登山には「登る勇気より引き返す勇気」といった言葉があります。

登山途中で天候や体調が悪化しても、頂上に近い場所であればあるほど、途中で下山することを躊躇してしまいます。

登山は、引き返す勇気や判断が極めて重要です。実はIPOも同じです。

IPO準備を開始した当初は、IPO準備を中断・延期する決断を躊躇なく実行できますが、IPOが目前になればなるほど、IPO準備を中断・延期する勇気が高くなります。

2019年11月1日に東証マザーズへ上場した株式会社ダブルエーは、上場した日から約1カ月半後の12月13日に営業利益・経常利益・当期純利益が、2019年11月1日に発表した値から20%を超える下方修正になる発表を行いました。

ダブルエーは、下方修正に至った理由を次のとおりであると説明しています。

ダブルエーが2020年1月期の業績を下方修正した理由

香港において 2019 年逃亡犯条例改正案に反対するデモが発端となり、10 月時点では「五大要求」の達成を要求する大規模な反政府デモとなっております。主催者発表で最大約 200 万、香港警察発表で最大約 33.8 万人が参加しているとの情報もあります。デモにより主要道路の占拠、地下鉄駅の封鎖等が続いており、販売店舗の営業中止及び営業時間の短縮が長期化しております。香港情勢においては引き続き苦戦が続くものと予想されることから当初予想を下回る見込みであります。
また、国内において 9 月に起きた台風 15 号、10 月に起きた台風 19 号の影響により、出店先である商業施設の休館による販売店舗の営業停止及び営業時間の短縮が発生したことで売上高が減少となりました。

(出所:株式会社ダブルエー 2019年12月13日「連結業績予想の修正に関するお知らせ」より)

下方修正の発表を受け、翌日の株価は、売り注文が殺到し、ストップ安になり、発表直前の株価(4,260円)から6営業日で1,230円(株価は3,030円まで)も下がりました。さらにその日以降、コロナショックの影響もあり、株価は下落し、2,000円前後を推移しています(本記事作成時点までの株価推移です)。

対策

ダブルエーは、12月13日のプレスリリースで、9月や10月にあった台風や香港デモの影響が大きかったと述べています。

ということは、ダブルエーは、業績予想の発表時点(11月1日)で、すでに台風や香港デモによって販売店舗が営業停止や時間短縮をしていることを認識しているはずです。しかし、11月1日の発表には、それについて一切触れていません。

これを真に受けると、ダブルエーは予算統制もしくは開示姿勢・体制に疑いがある会社として評価せざるを得なくなりますが、ブログの中の人は、違う推察をしています。

IPO直前に台風や香港デモの影響を精査しようとすると、IPO延期を検討せざるを得なくなることをダブルエーの経営者が恐れていたのではという推察をしています。

コロナ禍の影響でIPOの承認後、勇気を持ってIPOを取りやめた会社が続出しました。

ブログの中の人は、ダブルエーの経営者も勇気を持ってほしかったと思っています。