
上場を目指すとなると、「〇〇株主」という類似用語が多く出てきます。
その中で、よく出てくる用語の一つとして、「支配株主」という用語が存在します。
支配株主とは、その言葉のとおり、会社経営を支配している株主のことを言います。
支配株主がある会社は、開示などに影響が出てきます。
また、よく似た言葉として「支配株主等」「特別支配株主」という用語もあります。
ここでは、それぞれ簡単に説明させていただきます。
支配株主とは
支配株主とは、東証が定めた規則の用語です。
上場審査では、支配株主が存在する会社が支配株主となんらかの取引をしていた場合、少数株主の保護の方策をとることができる見込みがあるかどうかの確認がされます。
支配株主の有無については、次のような判断になります。
- ①親会社を有する
【No:②へ。Yes:支配株主あり】 - ②親会社以外に主要株主がいる
【Yes:③へ。No:支配株主なし】 - ③主要株主が自己の計算で保有する議決権が過半数である
【No:④へ。Yes:支配株主あり】 - ④当該主要株主が自己の計算において所有している議決権と、次の(1)(2)に掲げる者が所有している議決権とを合わせて、上場会社の議決権の過半数を占めているか
(1)当該主要株主の二親等内の親族
(2)当該主要株主及び(1)が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社等及び当該会社等の子会社
【NO:支配株主なし Yes:支配株主あり】
支配株主等とは
支配株主等も東証が定めている用語です。
「支配株主」+「その他の関係会社(財務諸表等規則第8条第17項第4号)」
「支配株主等」は異なる定義で金融商品取引法に存在しますが、IPO準備には関係ないと思われますので、省略しました。
特別支配株主とは
「支配株主」の類似用語として、「特別支配株主」という用語が存在します。
「支配株主」は東証の用語である一方、「特別支配株主」は会社法における用語になります。
特別支配株主は、IPO準備においては、子会社を整理する際に利用する可能性がある用語です。
もし株式保有比率が90%以上100%未満となっている子会社を保有する会社が、当該子会社を整理する際に利用可能性がある用語です。
「会社の議決権の90%以上を保有する者」
特別支配株主が存在する会社では、取締役会の決議があれば、当該株式会社の株主全員に対し、株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すよう請求する「株式等売渡請求」が認められています。
支配株主が存在する会社の義務
支配株主を有する上場会社は、少数株主にとって不利益な取引を行わないように、いくつかの義務が存在します。
細かいようですが、「支配株主」と「支配株主等」を区別して義務があることに注意しましょう
「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」にて開示
上場申請時に提出する資料の中に「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」があります。
支配株主が存在すれば、その書類にて、支配株主の存在を開示する必要があります。
「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」とは、次のような報告書です。
「支配株主等に関する事項」を開示
支配株主を有する上場会社は、事業年度経過後3か月以内に、「支配株主等に関する事項」を開示することが義務付けられています。
【上場規程第411条第1項、施行規則第412条】
支配株主等に関する事項に関する、開示様式例は、こちらになります。
東証が開示例をまとめています。こちらになります。
事例を貼ります。
重要な取引をする場合の規制
支配株主との間で、上場会社が適時開示を行う必要があることをする場合、「企業行動規範に定める手続き」の実施が必要になります。
「企業行動規範に定める手続き」とは、適時開示だけではなく、「支配株主との間に利害関係を有しない者による、上場会社又はその子会社等による決定が少数株主にとって不利益なものでないことに関する意見の入手」となります。
なお、「企業行動規範に定める手続き」が必要となるのは、支配株主だけではなく、次のような属性の個人法人が含まれます。
- 支配株主
- 上場会社と同一の親会社をもつ会社等(当該上場会社及びその子会社を除く。)
- 上場会社の親会社の役員及びその近親者
- 上場会社の支配株主(当該上場会社の親会社を除く。)の近親者
- 上場会社の支配株主(当該上場会社の親会社を除く。)及び前号に掲げる者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社等及び当該会社等の子会社(当該上場会社及びその子会社を除く。)
「大株主」と「主要株主」
支配株主に類似する用語として「大株主」「主要株主」があります。
こちらで説明していますので、ご参考ください。