ホールディングスを設立する組織再編を行った場合、たまに議論になることが「拡大従業員持株会」です。

「拡大従業員持株会」とは「従業員持株会」と若干異なるタイプの持株会です。

ここでは「拡大従業員持株会」について説明させていただきます。

拡大従業員持株会とは

拡大持株会の定義は、日本証券業協会「持株制度に関するガイドライン」で定められています。

拡大従業員持株会とは

非上場会社の従業員が、当該非上場会社と密接な関係を有する上場会社の株式の取得を目的として運営する組織で、従業員持株会以外のものをいう

つまり、「拡大従業員持株会」とは、「従業員持株会」と異なるということです。

ちょっと、ややこしいですね。

ちなみに従業員持株会については、こちらで説明させていただいております。ご参考ください。

従業員持株会【IPO用語】

従業員持株会と拡大従業員持株会の違い

従業員持株会と拡大従業員持株会は、主に以下のような点で違いがあります。

表 従業員持株会と拡大従業員持株会の違い

従業員持株会 拡大従業員持株会
実施会社 上場会社でも非上場会社でも設立可 非上場会社のみ
会員の範囲 自社従業員、会社法第2条第3号に規定する子会社従業員 自社従業員のみ
持株会の数 社内で複数の従業員持株会を設立できない 社内で複数の拡大従業員持株会を設立できる
取得対象株式
  • 実施会社の株式である。
  • 上場会社の株式でも、非上場会社の株式でもよい。
  • 実施会社の株式ではない。
  • 上場会社の株式である。
  • 次の3点のいずれかに該当する株式である。
    1. 取得対象株式の発行会社が実施会社の総株主の議決権の 25%以上を直接所有。
    2. 実施会社の売上・仕入のいずれかに占める取得対象株式の発行会社のシェアが、直近3事業年度において、継続して 50%以上。
    3. 取得対象株式の発行会社の役員が実施会社の役員を兼務、実施会社の設立の沿革、実施会社の事業内容、取得対象株式の発行会社の事業内容との関係、社員の交流関係等を考慮するものとする。

従業員持株会とは、自社株式を取得対象株式にして、自社の従業員が会員資格にある組合です。

一方、拡大従業員持株会とは、子会社が親会社からの運営協力を得ずに、親会社株式を取得対象株式にして、子会社の従業員が会員資格にある組合になります。

拡大従業員持株会を設立する会社例

従業員持株会には、持株比率が50%超の子会社の従業員が会員として認められますが、会社グループの中には、それに該当しないグループ会社が存在するケースもあります。

拡大従業員持株会とは、そのような会社や従業員のために設けられている従業員持株会です。

拡大従業員持株会を設立するケースは、以下のような場合があります。

拡大持株会を設立する会社例
  • 連結子会社でありながら、持株比率が50%以下であるため、従業員持株会への会員資格が無い
  • 上場会社の親会社が持株会社(ホールディングス)を設立したために、子会社が当該持株会社の孫会社になってしまい、従業員持株会への資格が失われてしまった
  • 上場会社における給与支払日と異なる、または子会社が多数存在する等の理由から、持株会の事務担当者の負担が大きい
  • 親会社と子会社の持株会の株式事務委託証券会社が異なる等の理由により、統合が難しい

事例として、次の2つを紹介します。

買収され、上場会社の孫会社になってしまうようなケース

ソニーフィナンシャルホールディングス株式会社を事例として、取り上げます。

ソニーフィナンシャルホールディングス株式会社は上場会社でしたが、ソニー株式会社に買収され、非上場会社になることが決定しました。

実は、ソニー株式会社は、上場会社ではなく、上場会社であるソニーグループ株式会社の子会社です。

つまりソニーフィナンシャルホールディングス株式会社は、上場会社であるソニーグループ株式会社の孫会社になります。

こうなってしまえば、ソニー株式会社の社員はソニーグループの従業員持株会に入会できる可能性はありますが、ソニーフィナンシャルホールディングス株式会社の社員はソニーグループの従業員持株会の入会資格がなくなってしまいます。不公平感満載ですよね。

ソニーフィナンシャルホールディングス株式会社の社員に対する救済手段として、拡大従業員持株会が存在するということになります。

つまり、ソニーフィナンシャルホールディングス株式会社の従業員持株会は、ソニー株式会社に買収されたことにより、従業員持株会として存続するのではなく、拡大従業員持株会として存続することになる

ここで注意しなければいけない点があります。

もしソニーフィナンシャルホールディングス株式会社の子会社従業員がソニーフィナンシャルホールディングス株式会社の従業員持株会に入会していた場合です。

従業員持株会の規則としては子会社の従業員も会員へ加えることは可能ですが、拡大従業員持株会の規則としては子会社の従業員を会員に加えることは出来ないという点です。

統合の手続きが面倒なケース

昭和電工株式会社と日立化成株式会社の関係をイメージします。

昭和電工株式会社は、日立化成株式会社を買収し、子会社化しました。日立化成は数千人の社員数を抱える会社であり、従業員持株会へ入会している社員数も多いと思われます。

このような大規模な買収が行われた場合、従業員持株会の統合を行おうとすると、その手続きにマンパワーが要します。

無理に統合せず、別々に持株会を運営するように選択した場合、日立化成株式会社(現 昭和電工マテリアルズ株式会社)の社員のための持株会は、拡大従業員持株会になります。

IPOAtoZのサービス

従業員持株会の設立支援は、一部の税理士事務所やコンサルが行っていますが、重要なのは運営です。

税理士事務所やコンサルに依頼するのではなく、証券会社に依頼しましょう。

IPOAtoZでは、無料でセカンドオピニオンのサービスをしています。

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