このブログをお読みの方は、IPOは難しい、上場準備は大変だということくらい十分ご存じだと思います。
しかし、なぜIPOが難しいのか、なぜ上場準備は大変なのかという理由やきっかけについては、意外と知らない方が多いと思われます。
その理由のほとんどは、過去の不祥事事件が存在します。
例えば、「内部統制を何でやらなくちゃいけなくなったの?」については、エンロンという世界的な大企業の不正がきっかけになります。
エンロンは、ウィキペディアを見てみますと、当時全米第7位の売上高を誇る大企業でした。
ちなみに日本企業の売上第7位は、ENEOSであり、日立やソニーより上位ランクです。
こんな優良大企業が一気に倒産なんて誰も予測できませんでした。
日本では、MMFの元本割れを起こし、MMFの運用会社日興アセットマネジメントの社長は引責辞任しました。
MMFとは元本保証されていませんが、証券会社が販売する数ある商品の中で元本割れが最も許されない商品のひとつだからという理由です。
MMFに組み入れされている有価証券は、投資のプロが「絶対安心」という超ローリスク有価証券ばかりで構成されていますが、そんなプロでさえ、エンロンの破綻を予測できませんでした。
また、Ⅰの部の記載内容で申し上げますと、2019年に役員報酬の記載に関して、あれこれ書かなくっちゃいけなくなりました。
その原因は、日産自動車の元社長カルロスゴーンの暴走があります。
証券取引等監視委員会による日産自動車への勧告はこちらになります。
企業の不正とは直接関係ありませんが、2022年4月1日より施行された改正道路交通法施行規則では、安全運転管理者に対するアルコールチェックが義務付けされました。このきっかけは、2021年6月28日に千葉県八街市で起きた交通事故です。
つまり事件や事故が法や規則の設立・改正に結び付くことが多々あります。
したがいまして企業不祥事を知ると「だから、上場準備でこんな事をしなきゃいけなくなったのかぁ」と腑に落ちるケースも存在すると思われます。
ブログの中の人が考える上場準備に影響を与えているであろう代表的な企業不祥事を勝手に選び、紹介させていただきます。
なお、内容は一切、保証いたしておりません。
(1万字近いブログ記事になってしまいました。)
「新規上場申請に係る宣誓書」を提出する理由
上場申請書類は、いくつか存在しますが、その中に異彩を放つ申請書類が存在します。
「新規上場申請に係る宣誓書」です。(このリンク先から、「新規上場申請に係る宣誓書」をクリックしてください)
内容は「嘘をついていない事を誓います」という事を経営者が誓うだけの書面です。
また上場承認までに提出する書面である「新規上場申請のための有価証券報告書(Iの部)及び新規上場申請のための四半期報告書の適正性に関する確認書」も同様な内容の書面です。
なぜこのような書面がわざわざ提出を求められるようになったかと言いますと、世界中のデストラーデファン、また志村けん好きな人だったら誰もが知っているであろう西武鉄道の不正が原因になっています。
不正の内容については、約20年前の話であり、ブログの中の人は詳しい事を忘れてしまったので、リンクをご覧ください(こちらになります)。
東証は、この不正の直後、有価証券上場規程等の改正を行い、「新規上場申請に係る宣誓書」と「新規上場申請~(略)~適正性に関する確認書」の提出を義務付けるようになりました。
しかし、残念ながら、このような宣誓書を提出させても、嘘つき経営者が出現しておりますので、この書面に効果があったのかどうかは何とも言えません。
1社の不祥事が証券市場全体に影響をもたらす事が認識させられた
ライブドアという会社がありました。
当時フジテレビの親会社であったニッポン放送株式を敵対的買収を画策してフジテレビを乗っ取ろうとしたり、プロ野球の近鉄バファローズ(現楽天イーグルス)の買収画策、パッケージソフトの弥生買収等、時代の風雲児でした。
ブログの中の人もこんな仕事に憧れ、某東証一部上場企業を退職し、ベンチャー企業に飛び込んでくらいです。
証券市場において、ライブドアは完全に”腫れ物”扱いをされておりましたが、その懸念が一気に放出されました。
金融庁の公表資料によりますと、こんな事がありました(こちらになります。)。
この資料には色々書かれていますが、粉飾決算が一番ショボく感じるくらいです。ブログの中の人の記憶では、東証全体の取引の約4割(?)をライブドア株式の取引で占められたという事を覚えています。
株式市場を完全におもちゃにし、食い物にしている事が見て取れます。
ライブドアの証券取引法違反容疑が明るみになった翌日、ライブドアだけではなく、東証の全銘柄取引停止を引き起こしました。ライブドアショックと言われています(こちらになります)。
一般的に企業不祥事が発覚すれば、その会社関係者並びにステークホルダーのみ影響が出るはずです。
しかしライブドアショックは、1社のベンチャー企業でも不祥事を起こしてしまうと、ステークホルダー以外にも証券市場全体に悪影響を及ぼす可能性があることを認識させられた事件になります。
なお、日本中の男性を不幸に陥れた女優石原さとみさんの結婚発表も全銘柄取引停止を巻き起こしました。つまりライブドアショックとは、石原ひとみさん結婚に負けないくらいショックが大きな出来事であった事は言うまでもありません!
なお、このブログをローンチした2023年1月4日は、土屋太鳳ショックで日経平均は377円も値を下げました。人気女優の結婚発表は、本当に困ったものです。
経営管理体制の確認が厳格化した理由
上場するためには、経営管理体制の確認、つまり取締役会や監査役会等の組織の運営状況を確認されます。
非上場会社でよくあるケースは、オーナー社長の暴走を防ぐことができないような経営管理体制になっており、取締役会や監査役会等が形骸化されているという事です。
なぜそのような事が重点確認されているのかを次で説明させていただきます
経営管理体制が形骸化していた会社が粉飾し、上場廃止になった
グレイステクノロジーという上場会社がありました。
グレイステクノロジーは、売上高の約半分を虚偽で押しとおすという大型の粉飾事件でした。
上場廃止が一発で決まりました。IPO AtoZでも過去、取り上げています。
一応、ブログの中の人は、↓のような影響が出ると予想しています。某大手証券会社の公開引受部長が部門会議でこの記事を読めという指示が出たそうです。
グレイステクノロジーの粉飾は、一部の経理担当者が個人で勝手に行ったのではなく、明らかに前会長(故人)のパワハラ、取締役会や内部監査等の機能不全が発端です。
第2のグレイステクノロジーを上場させてはいけないため、経営管理体制が形骸化していないかどうかの確認が厳格化しています。
上場会社の中にろくでもない問題会社があった
メディア・リンクスという会社が旧大証ヘラクレスに上場していました。
この会社は、国内の取引市場にこれまで上場した会社の中で、1・2を争うくらい問題児っぷりを発揮した会社です。
この会社が巻き起こした不祥事は、ざっくり↓のような感じです。
- 粉飾(関係する記事がこちらになります)
- インサイダー取引(関係する記事がこちらになります)
- 反社との関係(関係する記事がこちらになります)
- 風説の流布(関係する記事がこちらになります)
- 社長の暴力事件(関係する記事がこちらになります)
タレントの彦摩呂さんだったら、「不祥事界の玉手箱や~」と言いそうです。もう無茶苦茶です。
証券市場にメディア・リンクスのような不良会社を上場させてしまうと、証券市場の信頼が揺らぐため、東証や証券会社は経営管理体制をしっかりと確認することになります。
不祥事界のオールラウンドプレイヤーとして大活躍したメディア・リンクスにつきまして、ブログの中の人は、元社員からいくつか内情を聞いておりますが、決して暴露出来るような内容ではありません。
メディア・リンクスは倒産しました。
現在上場している (株)メディアリンクスは別会社です。
コンプライアンス遵守状況の確認が厳格化した理由
企業経営にとって、コンプライアンス遵守は必須であり、それを遵守していない場合、業績が良好でも、一気に上場廃止や倒産もありえます。
そのようなことがあるため、上場準備におきまして、証券会社や東証からコンプライアンス遵守体制に関する調査を受けることになります。
なぜコンプライアンス遵守体制について審査が厳格化したのかという理由として、以下のような代表格の3社の不祥事を紹介させていただきます。
反社との関係が深い会社が上場してしまった
いきなり申し訳ございませんが、ブログの中の人は、小学生含む子供3人を持つ親ということもあり、正直、この会社をあまり詳しく説明したくございません。
しかし国内IPOの不祥事の歴史にとりまして、「リキッ度・オーデイオ・ジャピャ~ン」は無視できません。
背景が怖いため、郷ひろみ風に「リキッ度・オーデイオ・ジャピャ~ン(度⇒ド、イ⇒ィ、ジャピャ~ン⇒ジャパンに変換して下さい)」と表現させていただいております。
美人司法書士の方が説明しています。鶯谷デートが叶うのであれば、私は土下座10,000回出来ます。
上場記念パーティーは、ニュースなどでも話題になりました。こちらになります。
社長の経歴がウィキペディアにありました。本当かどうかわかりません。こちらにあります。私は、大和証券の件を知りませんでした。
さらに本当かどうかわかりませんが、Yahoo!知恵袋には、こんなやりとりもありますね。
私は、あえて何も言いません。
主幹事証券会社からは、コンプライアンス面だけではなく「芸能関係」や「社長の資質」について色々、言われると思います。
そのきっかけの一つとしても「リキッ度・オーデイオ・ジャピャ~ン」の不祥事が間違いなく影響していると考えられます。
IPO直後に、営業停止処分になった会社がある
この会社につきましても、ブログの中の人は、あまり言いたくありません。
「無いでアマチュア(「無い」の反対語「アル」、「アマチュア」の反対語「プロ」に変換してください)」がIPO時にどのような事をしたのかについては、AZX様が簡単に説明しています(こちらになります)。
不動産会社でありながら、上場後、たった3週間後に宅地建物業者免許の取り消し処分を受けたというとんでもない事態です。
このような事を受け、金融庁は東京証券取引所に対し、業務改善命令を出しました。「上場審査業務体制を再点検せよ!」という内容です。
(こちらになります)
なお、「無いでアマチュア」に関するマイナスイメージになる情報は、これだけではありません。
こちらになります。
東証は、本件の反省を生かし、上場審査等に関するガイドラインの作成に着手したと記憶しております。
一応、申し上げますが、「無いでアマチュア」は、今も上場企業(証券コード:8925)として存在しています。
したがいまして、今の上場企業の中にも、反〇との関係を疑われるような会社が存在するという事を覚えておきましょう。
業界最大手企業が許認可を取り消され、廃業した
上場を目指す会社には、様々な許認可を受けて運営している会社が多く存在します。
上場準備においては、許認可事業を継続するにあたって、法令遵守状況を確認されます。
また重要な取引先等の中に許認可事業を運営している会社があれば、その取引先の法令遵守状況の確認をどのようにしているのかという確認がされます。
そのような動きを行うようになった大きなきっかけとして、グッドウィルの廃業があります。
グッドウィルとは、人材派遣業界の最大手会社でした。しかし、労働者派遣法の違反を元に許認可が取り消され、廃業に至りました。
本件に関する東京弁護士会のサイトは、こちらになります。
グッドウィルの関係会社であった訪問介護の最大手企業コムスンも問題を起こし、介護事業から撤退をしました。
関連する記事は、こちらになります。
関係会社の整理や関連当事者取引の内容確認を強く求められる理由
上場を目指すとなると関係会社の整理を求められます。また関連当事者取引の確認を求められます。
その理由は、関係会社を使った不正、また企業グループのリスク増大等の理由です。
関係会社を使った不祥事等について紹介します。
世界的な有名企業が関係会社を使って不正した
内部統制制度設立のきっかけを作ったエンロンは、子会社へ「飛ばし」という手法で粉飾が行われ、経営破綻しました。
「飛ばし」というのは、子会社に損失を押し付ける行為です。
カメラで有名なオリンパスも海外子会社を巻き込んだ飛ばしを行いました(関連する記事は、こちらになります)。
同様な手口は、当時4大証券会社の一角である山一證券という大手証券会社も行い、倒産しています。
子会社ではなくとも、連結子会社ではない会社やファンド等があれば、損失飛ばしに使われる可能性が懸念されるため、上場準備段階では関係会社の整理を求められます。
オリンパスの粉飾事件は、上場準備段階における関係会社の整理に対する重要性を再認識させてくれました。
国内屈指の大企業が1社の子会社不振で倒産しかけた
東芝には、ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー(以下、「ウェスティングハウス」といいます)という子会社がありました。
東芝は、日立や三菱と並ぶ国内屈指の総合電機メーカーであり、サザエさんは東芝の1社提供でした。
東芝がサザエさんのスポンサーどころではなくなってしまった大きな理由が二つあり、その一つがウェスティングハウスの失敗です。
東芝は、子会社を含めた不正会計でも問題になりましたが、ブログの中の人は、ウェスティングハウスの方が強烈だったという印象を持っています。
不正会計は、せいぜい2千億円未満でしたが、ウェスティングハウスに関する実質的な損失は不正会計に比べて、数倍に膨れ上がり、東芝には経営危機が訪れました。
また本来であれば、半導体に投資すべきであった資金をウェスティングハウスの処理につぎ込まなければいけないという負のスパイラルに突入しました。
詳しくは、こちらになります。
主幹事証券会社から子会社管理、子会社と親会社間のコミュニケーション等をチェックされるのは、こういう出来事が過去にあった事も大きな理由のひとつになると思われます。
役員が子会社の資金を流用して、カジノに使っちゃった
オーナー経営者が自分の地位を利用して、子会社の資産を私的流用する事件が過去に何度かありました。
子会社管理が甘い場合、悪いオーナー経営者は、上手く不正を潜り抜けるのではないかというスケベ心が出てきます。
ブログの中の人が最もインパクトがデカいと思う事件は、大王製紙の会長が子会社から100億円超の資金を引き出し、カジノでパ~ッと使ったという事件です。
Wikipediaの関連サイトは、こちらになります。
なお、大王製紙での事件と同様、アコーディアゴルフの不祥事も凄かったです(こちらになります)。
社長が愛人のために借りたマンション賃料を、子会社が肩代わりして取引業者へ 支払させていたりするのは、強烈です。
関連当事者取引に対する監査体制についても、重要視しているのは過去にこういう不祥事があった事も理由の一つにありそうです。
予算の確認を厳格化されている理由
上場審査では、予算について、非常に非常に厳しくチェックを受けます。
特に申請期の予算達成状況を確認され、一定水準以上クリアできると判断出来なければ、上場延期になります。
その審査をくぐり抜けて、上場達成した後、業績が急転してしまった代表格が株式会社gumiになります。
gumiのような上場ゴール企業として揶揄される会社は、毎年のように出現します。
しかし、gumiは何といっても、極めてハードルが高い東証1部に直接上場した会社であるという事でインパクトが大きい事例になります。
会計監査や財務諸表の確認が厳しい理由
上場を目指す会社に対して、監査法人や証券会社は、財務諸表に対して厳しくチェックをします。その理由を↓で紹介します。
循環取引の有無の監査が厳しくなった理由
上場前から粉飾を続け、上場後たった約1年半後に上場廃止処分されたアソシエント・テクノロジーという会社がありました。
山口利昭法律事務所様のブログでアソシエント・テクノロジーに関した記事がございます(こちらになります)。
間違いかもしれませんが、ある方から、アソシエント・テクノロジーの粉飾は、循環取引の元祖とお聞きました。
特にソフトウェアや不動産業の中には、循環取引に違法性を感じない会社も存在します(日本公認会計士協会のパンフレットは、こちらです)。
もし、取引内容のチェックが厳しいとお考えになった場合、アソシエント・テクノロジーの一件が影響しているのではとお考え下さい。
PL以外の確認が厳しくなった理由
モリモトは、2008年2月27日 に当時の東京証券取引所2部に上場しましたが、その年2008年11月28日に民事再生法の手続きを申し立てました。
つまりなんと上場後、9か月後に倒産です。
売上と利益の連単倍率が低いため、5期間の単体だけのPLを見ますが、5期間全て黒字であり、N-4以降は増収増益になっています(目論見書のリンクは、こちらになります)。
連結当期純利益は、直前々期39億円、直前期60億円であり、申請期も中間で28億円も黒字の会社です。
モリモトは、黒字倒産の代表格と言って過言ではないと思います。
一方、営業キャッシュ・フローが棚卸資産の増加を主要因として、非常にキツイ状態になっていることがわかります。このPLとのギャップがとても大きい会社です。
上場を目指す企業に対して、証券会社は、PLだけを意識・評価する傾向にありましたが、モリモトの倒産を通じて、キャッシュ・フロー(資金繰り)とバランスシートの重要性を認識させられました倒産劇です。
主幹事証券会社による財務諸表の確認が厳しい理由①
なんと売上の97%が虚偽であったという度肝を抜くレベルの粉飾をしながらIPOした会社があります。
半導体製造装置メーカーのエフオーアイです。
CFOを始めとする、経理財務スタッフが一致団結すれば、監査法人や主幹事証券会社を騙しぬける事を証明した不祥事です。
この事件は大問題になり、裁判は最高裁まで進み、その結果、主幹事証券会社が賠償責任を負うという初めての判決が出ました。
このような判決が出てしまったため、主幹事証券会社は、監査法人が無限定適正意見を出した財務諸表に対しても、しっかりと内容確認をしなければ、責任を取らされる事が明確化しました。
またシニアコミュニケーションという会社も上場前から粉飾をしていました。この会社の主幹事証券会社は、エフオーアイの主幹事証券会社と同じ旧みずほインベスターズ証券でした。この2件の主幹事証券を務めてしまった旧みずほインベスターズ証券のIPO業務は事実上崩壊しました。
シニアコミュニケーションについては、こちらで簡単にまとめています。
主幹事証券会社による財務諸表の確認が厳しい理由②
粉飾というのは、通常、会社の経理や経営者がコソコソっと監査法人に隠れて行うのが通例です。
しかし電子部品製造装置メーカーの株式会社プロデュースで起こった粉飾決算は、その反対です。
なんとなんと監査する側の監査法人の代表社員が粉飾を先導していたというブッ飛び粉飾事件です!
プロデュースは、会社を維持するために、上場前だけではなく、上場後もその会計士の粉飾指南に従わざるを得なくなったようです。
関係する新聞記事は、こちらになります。
この監査法人は、後に東陽監査法人されますが、その東陽監査法人は、裁判で賠償命令が出ました。
関係する新聞記事は、こちらになります。
この事件は、全国の監査法人、公認会計士にとりましても、非常にショッキングな事件でした。
ほとんどの会計士は、キチンと仕事をされていますが、中には倫理観の無い人や、品質が酷い監査法人も存在します。エフオーアイの件も含め、主幹事証券会社は、監査法人が無限定適正意見を出した財務諸表に対しても、しっかりと内容確認をしなければいけない事がこのような事例でもわかります。
監査法人による財務諸表の確認が厳しい理由
上で紹介させていただいたエフオーアイやプロデュースを監査していた監査法人も責任をとらされています。
また「金融庁 監査法人 処分」でググると、監査法人や会計士が処分されている事例がいっぱい出てきます。
その中でやはり象徴的なのが、2015年12月22日に金融庁が新日本有限責任監査法人及び公認会計士7名に下した処分です(処分内容は、こちらになります)。
最大手の監査法人が新規契約停止と課徴金、業務改善命令を喰らい、会計士は業務停止命令が出た処分になります。
監査法人にとって監査業務はリスクが発生するため、厳しく監査を行うことになってしまうのは当然になります。
労務管理に対する確認が厳しい理由
上場するためには、労務管理も重要な確認項目になります。そのきっかけなどについて、↓で説明させていただきます。
残業代未払いの有無が厳しくなった理由
上場までに残業代の未払いを解消を求められます。
この大きなきっかけは、当時、サラ金の最大手企業であった武富士の未払い残業代に関する裁判です。
これに関する関西合同法律事務所様のコラムがこちらになります。
5,000人分の未払い残業代の支払いというのは、凄いですよね。
この事件の社会的影響は非常に大きく、企業のサービス残業摘発に大きく拍車がかかったし、また、使用者・労働者双方に対して、残業代の未払が法律上許されない犯罪であるとの認識を拡げた。
(関西合同法律事務所 ホームページより)
この事件の前までは、サービス残業に関するチェックは甘かったですが、この一件を通じ、未払い残業の有無、また未払い残業を生まない仕組みのチェックが強化されました。
名ばかり管理職についての確認が厳しくなった理由
労務に関するチェックポイントの一つとして、名ばかり管理職もあります。
それは「管理職になったら、残業代の支払いをしなくていいよね。それだったら、みんな管理職にさせて、残業代をゼロにしちゃえ!」というものです。
マクドナルドの店長が「名ばかり管理職」なのではという事で裁判がありました。
LSC総合法律事務所様がまとめています(こちらになります)。
この裁判にある3つの基準に関しては、どの会社でも今も上場準備中に一度は、確認を受ける項目であると思われます。
パワハラ・過重労働に関する確認が厳しくなった理由
上場準備を目指す会社は、労務に関する法令遵守は勿論、高い倫理観も求められ、上場審査でも非常に厳しくチェックされます。
その厳格化が一気にズコーンと突き抜けたきっかけは、株式会社電通の社員であった高橋まつりさんの悲劇になると思われます。
労務関係で多くの会社が色々な形で不祥事を起こしましたが、この事件以上の社会問題化した事件は、この数年間で無かったのではないでしょうか?
柳川行雄さんという方が書かれているサイトにこの悲劇についてまとめられています(こちらになります)。
この事件を知った時、ブログの中の人は「電通社員は、なんでこんな可愛い子にパワハラすんねん!やるんやったらセクハラやろ!」と隣の席の女性社員に言ったところ「セクハラもあかんわ!」と強く言われてしまった事を覚えております。
さらに残念な事は、電通には高橋まつりさん以前にも同様な悲劇があったことです。
情報管理の厳格化に影響を与えた理由
リスク情報の中に情報管理に関するリスクは、どの業種業態でも記載されています。
その象徴的な不祥事と言えば、やはりベネッセの個人情報流出事件であると思います。
不祥事の概要は、こちらになります。
約2,895万の情報漏洩とは、凄いです。ブログの中の人の子供も入っていました。
今、日本国内の小学生と中学生の合計で1,000万人前後であることからも、2,895万人の多さが際立ちます。
この「ベネッセ個人情報漏洩事件 被害者の会」のサイトによれば、まだ裁判が継続しているようです(こちらになります)。
まとめ
上場準備に影響を与えているであろう代表的な企業不祥事を勝手に選び、紹介させていただきました。
この記事を作成するきっかけは、公認会計士であるIPOコンサルタントの方とお会いした際、その方がこのブログ記事であげたエフオーアイやプロデュースについてご存じじゃなかったからです。
ブログの中の人が少し過激な事を申し上げますと、エフオーアイを知らないIPOの専門家と称する方は、北里柴三郎を知らない医者、王貞治を知らないプロ野球選手、本田宗一郎を知らない自動車開発エンジニア、モナ・リザを知らない画家と同レベルであると考えましたので、ブログ記事にさせていただきました。
もし、このブログ記事で紹介した不祥事以外に、この不祥事も大きなポイントになってるよという情報を頂戴出来れば幸甚です。
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