持株会には、いくつか種類があります。

上場を目指す会社は、上場準備段階において、従業員持株会を設立する例が多数ありますが、会員資格が従業員に限られ、役員は入会資格がありません。

そこで、上場準備段階において、役員持株会を設立しようとする会社があります。

ここでは、役員持株会について説明させていただきます。

役員持株会とは

役員持株会の定義は、日本証券業協会「持株制度に関するガイドライン」にあります。

役員持株会とは

会社の役員(当該会社の子会社の役員を含む。以下同じ。)が、当該会社の株式の取得を目的として運営する組織をいう。

役員持株会の会員は、役員に限られており、上場会社では高い割合で組成されています。

執行役員は、一般的には、委任契約での執行役員は、役員持株会の会員として、雇用契約での執行役員は従業員持株会の会員と認識されているようです。

また使用人兼務役員は、従業員持株会会員として不適当であり、役員持株会の会員として認識されているようです。

上場会社の中には、役員報酬制度の一環として、役員に対し、役員報酬の一定割合を役員持株会へ拠出させている会社が存在します。

例えば、三井物産株式会社では、取締役に対して月額報酬の少なくとも10%以上を役員持株会へ拠出することを内規で定めています。

従業員持株会と役員持株会の違い

次の表では、従業員持株会と役員持株会の違いを説明します。

表 従業員持株会と役員持株会の違い

従業員持株会 役員持株会
会員 会社または子会社の従業員 会社または子会社の取締役・会計参与・監査役・執行役又はこれらの者と同等以上の有力者
複数加入 原則不可 他の役員持株会への入会が可能
入会時期 随時募集可能 年1回のみ募集可能。募集期間以外に入会可能な者は、役員就任直後の役員のみ。
拠出金変更 随時設定可能 年1回のみ設定可能。
奨励金 支給可能 支給不可
持分株式の報告※ 不要 必要

※「持分株式の報告」とは、役員持株会での持分株式数を加算して、各役員の保有株式数を有価証券報告書に記載する必要があるための作業になります。

有価証券報告書とはこちらで説明しています。ご参考ください。

有価証券報告書

役員持株会のメリット

次のようなメリットがあると言われます。

役員持株会のメリット
  1. インサイダー取引に該当せずに自社株式を購入できる
  2. ドルコスト平均法という手法を使ったリスクを抑えた投資方法で株式を購入できる

昨今、役員は株式報酬を含め、個人でリスクをとり、株主と同じベクトルで働くことを勧められています。

役員持株会の存在は、株主と同じ境遇にあることを株主に対してアピールすることができる材料のひとつです。

役員持株会のデメリット

役員持株会には、いくつかのデメリットまたは留意点が存在します。

奨励金の支給が出来ない

奨励金を負担出来ないということは、原則、役員持株会の運用経費は、役員持株会会員個人の負担になります。

  • 証券会社に対する役員持株会事務手数料
  • 金融機関への振込手数料など

役員持株会の組成のための資金(例えば、コンサルフィーなど)を会社負担で行うことに対しても、ネガティブな意見もあります。

したがいまして、証券会社が行っているサービスのひとつにある株式積立(株式累積投資)と比べると、会員にとって投資コスト面で割高になるということがデメリットになります。

会員数が少ない

従業員持株会は、多人数の従業員によって組成されますが、役員持株会の会員数は、大企業を除き、少人数になります。

つまりそれは、拠出金額が少額になるということになります。

拠出金額が少ない持株会は、主に次のようなデメリット・リスクが発生します。

拠出金額が少額の持株会のデメリット・リスク
  1. 毎月、株式を購入できない可能性がある(上場会社の役員持株会の場合)
    • 拠出金額が少額であれば、拠出金額が自社株式の最低購入金額を下回る可能性が高くなります。その場合、拠出金の残高が自社株式の最低購入金額を上回るときまで購入出来ません。役員持株会のメリットのひとつは、ドルコスト平均法で株式購入できることですが、毎月、株式を購入出来ないような持株会には、ドルコスト平均法の効果が低くなる可能性があります
  2. 一人あたりの最低拠出金額を多く設定せざるを得なくなる
    • 毎月、持株会が自社株式の買付が出来ないような場合、持株会としての意味がありません。したがいまして、毎月の最低拠出金額を高くしなければいけなくなります。持株会とは、少額でも投資可能ということがメリットにありますが、そのメリットが無くなってしまいます。
  3. 破綻リスクが高くなる(非上場会社の役員持株会の場合)
    • 持株会の会員はあくまでも自社の役員に限定されます。したがいまして、役員から退任した方は、役員持株会の会員資格を失い、退会することになります。退会者の中に大口の会員がいた場合、持株会の拠出金残高は一気に枯渇することになります。

    役員持株会とインサイダー

    役員は、インサイダー情報を保有しているケースが多くあります。インサイダー情報を保有している場合、次のことが出来ません。

    インサイダー情報を保有している場合、役員持株会で出来ないこと
    • 役員持株会への入会
    • 拠出金額の変更

    役員は、1年の中でインサイダー情報を保有している期間が長いことから、入会するタイミングに気をつける必要が出てきます。

    役員持株会の入会募集は、1年に1度しかありません。もし入会募集時にインサイダー情報を保有している場合は、入会が延期することになります。

    非上場会社の役員持株会

    上場前に役員持株会を設立して、上場を達成している会社の事例は存在します。

    しかし、上場前の役員持株会の存在を上場審査において、ネガティブに捉えられるケースがあります。

    その理由のひとつに、IPO時の役員の行動と役員持株会の行動が相反するためと言われています。

    • IPO時の役員の行動:自身が保有する自社株式を売り出す
    • 役員持株会の行動:役員が自社株式を買う

    これって完全に相反してますよね。

    つまり、IPO時に株式を売出した役員が、その売出によって得た株式売却益を元手に役員持株会を通じて株式を買い戻すということになります。これは、IPO時に株式を売出した役員は、株式を売り出したことにより支配権が低下しますが、上場後の株価が安くなればなるほど、経済的に支配権を取り戻すことが可能になるという理屈が成り立ってしまうというわけです。

    上場申請会社の株主の中に役員持株会がある場合、その役員持株会が株式を買い戻すための団体として捉えられてしまうと、ネガティブに判断されます。

    こちらで説明しています。ご参考ください。

    IPO直前に役員持株会を解散した事例【IPO事例】

    まとめ

    非上場段階で従業員持株会を設立することは、会員にとって多くのメリットがありますが、役員持株会の場合は会員のメリットがあまりありません。

    上場前に役員持株会を組成する場合、上場審査時にその目的について合理的な説明をするための準備が必要になります。