過去には、「売上高の約97%が虚偽」というとんでもないレベルの粉飾決算でIPOを行った事例があります。株式会社エフオーアイです。
この事件によって、IPOに対する信頼性が大きく低下し、業界全体に大きな打撃を与えました。
経緯
エフオーアイにどのような事があったのかを簡単に紹介します。
2009/11/20 | 東証マザーズに上場 |
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2010/5/18 | 上場審査時の粉飾決算が明らかになり、上場廃止が決定
⇒ 株式上場から半年後に上場廃止決定! |
2010/5/21 | 東京地方裁判所に破産手続き開始の申し立て
⇒ 株式上場から半年後に破産決定! |
2010/6/15 | 上場廃止 |
2010/9/15 | 奥村裕(代表取締役社長) を有価証券届出書の虚偽記載容疑で逮捕 |
2010/9/16 | 上畠正和(代表取締役専務)と河野六甲(取締役)を逮捕 |
2010/9/29 | 役員や東証、会計士、幹事証券会社等に対し、約2億8千万円第1次民事訴訟提起 |
2010/12/3 | 役員や東証、会計士、幹事証券会社等に対し、約8千万円第2次民事訴訟提起 |
2012/2/29 | 奥村、上畠の両名に対し、懲役3年の実刑判決(上畠正和は控訴せず確定。奥村裕は一旦控訴するも、後日取り下げし、刑確定) |
2016/12/20 | 東京地方裁判所で第一審判決
元役員8名と主幹事証券会社に対し賠償責任を認める |
2016/12/26 | 控訴手続き |
2018/3/23 | 東京高等裁判所で控訴審判決
非常勤監査役の賠償責任は全額(1億7000万円余)認めたものの、その他の関係者(証券会社、東京証券取引所など)の賠償責任はいずれも認めなかった。 |
2020/11/17 | 最高裁判所で上告審の口頭弁論 |
他山の石にするために
IPO予備軍が、FOIの不祥事を「他山の石」とするためには、以下のような事がポイントになると考えます。すべて個人的見解です。
FOIは、上場直前期の売上高が約118億円である一方、売掛金が約229億円でした(売上債権回転期間が2年!)。この点に関しまして、同社が書いたウソの目論見書には、以下のような記載があります
- FOIは、半導体材料(シリコンウェハ)をエッチングする工程の機械を製造販売しており、「初号機」と「リピート機」の2つに分類される。
- 「初号機」は、半導体の新設量産ライン向けの機械であり、半導体の目標歩留率を確保するまで長期になるのが一般的。
- 売上計上は設置完了基準であり、売掛金回収は技術検収完了後の回収が標準となっている。売上計上から売掛金回収に至る期間が概ね1年6カ月から2年6カ月になる。
FOIの財務諸表を見れば、商業高校の2年生レベルでもヤバい会社ということが一目瞭然です。
FOIの主幹事証券会社や監査法人は、FOIの類似会社や市場環境の基本的な調査・認識を怠ったと思われます。
例えば、「半導体製造機器メーカーの中で売掛金回収までの期間が2年になっている会社が存在するのか?」「ムーアの法則(「半導体の集積率は18か月で2倍になる」という法則)」という半導体業界の基本中の基本の法則)を照らし合わせると、歩留確保まで2年前後かかるという半導体製造設備が業界から受け入れられるような設備なのか?」「技術力の高さをアピールしているが、歩留確保に2年前後も要するような設備を作っている会社って、本当に技術力が高いというのか?」などのシンプルな疑問をなぜ持たなかったのかと思っています。
FOIの業績規模は、東証1部へ直接上場してもおかしくないレベルです。
通常、この規模の会社がIPOをする際は、大手証券会社がシ団に名を連ねているはずですが、当時の大手証券会社(野村証券、大和証券、日興証券、および、旧みずほインベスターズ証券を吸収する前のみずほ証券)はシ団に加わっていない事から、このような大手証券会社は、FOIを”疑義のある会社”として考えていたと予想します。
- 賠償責任を認められた役員は、常勤の役員だけではなく、非常勤取締役や非常勤監査役も含まれています。
- 非常勤監査役2名に対する上場直前期の監査役報酬は636万円であった一方、損害賠償額は1.7億円強のようです。
主幹事証券会社が日本初の損害賠償責任を負う判決が出る
和解が成立
最高裁判決を受け、和解が成立しました。
こちらに記事があります。
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