上場を目指すとなると、「〇〇株主」という類似用語が多く出てきます。

その中で、よく出てくる用語の一つとして、「主要株主」という用語が存在します。

ここでは主要株主について、説明します。

主要株主とは

「主要株主」は、金融商品取引法第163条第1項に定義されています(金融商品取引法には、その他にも異なる定義が存在しますが、IPO準備にはあまり関係ないと思われるため、省略させていただきます)。

「主要株主」とは(金融商品取引法第163条第1項)

自己又は他人(仮設人を含む。)の名義をもつて総株主等の議決権の百分の十以上の議決権(取得又は保有の態様その他の事情を勘案して内閣府令で定めるものを除く。)を保有している株主をいう。

つまり大株主とは、議決権の10%以上を保有している株主と呼ぶため、議決権の無い株式(例えば、自己株式や単元未満株式など)は、大株主を算定するにあたって、計算式から除外されることになります

決して、発行済株式総数の10%以上の株主ではないことに気をつける必要があります

例えば、会社が自己株式取得をした結果、大株主が現れてしまうというような可能性があります。

主要株主の義務

主要株主の内容や動きについては、あれこれ規制等が存在します。主な規制等については、次のようになります。

有価証券報告書等での開示

主要株主は、関連当事者に該当することになります。

したがいまして、主要株主と会社との間で取引があれば、関連当事者取引としてⅠの部等に記載する必要があり、上場審査では、その取引が適正なのかを調べられることになります。

関連当事者については、↓で説明していますので、ご参考ください。

関連当事者と関連当事者等とは【IPO用語】

株式上場の形式要件に影響が出る

東証へ株式上場するための形式要件の中には、流通株式に関する定めがありまして、上場を目指す会社の株式には一定割合、また一定数以上の流通株式が必要になります。

流通株式には、「上場株式数の10%以上を所有する者」の株式が除外される事になり、主要株主が保有する株式は、”概ね”流通株式から除外されることになります(つまり、正確に申し上げますと、流通株式の算定と主要株式は、関係しないことになります)。

上場するための形式要件について、↓で説明しております。ご参考ください。

「市場区分の見直しに向けた上場制度の整備について(第二次制度改正事項)」の解説

主要株主の異動が出れば、報告が必要になる

次のようなことがあった場合、東京証券取引所の有価証券上場規程にもとづいて、開示が必要になります

  • 主要株主であった者が主要株主でなくなる場合
  • 主要株主でなかった者が主要株主となる場合
  • 主要株主である筆頭株主であった者が筆頭株主でなくなる場合
  • 筆頭株主でなかった者が主要株主である筆頭株主となる場合

売買報告書が必要になる

主要株主が証券会社等の金融商品取引業者に委託して株式を売買したとき、当該金融商品取引業者を経由して、売買報告書という報告書を提出する必要があります。

関東財務局の関連サイトは、こちらになります。

したがいまして大株主は、証券口座を開設した証券会社に「私は、この会社の大株主です」ということを伝える必要があります。

主要株主が株式を売ったり買ったりすると、大量保有報告書の提出に注意が必要になります

次のようなことがあった場合、金融商品取引法にもとづいて、土日祝日を除いた5日以内に大量保有報告書または変更報告書を提出する必要があります。

この点に関する主要株主とは、10%ではなく、5%が基準になります

もし提出を忘れてしまうと、課徴金を課されてしまうため、注意が必要です。

  • 新たに発行済株式総数の5%超を取得したとき
  • 前回に大量保有報告書を提出した後、株式を購入または売却によって、1%以上の増減をしたときなど

主要株主の売買規制

主要株主による株式売買は、株価に影響を与えることが多いことから、主に次のような規制が存在します。

  1. 主要株主が6カ月以内に売買して利益を得ると返還を求められる可能性があります
    • 主要株主が6ヶ月以内に株式の売買を行い、利益を得た場合には、上場会社等もしくは株主は金融商品取引法にもとづいて、その利益を会社に提供するよう請求を行うことができるようになります。
  2. 主要株主は、一定以上の空売りができません
    • 主要株主は、信用取引等を利用して、自らが保有している自社株式等の額を超えて売付(空売り)を行うことは出来ません。

主要株主と大株主の違い

主要株主とよく似た言葉として、大株主があります。

主要株主と大株主の大きな違いは、次になります。

  • 主要株主:自社株式の保有比率に関する用語
  • 大株主:自社株式の保有順位に関する用語

したがいまして大株主でありながら、主要株主では無いという株主は存在します。

大株主については、こちらで紹介していますので、ご参考ください。

大株主【IPO用語】

主要株主と支配株主の違い

支配株主とは名前のとおり、会社を支配している株主です。

一方、10%程度しか株式を所有していない主要株主は、会社を支配しているとは言えません。

つまり主要株主ではあるが、支配株主ではない株主は存在します。

支配株主に関する用語説明は、こちらにあります。

支配株主