新株予約権付社債とは

新株予約権付社債とは、会社法第2条22号で「新株予約権を付した社債をいう」と定義づけられています。社債として、一定の利息を支払い、償還日までに額面金額の全額を返済するという社債としての側面を持つ一方、株式に転換することによって返済を免れることができるという株式としての側面も持っています。

一般的に新株予約権付社債を引き受ける投資家は、満期に償還を受けることを目的としていません。満期を迎える前に社債が株式に転換され、将来的に転換された株式の価値が上がることを期待して投資をすることが一般的です。

表 新株予約権付社債のメリットとデメリット

 

メリット

  • 普通社債に比べて金利が低く設定されやすい
  • 満期で償還が困難になりそうになった際、株式による転換により償還が免れることができる
 

デメリット

  • 株主総会の特別決議や登記等、会社法上の手続きが必要になる
  • Ⅰ億円以上の新株予約権付社債を募集する場合、有価証券届出書の提出が必要になる
  • 希薄化に留意する必要がある

新株予約権付社債は、アーリーステージにある会社にとっては、有効な資金調達手段のひとつとして考えられています。

トビラシステムズの目論見書

2019年4月25日に東証マザーズへ上場したトビラシステムズ株式会社の目論見書には、新株予約権付社債について、以下のようなことが書かれています。

表 無担保転換社債型新株予約権付社債

発行年月日~償還期限 2015/3/31~2022/3/31
金利 1.9%
担保 無担保

2015/3/31時点でのトビラシステムズの業績は、前期に引き続き赤字であったことからも、金融機関が無担保かつ低金利で借り入れが困難であったのではと推察します。

新株予約権付社債の事例

表 無担保転換社債型新株予約権付社債の発行事例

社名 割当対象者 上場時
トビラシステムズ株式会社 事業会社 一部あり
株式会社ギフティ 不明 なし
GMOフィナンシャルゲート株式会社 不明 なし
株式会社ロコガイド 役員 なし
株式会社あさくま 事業会社 なし
株式会社ギークス 投資ファンド なし
株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイド 不明 なし

これらの事例のほとんどは、発行した日時が不明でしたが、ほとんどがアーリーステージの段階で発行していたようです。

希薄化抑制型転換社債

新株予約権付社債による資金調達は、ベンチャーにとって有効な手段のひとつです。しかしその額が大きいと、希薄化を招き、発行価格やIPO後の株価の形成に悪影響が出てしまうおそれがあります。

そこで最近、希薄化を抑制する新株予約権付社債の類型として「希薄化抑制型転換社債」というものがよく使われています。「希薄化抑制型転換社債」には「現金決済条項」が盛り込まれています。

現金決済条項
  • 行使価額を超える部分(新株予約権者が獲得する利益)についてのみ株式を交付
  • 額面に相当する部分は、株式ではなく現金を交付

現金決済条項を付すことによって、本来株式で交付すべき部分について現金が流出することになりますが、発行株式数を抑制できるメリットがあります。投資家にとっても、現金決済条項の存在によって、経済的価値自体に相違が発生しないことメリットとして考えられます。