「ストックオプション」とは、会社が従業員等に報酬として与える「新株予約権」のことをいいます。

新株予約権とは、自社株を「あらかじめ定められた期間の間」「あらかじめ定められた価格で」「あらかじめ定められた数を」取得できる権利であり、その内容は会社法第236条に定められています。

会社法第236条(新株予約権の内容)の概要
  1. あらかじめ権利行使が出来る株式数(これを「権利行使個数や権利行使株式数、また付与個数や付与株式数」といいます)を定めている。
  2. あらかじめ権利行使をする際に出資する財産の価額(これを「権利行使価格」といいます)を定めている。
  3. 上記2.の「権利行使をする際に出資する財産」に金銭以外が存在する場合は、その内容を定めている。
  4. あらかじめ権利行使ができる期間(これを「権利行使期間」といいます)を定めている。
  5. 新株予約権の行使によって、株式を発行する場合は、増加する資本金や資本準備金に関して定めている。など

ストックオプションとは、あくまでも「従業員等に報酬として付与された新株予約権」に限定されており、その要件を満たさない新株予約権のことは、ストックオプションとよびません。

従業員等とは(「ストック・オプション等に関する会計基準」より)
  • 使用人
  • 取締役
  • 会計参与
  • 監査役
  • 執行役
  • 上記記載の者に準ずる者

ストックオプションは、以下のような流れになります。

ストックオプションの流れ

  1. 会社が”新株予約権の発行”と”従業員等の内、誰に付与をするか(「割当対象者」といいます)”を決議し、割当対象者と会社の間で新株予約権の割当契約書を締結する。
  2. 会社が割当対象者へ新株予約権を付与する。
  3. 割当対象者が「権利行使期間中」に、「権利行使価格」に権利行使個数を乗じた財産(金銭、または金銭以外の財産)を払込、新株予約権の権利行使を行う。
  4. 会社は、自己株式または新株式発行により、割当対象者へ株式を付与する。
  5. 割当対象者が株式を売却する。

IPOを目指すベンチャー企業の多くがストックオプションを導入しています。

ポイント

ストックオプションを導入するにあたって、会計・税務・会社法に関するポイントは以下のとおりになります(非上場会社の場合)。

会計・税務・会社法のポイント
  • ストックオプションを割当する際、ストックオプションの「単位当たりの本源的価値」を見積もり、費用計上をする
  • ストック・オプションの各期末における本源的価値の合計額と、各会計期間中に権利行使されたストック・オプションの権利行使日における本源的価値の合計額を注記で開示する。
「単位当たりの本源的価値」とは

算定時点においてストックオプションが権利行使されると仮定した場合の単位当たりの価値をいう。

その価値の算出方法は、

【当該時点におけるストック・オプションの原資産である自社の株式の評価額】-【行使価格】

税務上の原則
  • ストックオプションの割当日の事業年度において、費用計上額を損金算入できる(法人税法54条の2第1項より)⇒税制非適格の場合
  • 権利行使を行った日の株式時価と、権利行使価格との差額が所得税課税される(【所得税基本通達】(株式等を取得する権利を与えられた場合の所得区分)より)⇒税制非適格の場合
  • 取得した株式を売却する際に、株式の売却価額と行使時の株式の時価との差額が譲渡所得として課税される。
会社法上のポイント(会社法238条、239条他)
  • 新株予約権の内容や数、割当日など(総じて、「募集事項」といいます)を株主総会で決議する必要がある。
  • 募集事項の決定は、取締役会設置会社の場合、取締役会に委任できる(ただし、当該委任決議を株主総会で決議する必要がある)。
  • 従業員等の中から新株予約権の申し込みをさせ、その申込者の中から、会社が新株予約権を割り当てる者と割り当てる数を株主総会(取締役会設置会社の場合は、取締役会)で決議する。

株式上場の準備段階で導入するストックオプションの中で、最も一般的なストックオプションは、税制適格ストックオプションです。

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