上場準備において、「企業グループ」という用語があります。

企業グループとは、一般的には、住友グループや三菱グループなどの旧財閥系のグループや、日立グループやNTTグループなどの大企業グループを想像すると思います。

このような企業グループの定義はまちまちであり、法的拘束力はありません。

ある企業が日立グループであるかどうかの判断は、日立製作所が独自のルールで決定し、「この会社は日立グループの会社だ」と判断すれば、日立グループ入りできるということになります。

しかし上場準備においては、企業グループの定義が異なります。

ここでは「企業グループ」について説明させていただきます。

企業グループとは、会社+子会社+関連会社

上場準備に関する企業グループとは、東証が定めている「有価証券上場規程」という規程にある用語を使うことになります。

上場審査は、上場申請した会社だけではなく、企業グループが審査対象になります。

有価証券上場規程(東京証券取引所)第207条

(上場審査)
本則市場への新規上場申請が行われた株券等の上場審査は、新規上場申請者及びその企業グループに関する次の各号に掲げる事項について行うものとする。(後略)

つまり上場申請会社が抜群な評価を得たとしても、企業グループ内にある末端企業の評価がダメダメダ~メであったならば、上場審査をクリアできない可能性が出てくるということになります。

そこで「企業グループ」って具体的にどのような会社が該当するの?ということを理解する必要があります。

証券取引所の企業グループの定義は、有価証券上場規程第2条(26)にて、定義化されています。

有価証券上場規程(東京証券取引所)第2条

(定義)
この規程において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(26) 企業グループ 会社並びにその子会社及び関連会社をいう。

つまり上場準備担当者が理解すべき企業グループとは、

  1. 上場申請会社
  2. 上場申請会社の子会社
  3. 上場申請会社の関連会社

という事になります。

子会社とは

子会社とは、財務諸表等規則第8条第3項に規定する子会社をいいます。

「財務諸表等規則」とは正確にいいますと「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」といいます。

財務諸表等規則第8条第3項

この規則において「親会社」とは、他の会社等の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関をいう。以下「意思決定機関」という。)を支配している会社等をいい、「子会社」とは、当該他の会社等をいう。親会社及び子会社又は子会社が、他の会社等の意思決定機関を支配している場合における当該他の会社等も、その親会社の子会社とみなす。

子会社につきましては、↓の記事でさらにくわしく説明しています。

上場準備担当者が理解すべき「子会社」の定義を説明します

関連会社とは

関連会社は、財務諸表等規則第8条第5項に規定する関連会社をいいます。

「財務諸表等規則」とは正確にいいますと「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」といいます。

財務諸表等規則第8条第5項

この規則において「関連会社」とは、会社等及び当該会社等の子会社が、出資、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、子会社以外の他の会社等の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる場合における当該子会社以外の他の会社等をいう。

関連会社については↓の記事でさらにくわしく説明しています。

上場準備における企業グループ

上場審査は、形式要件(有価証券上場規程第 212 条)に適合する申請会社の企業グループを対象として、「実質審査基準」に掲げる事項に基づいて行われることになります。

ここでしっかり理解しなければいけないのが、上場審査は、上場申請会社と子会社だけが対象ではなく、関連会社も対象に含まれるという点です。

関連会社は、自社や子会社に比べて、経営的な関与や関心度が低く、「あの会社、よくわからんわ」というようなケースがありますので、気を付けましょう!

企業グループ算定特例

障害者雇用促進法43条第1項には、従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があると定められています。

民間企業における法定雇用率とは、2.3%です。

つまり、43.5人ごとに1名以上の障がい者を雇用する必要があります。

企業グループ算定特例という制度は、この雇用率の算定において、一定の要件を満たす企業グループは、各企業が単独で雇用率を算定するのではなく、企業グループ全体で実雇用率の通算が可能となるものです。

なお、ここにおける企業グループについては、親会社と子会社だけのようであり、有価証券上場規程の定義とは異なります。

この法律では、雇用義務を履行しない事業主に対して、ハローワークから行政指導があることとされています。

企業グループ算定特例の概要については、こちらになります。

上場準備で気を付けるべき注意点

上場準備を進めるにあたって、いろいろな用語が出てきます。

その用語の中には、一般的な解釈や理解とは異なる用語がちらほら存在します。

例えば「企業グループ」をググってみてください。

ブログの中の人が今、ググってみると、有価証券上場規程にあるような定義がトップページにありません。

IPOAtoZでは、そのような情報を地道に積み上げようと考えています。

※ 税務においても「企業グループ」の用語が存在します(「グループ通算制度」という子会社を含めた納税制度に関連するものです)。上場準備との直接的な関連は低いと考え、割愛させていただきます。