2020年3月24日に上場したリバーホールディングス株式会社にはメジャーヴィーナス・ジャパン株式会社、2019年3月20日に上場した株式会社ギークスにはNexSeed Inc.という関係会社があります。

それぞれをザックリ比較すると表1のようになります。

表1 リバーホールディングスとギークスの関係会社比較

リバーホールディングス ギークス
関係会社 メジャーヴィーナス・ジャパン NexSeed
議決権比率 50.0% 39.8%
会社の位置づけ 持分法適用関連会社 連結子会社

リバーホールディングス社は、メジャーヴィーナス・ジャパン社の議決権を50%保有しているにもかかわらず、メジャーヴィーナス・ジャパン社は、リバーホールディングス社の子会社ではありません。

しかし一方、ギークス社は、NexSeed社に対する議決権が39.8%にすぎないにもかかわらず、NexSeed社を子会社として位置づけています。

そこで、このブログ記事では、上場準備の担当者などが認識しておくべき「子会社」の定義について紹介させていただきます。

子会社とは

ギークス社の目論見書には、「持分は、100分の50以下でありますが、実質的に支配しているため子会社としております。」という説明が記載されています。

つまり、子会社とは、次のような解釈になります。


  •  議決権を50%超保有されている場合は、子会社に認定!
  •  議決権が50%以下であっても、”実質的に支配”されている場合は、子会社に認定!

になるということになります。

そこで”実質的な支配とは何か?”を認識する必要性が出てきます。

なお、親会社とは、支配している会社の方を言います。

上場準備における子会社の注意

上場申請会社に子会社があれば、主に次のような影響が出てきます。

  • 連結財務諸表の作成対象になる
  • 上場審査対象になる
  • Ⅰの部や有価証券報告書等で開示対象になる
  • 社外取締役や社外監査役等の要件の制限が出るなど

つまり、子会社と考えていなかった会社が子会社として認定されてしまうと、上場準備に大きなインパクトを与えてしまい、最悪のケースでは上場を諦めるという事態を招いてしまうという可能性があります。

また東証が発行する「新規上場ガイドブック」には次のような一文が存在します。


出資調整の有無については、まず、申請会社の企業グループの出資構成の確認を行います。

この際に、申請会社グループからの出資が 100%となっていない場合、つまり、その他の出資者が存在している場合には、その出資の経緯及び理由を確認します。

この結果、その他の出資者の出資理由が明確なものでなく、例えば、業績の悪化している子会社を連結対象から外すことを目的としているような場合には、申請会社の企業グループの状況が適切に開示されるようにグループの出資構成の改善を求める場合もあります。

(出所 「新規上場ガイドブック」東京証券取引所より)


つまり、完全子会社以外の子会社を保有している場合、上場審査でその経緯と理由を間違いなく問われることになります。

上場審査等における子会社

上場審査等における子会社は、「有価証券上場規程」の定義を用いることになります。

「有価証券上場規程における子会社」は、「財務諸表等規則で定められている子会社」になります(有価証券上場規程 第2条(36))

有価証券報告書等における子会社

上場準備時にⅠの部や有価証券届出書、目論見書という資料を作成することになります。

これらの資料は、「企業内容等の開示に関する内閣府令」を遵守して作成することになります。

「企業内容等の開示に関する内閣府令が定義している子会社」とは、「財務諸表等規則で定められている子会社」になります(企業内容等の開示に関する内閣府令 第一条第1項27号)

上場を目指す会社関係者は、「財務諸表等規則で定められている子会社」について、しっかりと認識しましょう。

「財務諸表等規則」における子会社

財務諸表等規則とは、正式名を「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則という会計の規則です。

会計における子会社の考え方、つまり、どのような会社が連結子会社になるかということは、財務諸表等規則第8条第3項と第4項で次のように定められています。

議決権が50%超

議決権が50%超を保有する株主は、株主総会の普通決議を単独で成立可能です。

取締役・監査役・会計監査人の選任は、株主総会の普通決議で成立するため、議決権が50%超を保有する株主は、会社経営を支配していると解釈できます。

議決権を50%超保有している会社は、子会社として位置づけられます。

議決権が40%以上~50%以下

議決権が50%以下の株主は、株主総会の普通決議を単独で決定出来ません。したがいまして、50%近く議決権を持っている株主であったとしても、他の株主が結託して、株主総会で反対票を入れてしまうと、希望するような決議がされません。

しかし、次のような条件があれば、議決権が40%以上~50%以下であったとしても、実質的に支配していると見做され、子会社として位置づけられます。


【議決権が40%以上~50%以下であったとしても、実質的に支配していると見做される場合とは】

緊密な関係がある者と合わせると議決権の過半数になる会社」

または

「役員または融資、重要な財務、事業方針などで支配されているような会社」


になります。

したがいまして、表1のリバーホールディングス社は、 メジャーヴィーナス・ジャパンの株式を50%保有していますが、その他の株主に”緊密な関係がある者”が存在せず、さらに、役員または融資、重要な財務、事業方針などで支配していないため、メジャーヴィーナス・ジャパンが子会社にならないということになります。

「緊密な関係がある者」と「役員または融資、重要な財務、事業方針などで支配されているような会社」の内容につきましては、後述します。

議決権が40%未満(ゼロも含む)

40%未満どころか、議決権がゼロであったとしても、次のような条件があれば、実質的に支配していると見做され、子会社として位置づけられます。


【議決権が40%未満であったとしても、実質的に支配していると見做される場合とは】

緊密な関係がある者と合わせると議決権の過半数になる会社」

かつ

「役員または融資、重要な財務、事業方針などで支配されているような会社」


になります。

ギークス社は、NexSeed社に対する議決権が39.8%に過ぎませんが、”緊密な関係がある者”が持つ議決権と合算すると議決権が50%超になり、かつNexSeed社に対して役員または融資、重要な財務、事業方針などで支配しているため、NexSeed社を子会社にしているという解釈になります。

なお、「議決権が40%以上~50%以下」と「議決権が40%未満」では、「または」と「かつ」が異なります

緊密な関係がある者とは

子会社の定義をしっかりと理解するためには、「緊密な関係がある者とは?」を理解する必要があります。

それは、「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」に例があります(こちらになります)。

「緊密な関係がある者」の例
  1. 議決権の 20% 以上を所有している企業
  2. 役員
  3. 役員が議決権の過半数を所有している企業
  4. 役員、使用人又はこれらであった者が、役員の過半数を占めている企業
  5. 役員若しくは使用人である者、又はこれらであった者が、代表権のある役員として派遣され、かつ役員の相当数(過半数に満たない場合を含む。)を占めている企業
  6. 資金調達額(貸借対照表の負債の部に計上されているもの)の総額の概ね過半について融資(債務保証及び担保の提供を含む。)を行っている企業
  7. 技術援助契約等を締結しており、当該契約の終了により、事業の継続に重要な影響を及ぼすこととなる企業
  8. 営業取引契約によって事業依存度が著しく大きいこと、フランチャイズ契約等により著しく事業上の拘束を受けることとなる企業
  9. 契約や合意等により、自己の意思と同一内容の議決権を行使することに同意していると認められる者
  • 上記以外の者であっても、出資、人事、資金、技術、取引等における両者の関係状況からみて、自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者は、「緊密な者」に該当することに留意する必要がある。
  • 自己と緊密な関係にあった企業であっても、その後、出資、人事、資金、技術、取引等の関係について見直しが行われ、自己の意思と同一の内容の議決権を行使するとは認められない場合には、緊密な者に該当しない。

(出所:「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」より引用)

「役員または融資、重要な財務、事業方針などで支配されているような会社」とは

役員または融資、重要な財務、事業方針などで支配されているような会社」とは次のような会社になります。

「役員または融資、重要な財務、事業方針などで支配されているような会社」の例
  • 自己の役員、自己の業務を執行する社員若しくは使用人である者又はこれらであった者で、自己の意向に沿って取締役としての業務を執行すると認められる者の員数が、取締役会の構成員の過半数を占めている場合
  • 融資(債務保証や担保提供を含み、B/Sの負債の部に計上されているものに限る。)をしている金額割合が資金調達総額に対し50%超になっている会社。
  • 会社法上の事業全部の経営の委任(会社法第 467 条第 1 項第 4 号)を受けている会社。
  • 原材料の供給・製品の販売に係る包括的契約、一手販売・一手仕入契約等により、事業依存度が著しく大きい会社。
  • 営業地域の制限を伴うフランチャイズ契約、ライセンス契約等により、当該他の会社が著しく事業上の拘束を受けている会社。
  • 技術援助契約等について、当該契約の終了により、当該他の会社の事業の継続に重要な影響を及ぼすこととなる会社。
  • 当該他の企業が重要な財務及び営業又は事業の方針を決定するにあたり、自己の承認を得ることとなっている会社。
  • 多額の損失が発生し、自己が当該他の企業に対し重要な経営支援を行っている場合又は重要な経営支援を行うこととしている会社。
  • 当該他の企業の資金調達額(貸借対照表の負債の部に計上されているものに限らない。)の総額の概ね過半について融資及び出資を行っている会社など。

(出所:「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」より引用)

    議決権ゼロでも、子会社として位置付けられた事例

    上場準備期間において、子会社と考えていなかった会社が、連結子会社として、位置付けられてしまうと大変です。

    監査法人が上場直前期にいきなり、このような判断をした場合、上場延期がほぼ決定です。

    ブログの中の人が過去に担当した会社の中で、以下のような会社が議決権がゼロであったにもかかわらず、連結子会社として扱われた事例を次に紹介します。

    議決権がゼロであったにもかかわらず、連結子会社として扱われた事例(A社を親会社、B社を子会社とします)
    • A社は、社員に対して、フランチャイズとしてブランド使用、仕入調達支援、運転資金の低利融資する独立支援制度がある。
    • B社経営者は、この制度を使ってA社から独立。B社は、フランチャイズ店舗を増やし、B社の売上はA社の売上の10%を大きく超えるまでに成長していた。
    • B社の新規出店に伴い、A社はB社からの求めに応じ、運転資金の融資を実施していた。
    • A社はB社からの要請を受け、管理業務のサポートだけではなく、A社役員がB社取締役に無報酬で就任するなども行っていた。

    A社の独立支援制度は、資金面や運営面においても手厚いものでした。

    しかし、あまりにも手厚いために、監査法人は、A社がB社を実質的に支配していると判断し、B社はA社の連結子会社であるという判断がなされました。

    結局A社は、この件が上場準備中断の決定打となってしまいました。

    議決権の計算、または子会社の状況

    子会社を判定するための議決権の計算においては、あくまでも期末時点での計算になります。

    また次のような株式は、議決権の計算から除外されます。

    議決権の計算から除外される株式
    1. 自己株式
    2.  完全無議決権株式(株主総会のすべての事項について議決権を行使することができない株式)
    3. 会社法第 308 条第 1 項による相互保有株式

    さらに次のような会社については、子会社から除外されます。

    子会社から除外される会社
    1. 民事再生法の規定による再生手続開始の決定を受けた会社、かつ、有効な支配従属関係が存在しないと認められる企業
    2. 会社更生法の規定による更生手続開始の決定を受けた株式会社、かつ、有効な支配従属関係が存在しないと認められる企業
    3. 破産法の規定による破産手続開始の決定を受けた会社、かつ、有効な支配従属関係が存在しないと認められる企業
    4. 支配が一時的であると認められる企業

    上場準備中に現れる子会社用語一覧

    「財務諸表等規則」における子会社とは、連結子会社になります。

    連結子会社という言葉は、大変メジャーな用語です。

    連結子会社の類義語でマイナーな用語を紹介します。なお、これらの用語は、全て上場準備の段階で現れる用語になります。

    親会社等・子会社等

    上場会社担当者が認識すべき「特定子会社」とは

    上場準備担当者が理解すべき「企業グループ」とは

    連動子会社