務所に提出することになります(新潟県のサイトを紹介します。こちらになります)。

特定子会社と連結子会社の違い

連結子会社とは、支配をしているかどうかが判断基準になります。

特定子会社とは、連結子会社の中で大きな規模の子会社というイメージになります。

つまり企業グループ内の子会社の中でも、重要な位置づけにある子会社になります。

ちなみに、2021年3月期において、株式会社日立製作所には、850社余りの連結子会社がありますが、その内、特定子会社は、7社のみになります。

まとめ

特定子会社は、連結財務諸表において、大きな影響を与える会社であることから、上場審査では、グループ企業全体に対する審査ならびに調査が行われますが、特定子会社とそれ以外の子会社では、全く審査内容の質と量が格段に異なるため、注意が必要です。

なお、IPO準備とは全く関係ありませんが、「特定子会社」に近い用語として「特例子会社」という用語があります。「特例子会社」とは、障がい者雇用の定着促進のために設立された障がい者雇用に特化・配慮した子会社をいいます。

IPO準備を行うにあたっては、用語の定義をひとつひとつ確認する必要があります。気をつけましょう。

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