IPOを達成した直後、問題が発覚した会社は、毎年のようにあります。2019年に不祥事が判明した例として、アルテリア・ネットワークス(以下、「アルテリア」といいます)の例をみてみましょう。

以下に、簡単に経緯をまとめました。

2018/7/13 東証へ上場申請
2018/8/22 アルテリア子会社の常務執行役員A 氏は、アルテリアの法務部長に対し、競合他社との間で情報交換を行っていたことを窺わせる事象(独禁法違反の疑いとなる事象)について相談。
2018/8/27 A氏は、アルテリアの経営会議において、競合他社との間で情報交換を行っていたことを窺わせる事象について発言。(法務部長は、A氏による8/22の相談および、8/27の発言を受け、独禁法違反の疑いについて社内調査を開始)

問題点
  • アルテリアは、東証による上場審査中である。
  • アルテリアは、独禁法違反の疑いが存在する事象が存在していたにもかかわらず、東証、主幹事証券会社監査法人、法務アドバイザー等に対し、本件行為の存在又はその疑いを具体的に伝達しなかった。
  • アルテリアは、本件につき、上場審査時提出書面、および有価証券届出書に記載されなかった。
2018/11/13 東証マザーズ上場承認
2018/12/4 東証一部上場承認
2019 /2/4 法務部長は、外部法律事務所に対して、独禁法対応につき相談した結果、独禁法違反の可能性がある旨の指摘を受ける。これにより翌日頃から、外部法律事務所による調査を開始
2019 /2/26 外部法律事務所から調査結果報告書を受領
2019 /4/16 「独禁法違反行為の疑い」に関するプレスリリース(翌朝の株価は、ストップ安からはじまる)

問題点

2/4(外部法律事務所で調査を実施)、2/26(調査報告書を受領)という事実が存在するにもかかわらず、プレスリリースを4/16まで行っていなかった。

2019/5/31 代表取締役をはじめとする4名の取締役、および監査役辞任発表
2019/6/19 第三者委員会調査報告書を公表
2019/7/31 関係者の処分発表

不祥事は、関係者の処分でひとまず終了という事になりますが、大きく信頼を失ったという影響は、多方面に出てきます。例えば、次回にPOなどのファイナンスをしたい時、多額の借入をしたい時などに影響をおよぼす可能性があります。

アルテリアには無かったようですが、もし役職員が株式上場~4/16までの間に自社株式を売却している事実があれば、相当厳しい調査がされたことでしょう。

株式上場を目指す会社にとっても、不祥事は多かれ少なかれ、影響が出ることがあり、不祥事が起きるたびに、上場審査や引受審査において、審査のチェック項目が増えやすくなり、厳格化されやすくなります。

株式上場を目指す会社は「他山の石」として捉えましょう。