過去、悪い経営者は関係会社を使って、不正会計や役員等の利得行為に利用したという歴史があります。

そのような背景があるため、関係会社を持つ上場申請会社に対しては、関係会社も審査対象に含まれることになります。

↓のブログで簡単に紹介しております。ご参考下さい。

IPOがなぜ難しいのか、上場準備がなぜ大変なのかという理由

もし、業績が不振な関係会社があれば、相当厳しい審査になります。

ここでは、業績不振の関係会社を保有する会社の場合のIPO審査について説明させていただくとともに、債務超過かつ赤字企業の子会社がありながら上場を達成できた会社の事例を紹介します。

経営不振の関係会社に関する審査

業績不振、かつ財務状況にも不安があるような関係会社が存在する場合、IPOの審査において問題になります。

上場申請会社、ならびにグループに不測の損失を発生させるリスクが大きいためです。

そのような状態にある関係会社がある場合、原則IPO前に売却・清算・合併が求められます。

もし経営不振の関係会社が存在する際、主に以下の4つの点で確認を受けます。

経営不振の関係会社の事業継続の意義は、合理的か

グループ全体の経営において、経営合理化に寄与している場合、また給与賃金体系や勤務体制、評価体系などの人事労務関係上での対策など、上場申請会社とは分社せざるを得ない、または分社する方がメリットが大きいと認められるような場合に限られ、経済的な合理性を説明できない限り、関係会社の整理を求められます。

経済的な合理的理由とは、次のようなケースが考えられます。

経営不振の関係会社に求められる経済的な合理的理由例
  1. 上場申請企業グループにおける新規事業や異分野の事業を展開しているため、給与体系をはじめとする人事面がグループで一本化し辛い関係会社
  2. 海外市場や地方市場を深耕するために存在する関係会社
  3. 他社との合弁である研究開発型の関係会社など

再建計画が立案され、その再建計画は実行可能性が高い計画か

中長期的に再建計画を立案し、事業の成長性、また再建計画の合理性・実現可能性等が慎重に審査されることになります。

まず、その再建計画には、経営不振になっている原因とその原因を打ち砕く定性的・定量的な計画をコアにして、審査担当者を説得させる必要があります。

そして再建計画の大原則は、あくまでも独力で再建する必要があります。

後でも記載しておりますが、親会社を含むグループ会社による過剰な支援により経営維持を図っているような場合、IPOの審査では厳しい判断を下されることになります。

経営不振の関係会社が万が一、倒産したとしても、連結財務諸表に対して、大きな影響は存在しないか

株式会社東芝は、米国子会社のウエスチングハウス社の経営不振により、経営危機に陥りました。

IPOの審査をする担当者側は、このような事態を極小化したいため、子会社の規模に比例して、IPOの審査は厳しくなります。

したがいまして、万が一倒産するような事になっても、連結財務諸表に対し軽微な影響で済む子会社と、特定子会社であるような子会社では審査の重要度が異なります。

なお特定子会社とは↓のような会社になります。

上場会社担当者が認識すべき「特定子会社」とは

さらに重要性に応じて、会計的な手当ての要否の検討がされているかどうかも審査されます。

経営不振の関係会社の経営維持のための取引等は存在しないか

経営不振の関係会社の延命を図っていると疑われるような取引の有無についても審査されます。

IPOで得た資金を経営不振の関係会社の延命のために利用されるのでは?またはその会社を延命させる目的・理由が別にあるのでは?などが疑われるためです。

例えば、↓のような取引が存在すれば、取引解消またはIPO前に清算が求められます。

  • 関係会社が販売する商品やサービスを親会社が市場価格よりも高い価格で買う行為
  • 世間一般での貸付金利より低い金利で貸し付けをする行為
  • 従業員を出向させるものの、親会社が当該従業員の給与を全額負担する行為など

関係会社と取引をするにあたっては、取引条件の設定・変更が一定のルールがあり、そのルールに従って適正に行われているか、またグループ内で競合関係が生じていないか等が確認されます。

審査をクリアできなかった場合の対応

上述の説明をしても、IPOの審査等で認められなかった場合、次のような対応が求められます。

  1. 子会社の解散や清算、または事業売却等を行うことにより、事業から撤退する
  2. 上場申請会社、または黒字化しているその他の子会社との合併または、会社分割、事業譲渡を実施する
  3. 収益改善策の実施、新たな抜本的な対策等を施すことにより、一定の成果が出るまで待つ

対応策の件数は、ブログの中の人のイメージでは、①>②>③となっていると思われます。

債務超過の関係会社が存在する場合の開示

Ⅰの部には、「関係会社の状況」という項目が存在しています。もし関係会社の中に債務超過の会社が存在する場合、その項目の中に以下のような記載が必要になります。

  • 連結財務諸表に重要な影響を与えている債務超過の状況(負債の総額が資産の総額を上回っている状況をいう)にある関係会社があるときは、その旨及び債務超過の金額
  • 連結財務諸表を作成していない場合において、重要な債務超過の状況にある関係会社があるときは、その旨及び債務超過の金額

      債務超過の特定子会社を存続させたままIPOを達成した事例

      特定子会社とは、重要な位置づけのある子会社のことをいいます。

      したがいまして、もし特定子会社が債務超過になっている場合、特定子会社以外の子会社が債務超過になるよりもIPO審査においてハードルが高くなります。

      2019年1月以降の東証での上場達成企業(TPM除く)の内、2023年1月までに債務超過の子会社を持ちながら、上場達成できた会社は19社存在します。

      しかしその内、少数ですが、赤字かつ債務超過状態の特定子会社を持つ会社がIPOを達成した事例が数社存在します。

      もし、上場を目指す会社のグループに債務超過の特定子会社が存在している場合、この事例を元に証券会社や取引所を相手にして、交渉できる材料になると考えます。

      ↓の記事でその事例を紹介しています。

      【IPO事例-2】赤字かつ債務超過の特定子会社を存続したままIPOをした事例

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