株式会社ドンキホーテホールディングス(現株式会社パン・パシフィック・インターナショナル 以下「ドンキ」といいます)の前社長(大原孝司被告)が東京地裁で有罪判決を受けました。
この事件は、IPOを目指す会社の役員や従業員の方々にとりましても、把握しておくべき重要な事件であると考えますので、記事にして簡単にまとめました。
経緯
簡単に経緯をまとめるとこんな感じになります(登場人物「なおちゃん」は、仮名です)。
※ 特に二人の会話は、あくまでもイメージです。
2018年8月上旬~9月下旬
ワシが社長をしてるドンキにユニー・ファミリーマートホールディングス(現ファミリーマート)がTOB(株式公開買付)をやることになったわ。TOBを発表したら、ドンキの株が爆上げやわ。
なおちゃんに教えたら、喜ぶやろなあ。。。
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なおちゃん ドンキの株式、これから上がるでえ💖
マジで❓
でも、なぜ上がるの❓
それは、言われへんわ。それを言ったら、インサイダー取引になってしまうねん。
でも、上がるから、今のうちに買っておいた方がええわ💖
大儲け出来るかもよ💖
大原ちゃんが言うなら、きっと間違いないわ❕
絶対買うわ‼ Thank You💖
大原前社長は、なおちゃんに3回に渡り、買い付けの具体的な期限を示唆して買い増しを推奨するなどをして、ドンキ株購入を勧めたようです。
なおちゃんは、大原前社長の推奨によって、ドンキ株を約4億3千万円分購入したようです。
2018年10月11日
ドンキは、「ユニー株式会社の株式取得(子会社等の異動)及びユニー・ファミリーマートホールディングス株式会社の完全子会社による当社株式に対する公開買付けの開始予定に関する意見表明のお知らせ」を発表。
プレスリリースの内容は、こちらになります。
2018年10月11日以降
大原ちゃんが言う通り、ドンキ株買って良かったわあ💖
約6,900万円も儲かったわあ💖
ラッキー💖💖💖
なおちゃんは、約6,900万円を儲けましたが、刑事責任を追及されていません。
なおちゃんは、大原ドンキ前社長から、TOB等の重要事実を知らされていなかったからです。
2019年9月25日
大原社長 ドンキ取締役退任&ドンキグループ全役職辞任
2019年11月
証券取引等監視委員会からの調査を受け、ドンキは初めて本件被疑事実について認識
2020年12月3日
大原前社長が、東京地方検察庁により、金融商品取引法違反の疑いがあるとして逮捕される。
パン・パシフィック・インターナショナルのプレスリリースは、こちらになります。
2021年4月27日
東京地裁で「一般投資家の信頼を大きく害した」として、懲役2年、執行猶予4年(求刑懲役2年)の有罪判決が下る。
この事件のポイント
この判決に関連する金融商品取引法における「不正推奨の禁止」の罪については、意外と知られていないようです。
IPOを達成した会社に対しては、主幹事証券会社の売買管理部門がインサイダー取引に関するセミナーを開催しますが、この「不正推奨の禁止」の啓蒙は絶対に外せません。
不正推奨については、ドンキだけではなく、株式会社アイ・アールジャパンホールディングスでも事件が発覚し、逮捕者が出ました。
こちらになります。
簡単にポイントを説明させていただきます。
インサイダー取引とは、ちょっと違う
インサイダー取引とは、会社内部の情報を知る人間が、重要事実についての情報公表前に株式の売買等を行うことを指します。
もし、大原前社長が自分自身でドンキ株を2018年10月11日以前に売買していれば、インサイダー取引に該当しますが、この事件は違います。
また、なおちゃんが大原前社長から、TOB情報を得た上で株式の買付を行っていれば、インサイダー取引に該当しますが、この事件は違います。
「不正推奨の禁止」とは、重要事実を知りながら、取引を第三者に勧める行為であり、2014年に金融商品取引法へ盛り込まれました。
インサイダー取引をした人以外の規制です。
この法律が制定されたきっかけは、野村證券の営業マンが、みずほフィナンシャルグループの増資が行われる確度が高いという情報を知った上で、営業先の機関投資家に対し「青い銀行がそろそろ来ますよ」という営業行為をしていたのが問題視された件といわれています。
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経済的利益は無関係
ここで重要なのは、大原前社長は、経済的利益を得ていないという点です。
執行猶予が付いたのは、経済的利益を得ていなかったことが大きいようですが、有罪or無罪の判断基準に関しましては、経済的利益についてはガン無視されるようです。
また大原ドンキ前社長の友人が株で儲けた、または損したという結果も関係ありません。
この法律につきましては、こちらでちょっとだけ詳しく紹介しています。ご参考ください。
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IPOAtoZでは、IPOを目指す会社関係者にとって、他山の石になるような事例を紹介しています。
「IPO失敗事例」というカテゴリーの中にまとめておりますので、ぜひご参考ください。
こちらになります。