反社会的勢力と関係が深い会社は、上場が出来ず、一発アウトです。

したがいまして、上場準備を始めると上場準備の専門家から「反社会的勢力との取引に気をつけてください」とか「反社チェックが必要です」と言われることになります。

そこで証券会社の担当者やIPOコンサルに対して「反社会的勢力とはどういう人たちですか?」「反社チェックは、具体的にどのようにするのですか?」と質問してみてください。

大概が「ヤクザです」とか「新聞記事などを検索して調査するんですよ」クラスの回答で終了です。

その程度の回答は、誰にでもわかりますよね。

これは、上場準備の専門家自身が、反社会的勢力排除に向けた実務経験をしていないためです。

また詳しく説明しているWebサイトも見当たりません。上場準備専門の本も、サラーっとしています。

そこで上場準備における反社会的勢力排除に向けた体制などについて、私なりに調べてみました。

なお約2万字になる記事になっています(反社に関するサイトの中で一番の量だと思います)。

記事の内容につきましては、ブログの中の人がまとめておりますが、内容の正確性については、保証出来ません。

反社会的勢力の定義

企業が反社会的勢力との関係を遮断しなければいけないという事に対しては、容易く理解できると思いますが、そもそも反社会的勢力とはどのような人や団体が反社会的勢力に該当するのでしょうか?

反社会的勢力の定義については、色々な定義がありますが、「上場準備を行う企業にとっての反社会的勢力の定義とは何か?」という説明を求められると、日本証券業協会の「定款の施行に関する規則」第15条が基本になっています。

この規則によると、以下のような団体や個人が反社会的勢力になります。

暴力団

暴力団とは、身体的な暴力行為や脅迫、恐喝など仕掛けるようなことをする団体、つまりヤクザのようなイメージであることが一般的な認識だと思います。なおYoutubeに「ヤクザ」と入力すると↓のような動画が出てきました(なおIPOAtoZでは、こちらの動画に出ている方々をヤクザ、または反社会的勢力であると、断定しておりません。くれぐれも誤解のないようにお願い申し上げます。)。

しかし、上場会社の関係者が認識すべき暴力団の定義は、一般的な暴力団の認識やイメージと若干異なっているようです

上場会社が理解すべき暴力団の定義は、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第2号に定められています。

「暴力団」の定義(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第2号)

その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む。)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体をいう。

そこで「暴力的不法行為等とは何か?」を理解する必要があります。

暴力的不法行為等とは、「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第1号」に規定する暴力的不法行為等のことを指し、その条文のリンク先が、「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律施行規則」の第1条になっています。

つまり、「『暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律施行規則の第1条』に書かれているような事を助長するおそれがある団体が、暴力団である」と定義されています。

暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律施行規則の第1条の内容は、58も区分がありまして、その内容を確認しますと、次のような団体も暴力団に含まれることがわかります。

多くの会社が注意しなければいけないと思われる暴力団例
  • 使用者が労働者に対し、強制労働を強いているような企業
  • 公衆衛生上有害な業務に就かせる目的で、職業を紹介する職業紹介事業者
  • 未登録の金融商品取引業者
  • 無許可で建設業を営んでいる建設業者
  • 弁護士以外の者が、報酬を得る目的で訴訟事件等の弁護士業務を行う法人
  • 不正な手段で免許を受けた宅地建物取引業者
  • 環境省令で定める技術上の基準を守らない産業廃棄物処理業者など

「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律施行規則」の第1条を読めば、暴力団とは「山口組」というような”一般的に認知されているヤクザ”に限定されていないことがわかります。

つまり、上場を目指す会社が理解しなければいけない暴力団の定義とは、一般的に知られている暴力団だけではなく、無許可で事業運営をしている業者、また不法な事業運営を続けるような業者なども暴力団として含まれていることから、相当広範囲に及ぶことがわかります。

したがいまして、暴力団に関しては、表1のような認識が必要になります。

表1 暴力団に関する一般的な認識と上場を目指す会社が持つべき認識の違い

暴力団に対する一般的なイメージ 上場を目指す会社が持つべき認識
暴力団の特性 暴力行為や脅迫、恐喝など仕掛けるようなことをする団体 暴力行為や脅迫、恐喝などを仕掛ける団体とは限らない
反社チェック 犯罪歴やニュースを雑誌や新聞記事でチェック 資格や免許、届出等の保有状況も含めてチェック
風貌・外観 入れ墨、小指無し、家紋。。。 一見、紳士が多い

暴力団員

暴力団の構成員のことを暴力団員とよびます。

重ね重ね申し上げますが、暴力団員とは、↓のような人たちだけを想像しやすいですが、決してそうではないことを理解しましょう。

暴力団準構成員

暴力団又は暴力団員の一定の統制の下にあって、暴力団の威力を背景に暴力的不法行為等を行うおそれがある者又は暴力団若しくは暴力団員に対し資金、武器等の供給を行うなど暴力団の維持若しくは運営に協力する者のうち暴力団員以外の者を「暴力団準構成員」とよぶようです。

今たまたま、偶然、Youtubeで「過激派」を検索すると↓のような動画が出てきました(なおIPOAtoZは、この動画に出ている杉並区の区議員を暴力団準構成員、または暴力団、つまり反社会的勢力に該当する人と申しておりません。単に「オシャレなヘルメットをかぶるファッションセンス抜群な女性」としか考えておりません。くれぐれも誤解のないようにお願い申し上げます)。

暴力団関係企業

暴力団員が実質的にその契約に関与している企業、暴力団準構成員若しくは元暴力団員が実質的に経営する企業であって暴力団に資金提供を行うなど暴力団の維持若しくは運営に積極的に協力し、若しくは関与するもの又は業務の遂行等において積極的に暴力団を利用し暴力団の維持若しくは運営に協力している企業をいいます。

実質的に」や「積極的に」の線引きが困難なため、例えば「A社を野村証券では反社会的勢力と判断しているが、大和証券は反社会的勢力であると考えていない」というような会社が多数存在します。

実際、ブログの中の人が勤めていた会社では、「暴力団関係企業」として判断して主幹事証券会社から降りた会社が、他証券会社に主幹事が移って上場準備を行っていた例がありました。

暴力団関係企業に関しては、表2のような認識が必要になります。

表2 暴力団関係企業に関する一般的な認識と上場を目指す会社が持つべき認識の違い

暴力団関係企業に対する一般的な認識 上場を目指す会社が持つべき認識
上場会社 上場会社であれば、暴力団関係企業ではない 上場会社であっても、暴力団関係企業が存在する
知名度 有名企業であれば問題ない 有名企業の中にも暴力団関係企業が存在する

テレビCMを出しているような有名企業の中にも暴力団関係企業があることは、事実です。

総会屋等

総会屋等とは、企業等を対象に不正な利益を求めて暴力的不法行為等を行うおそれがあり、市民生活の安全に脅威を与える者をいい、主に「総会屋」と「会社ゴロ」があります。

  • 総会屋

総会屋とは、単元株を保有し、株主総会で質問、議決等を行うなど株主として活動する一方、コンサルタント料、新聞・雑誌等の購読料、賛助金等の名目で株主権の行使に関して企業から利益の供与を受け、又は受けるおそれがある者のことをいいます。

ブログの中の人が、大手電機メーカーに勤務していたとき、総会屋に関する事件があり、社内で逮捕者も出ました。

その事件以降、その会社は、総会屋との関係を拒絶すると同時に、総会屋対策の一つとして、株主総会の最前列に若手従業員を座らせ、総会屋等が暴れると机でバリケードを作って役員を守るというリハーサルをしています。

ブログの中の人は、社長を守るための人柱となるべく、その一員に加わりました。

他人のために死ぬなら、何度も社長なんかのために死にたくないと思いました。

  • 会社ゴロ

会社ゴロとは、総会屋とは違い、総会屋以外で企業等を対象に不正に利益を求めて暴力的不法行為等を常習とし、又は常習とするおそれのある者をいいます。

アマゾンの創始者であるジェフベゾス氏は不倫スキャンダルをネタに脅迫されていたそうです。こちらに記事があります。

このようなスキャンダルを見つけて、口外しない見返りに会社へ金銭を要求するような者が会社ゴロです。

社会運動等標ぼうゴロ

社会運動若しくは政治活動を仮装し、又は標ぼうして、不正な利益を求めて暴力的不法行為等を行うおそれがあり、市民生活の安全に脅威を与える者をいい、「社会運動標ぼうゴロ」と「政治活動標ぼうゴロ」に分けられます。

  • 社会運動標ぼうゴロ

社会運動標ぼうゴロとは、人権問題や環境問題等の名を借りて、企業等に対して違法、不当な要求を行う個人または集団です。

いくつかのサイトを確認しましたが、松江地区建設業暴力追放対策協議会と岡山市のサイトが最もわかりやすいと思いました。

「松江地区建設業暴力追放対策協議会」の社会運動等標ぼうゴロに関するサイトは、こちらになります。

岡山市のサイトは、こちらになります。

  • 政治活動標ぼうゴロ

政治活動標ぼうゴロとは、街宣活動等による組織の威力を行使して、企業等に対して違法、不当な要求を行う個人または集団です。

Youtubeで【政治活動 街宣活動】で検索したところ、トップに出てきた動画がこちらです。

特殊知能暴力集団等

これまでに掲げる暴力団以外のものであって、暴力団との関係を背景に、その威力を用い、又は暴力団と資金的なつながりを有し、構造的な不正の中核となっている集団又は個人をいいます。

例えば、暴力団からの情報を元にして、不法な取引方法で株式売買するような集団をいいます。

暴力団準構成員の疑問

国会議員野田聖子元総務相の夫・文信氏は、週刊誌「週刊新潮」を訴えていました。

この記事によりますと、国会議員野田聖子元総務相の夫・文信氏は、次のような方になるようです。

  • 約10年間、暴力団「昌山組」に在籍していた
  • 暴力団「昌山組」は、1999年に解散。国会議員野田聖子元総務相の夫・文信氏は、「昌山組」は、その解散を機会に、暴力団から離れる

そこでよくある疑問は、元暴力団員はいつまで反社会的勢力に該当するのか?反社会的勢力の家族や親類、友人などは、反社会的勢力に該当するのか?があります。「私は、昨日、暴力団を辞めたので反社会的勢力では無くなりました」ということはありえませんね。

原則は、専門家にご相談いただきたいと思いますが、会社でそのような場面に遭遇した際の参考になればと思います。

暴力団の期間

自治体によって、多少の解釈が異なっているようです。

東京都暴力団排除条例によりますと、例えば「暴対法に基づく中止命令等を受けた日から3年が経過していない者」の3年基準と「暴力団員の行った暴力的不法行為等の共犯等として刑に処せられて、その執行が終わった日から5年を経過しない者」の5年基準の2パターンがありまして、反社会的勢力としての悪質度などによって分けているようです。

一方、福岡県暴力団排除条例では、暴力団員でなくなった日から5年を経過していない人を暴力団員等といい、暴力団員と同等の位置づけにあります。つまり暴力団員でなくなった日から5年を経過した人は、暴力団員または暴力団員等から外れることになります。

一般的には、福岡県暴力団排除条例にあるような、「暴力団でなくなった日から5年」が一般化しているようです。

それに関する新聞記事を見つけましたので、紹介させていただきます。こちらになります。

西日本新聞社が行ったアンケート
  • 九州7県の地方銀行やメガバンクなど22行に対し、文書でアンケートを実施
  • 全22行に暴排条項が存在
  • 15行は、暴力団を離脱後も5年間は組員とみなして普通預金口座の開設を断る
  • 2行は、暴力団を離脱後5年未満でも口座開設を柔軟に対応
  • 離脱期間に関係なく、口座開設不可の銀行が存在

(出所:西日本新聞 2019/9/11 「元組員に口座 銀行敬遠 「離脱5年は開設拒否」7割 九州22行アンケート」より引用)

暴力団関係者の範囲

反社会的勢力の配偶者、家族や親類、友人は反社会的勢力に該当することになるのでしょうか?

これは、条例によって異なるようです。

例えば、東京都暴力団排除条例の解釈では、次のようになります。

東京都暴力団排除条例における暴力団関係者の範囲
  • 暴力団又は暴力団員が実質的に経営を支配する法人等に所属する者
  • 暴力団員を雇用している者
  • 暴力団又は暴力団員を不当に利用していると認められる者
  • 暴力団の維持、運営に協力し、又は関与していると認められる者
  • 暴力団又は暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有していると認められる者
    • 相手方が暴力団員であることを分かっていながら、その主催するゴルフ・コンペに参加している場合
    • 相手方が暴力団員であることを分かっていながら、頻繁に飲食を共にしている場合
    • 誕生会、結婚式、還暦祝いなどの名目で多数の暴力団員が集まる行事に出席している場合
    • 暴力団員が関与する賭博等に参加している場合など
東京都暴力団排除条例における暴力団関係者から除外される事例
  • 暴力団員と交際していると噂されている
  • 暴力団員と一緒に写真に写ったことがある
  • 暴力団員と幼なじみの間柄という関係のみで交際している
  • 暴力団員と結婚を前提に交際している
  • 親族・血縁関係者に暴力団員がいるなど

東京都暴力団排除条例では、暴力団員の配偶者や家族について明記されていません。

しかし一方、静岡市暴力団排除条例には、次のような属性にある人に対して、静岡市の入札案件に参加資格が与えられていないようです。

  • 暴力団員と生計を一にする配偶者
  • 婚姻の届出をしていないが、暴力団員と事実上婚姻関係と同様の事情にある者

なお、静岡県暴力団排除条例は、こちらになります。

つまり東京都では、暴力団員と結婚を前提に交際している人を暴力団関係者から除外している一方、静岡市では暴力団員と事実上婚姻関係と同様の事情にある者を実質的に暴力団関係者であると見做しているように思えます。

利益供与の禁止

事業会社は、その事業活動を通じて暴力団員に不当な利益を得させること、つまり利益供与をしないよう努めなければいけません。

そこで「利益供与とは何?」を理解する必要が出てきます。

次に事例を紹介します。

利益供与に該当しない事例
  1. 相手が暴力団員等の「規制対象者」であることを知らなかった場合
    • レンタカー業者が会合のための送迎用に使用するとの説明を受けてマイクロバスを貸したところ、貸与した相手が暴力団員であることが後から判明した場合
  2. 提供した利益が「暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなること」を知らなかった場合
    • 飲食店が個人的に使用すると思い暴力団員に個室を貸したところ、結果的に組織の会合として使用されてしまった場合
  3. 提供した利益が「暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなること」にならない場合
    • ホテルや葬祭業者が身内で執り行う暴力団員の冠婚葬祭のために、会場を貸し出す行為
    • コンビニエンスストアなどの小売店が、暴力団員に対して日常生活に必要な物品を販売する行為
    • 飲食店が、暴力団事務所にそばやピザを出前する行為
    • 新聞販売店が、暴力団事務所に新聞を定期的に配達する行為
    • 神社・寺院等が、暴力団員が個人として行う参拝等を受け入れる行為
  4. 法令上の義務又は情を知らないでした契約に係る債務の履行として利益供与する場合その他正当な理由がある場合
    • 暴力団事務所に電気やガスを供給したり、医師が診療行為を行うなど法令に基づいて行われる行為
    • 建築物等の維持保全など、適法な状態を保つために、暴力団事務所の工事を行う行為
    • 弁護士が民事訴訟において暴力団員の代理人になる行為
利益供与に該当する事例
  • 内装業者が、暴力団事務所であることを認識した上で、対立抗争に備えて壁に鉄板を補強するなどの工事を行う行為
  • ホテルが、暴力団組長の襲名披露パーティーに使われることを知って、ホテルの宴会場を貸し出す行為
  • 警備会社が、暴力団事務所であることを知った上で、その事務所の警備サービスを提供する行為
  • 不動産業者が、暴力団事務所として使われることを知った上で、不動産を売却、賃貸する行為
  • ゴルフ場が、暴力団が主催していることを知って、ゴルフコンペ等を開催させる行為
  • 興行を行う事業者が、相手方が暴力団組織を誇示することを目的としていることを知った上で、その暴力団員らに対し、特別に観覧席を用意する行為
  • 飲食店が、暴力団員から、組の運営資金になることを知りながら、進んで物品を購入したり、サービスを受けて、その者に料金を支払う行為

反社会的勢力排除に向けた取り組み

上場準備をする際、反社会的勢力との関係排除に向け、どのような取り組みをすればよいのかというヒントは、東証へ上場申請する際に提出することになる書類「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」にあります。

この報告書の中に「2.反社会的勢力排除に向けた基本的な考え方及びその整備状況」という項目がありまして、その内容を書けるように準備する必要があります。

その項目の記載要領は、コーポレートガバナンス報告書の記載要領で示されています。

「コーポレート・ガバナンスに関する報告書の記載要領」を確認すると、以下のような取り組みを検討することが考えられます。

「コーポレート・ガバナンスに関する報告書の記載要領」より、上場申請会社が反社会的勢力排除に向けて検討すべき取組
  • 倫理規定、行動規範、社内規則等の整備をする
  • 対応統括部署及び不当要求防止責任者を設置する
  • 外部の専門機関と連携する
  • 反社会的勢力に関する情報の収集や管理をする
  • 反社会的勢力に対する対応マニュアルを整備する
  • 研修を実施する

そして、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書の記載要領」では、犯罪対策閣僚会議「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を参考にして、対策することを”柔らかく”おススメしています。

「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」とは、こちらにあります。

この指針の重要ポイントを次にまとめます。

「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」に書かれているポイント
  • 企業は、反社会的勢力との関係遮断を、内部統制システムの法令等遵守・リスク管理事項として明記するとともに、社内規則等の服務規程の中にも規定することが重要と考えられる。
  • 反社会的勢力から不当な要求等を受けた際、反社会的勢力対応部署の要請を受けて、不祥事案を担当する部署が速やかに事実関係を調査する。仮に、反社会的勢力の指摘が虚偽であると判明した場合には、その旨を理由として不当要求を拒絶する。また、仮に真実であると判明した場合でも、不当要求自体は拒絶し、不祥事案の問題については、別途、当該事実関係の適切な開示や再発防止策の徹底等により対応する。
  • 反社会的勢力による被害を防止するためには、反社会的勢力であると完全に判明した段階のみならず、反社会的勢力であるとの疑いを生じた段階においても、関係遮断を図ることが大切である。
  • 企業が社内の標準として使用する契約書や取引約款に暴力団排除条項を盛り込むことが望ましい。
  • 暴力団排除条項と組み合わせることにより、有効な反社会的勢力の排除方策として不実の告知に着目した契約解除という考え方がある。
  • 反社会的勢力に企業の株式を取得されないように対策を講ずる必要がある。
  • 警察署の暴力担当課の担当者や、暴力追放運動推進センターの担当者と、暴排協議会等を通じて、平素から意思疎通を行い、反社会的勢力による不当要求が行われた有事の際に、躊躇することなく、連絡や相談ができるような人間関係を構築することが重要である。
  • 企業が、反社会的勢力の不当要求に対して毅然と対処し、その被害を防止するためには、各企業において、自ら業務上取得した、あるいは他の事業者や暴力追放運動推進センター等から提供を受けた反社会的勢力の情報をデータベース化し、反社会的勢力による被害防止のために利用することが、極めて重要かつ必要である

コーポレート・ガバナンスに関する報告書の記載要領に書かれている内容の一部を紹介させていただきます。

基本方針を定める

反社会的勢力による経営活動への関与の防止や当該勢力による被害を防止するための上場会社の基本的な考え方(基本方針)を定めることになります。

表2に事例をいくつかピックアップします。

表2 反社会的勢力との関係排除に関する基本方針事例

社名 方針 サイト
三菱UFJ銀行 反社会的勢力に対する基本方針 こちらになります。
ヤフー 反社会的勢力に対する基本方針 こちらになります。
SOMPOホールディングス 反社会的勢力への対応 こちらになります。
松村組 反社会的勢力に対する基本方針 こちらになります。
イオンリテール 反社会的勢力に対する基本方針 こちらになります。

社内規則等を整備する

上場を目指す会社は、反社会的勢力排除規程など、社内規則を作ることになります。

ネットサーフィンすると、上場会社のシナネンホールディングス株式会社の反社会的勢力排除規程が出てきましたので参考として紹介させていただきます。
こちらなります。

ブログの中の人が就任している社外取締役の会社の規程、また所有している規程集、さらにレンディップ・コンサルティング株式会社の反社会的勢力排除規程の内容を比較したところ、条文はほぼ同じ構成になっていました。

反社会的勢力排除規程の主な条文
  1. 目的
  2. 反社会的勢力の定義
  3. 所轄部署
  4. 出資を受ける時の対応
  5. 取引開始時の対応
  6. 反社会的勢力の調査方法
  7. 顧客や採用予定者等が反社会的勢力であるとの疑いがある場合の報告プロセス
  8. 反社会的勢力から不当要求を受けた時の対応

また、監査役は、日本監査役協会が公表している「反社会的勢力との関係遮断体制のチェックリスト」を参考にして、チェックリストを作成し、監査にとりかかることもひとつの手段であると考えられます(監査役にとって、このサイトにあるチェックリストは全般的に参考にできると思います)。

日本監査役協会のサイトには、反社会的勢力に関するものだけではなく、あれこれ参考になるツールがあります。↓で紹介していますので、ご参照ください。

日本監査役協会

契約書等に暴力団排除条項を盛り込む

反社会的勢力排除に向けた取り組みの中で、ほとんどの会社が最初に行う活動が契約書等に暴力団排除条項を盛り込むという活動です。

上場を目指す会社は、顧問弁護士に相談しながら、ひな型を作成することが原則になります。

表3に参考モデルを紹介します。

表3 参考モデル

契約書 出所 サイト
不動産賃貸・売買 警察庁 こちらになります。
建設業 日本建設業連合会 こちらになります。
建設業 公共財団法人 暴力団追放運動推進都民センター こちらになります。

対応マニュアルを整備する

ブログの中の人が、現在、携わっている4社の反社会的勢力排除に関する対応マニュアルを確認したところ、当たり前の話ですが、どこも同じような内容でした。

どのマニュアルも「全国暴力追放運動推進センター」が出している情報をベースに作成したと思われます。こちらになります。

研修を実施する

反社会的勢力への対応は、初動対応が重要であり、また一部社員だけではなく、全社員に理解を求めることになります。

中小企業庁が、”えせ同和への対応”について、非常にしっかりした動画を作成して、Youtubeに出していました

この動画は、社員への研修で使えると思いましたので、紹介させていただきます。

基本的な重要ポイントが多くあります。

例えば、断る時の言葉として「結構です」「いいです」というセリフで断るのはダメ。ということなどです。

反社会的勢力を調査する範囲

反社会的勢力も、一般人と同様、スーパーや百貨店等で買い物をしますし、レストランや寿司屋等で食事をします。電車に乗りますし、電気・ガス・水道を使います。このような一般生活を送るために、多くの企業はいちいち入店客や利用客に対して、いちいち反社チェックをしていません。

つまり、多くの企業は、直接的または間接的に反社会的勢力と何等かの取引を行っています。

「上場するためには反社会的勢力との関係を断絶しろ」と言われても、企業が反社会的勢力と取引を完全に断絶することは極めて困難です。

そこで企業が事業活動において、どのような対象までがIPO審査等において、反社会的勢力の調査範囲になるのかの把握が気になるところです。

上場を目指す会社にとって、どのような個人や団体、法人に対する調査が最低限必要になるのでしょうか?

東証が行う反社会的勢力の調査対象

東証へ上場申請する際、「反社会的勢力との関係がないことを示す確認書 」を提出することになります。

その確認書において、反社会的勢力の調査対象に挙げる法人・個人は次のようになります。

東証へ上場申請する際、リストに提出する個人法人
  1. 重要な子会社
    • 連結財務諸表への影響が概ね20%以上(直前事業年度の総資産、純資産、売上高、営業利益、経常利益、税金等調整前当期純利益、親会社株主に帰属する当期純利益のいずれかの項目)の子会社
  2. 役員
    • 役員
    • 役員が最近5年間に経歴(職歴)として関わった全ての会社・団体等
  3. 役員に準ずる者
    • 執行役員、相談役、顧問等
    • 役員に準ずる者が最近5年間に経歴(職歴)として関わった全ての会社・団体等
  4. 重要な子会社の役員
    • 重要な子会社の役員
    • 重要な子会社の役員が最近5年間に経歴(職歴)として関わった全ての会社・団体等
  5. 大株主上位50名
    • 新株予約権の行使等により発行される可能性のある株式も含めた大株主上位50名
  6. 申請会社グループの主要仕入先
    • 直前事業年度の連結ベースで上位10社
  7. 申請会社グループの主要販売先
    • 直前事業年度の連結ベースで上位10社

主幹事証券会社が行う反社会的勢力の調査対象(2023/1/18更新)

主幹事証券会社では、東証が求める調査対象範囲よりも、はるかに広範囲でした。

例えば、代表取締役については、現在の代表取締役だけではなく、会社創立以来、全代表取締役のリスト、また株主については過去3年以内に株式譲渡し、今では株主で無くなった人についても、株式譲渡の経緯の説明を含めリスト提出を求めました。

主幹事証券会社と主幹事契約を締結する前に、主幹事証券会社が調査要請する反社会的勢力の調査対象範囲を確認して、反社チェックシステムを使って自社内で網羅的な事前調査を強く強くつよ~くおススメします。

その理由は、↓で説明しております。

「上場準備作業で最初にやること」とは【初期プロセス】

なお、ブログの中の人がコンサルしていた会社に対し、某大手証券会社は↓【IPO事例-38】のようなリストを求めてきております。

改めて申し上げますが、上場準備をとりかかる上で、極めて大事な初期プロセスです!!!

このリストは、決裁権限規程に影響します。

大手証券会社から提出を求められる反社チェックリスト例【IPO事例-38】

【IPO事例-38】については、IPO AtoZが推進するオンラインサロンにおいて紹介させていただきます。

ぜひご参加下さい!

上場を目指す会社が日頃行う反社会的勢力の調査対象

上場準備をするにあたり、ほぼ全ての管理部門長から出てくる質問があります。「反社の調査対象は、どこからどこまでですか?」

暴力団の中にも新幹線や電車に乗り、トヨタや日産等の自動車を持ち、ユニクロの服を着て、明治のユーグルトを食べ、アサヒのビールの飲み、ソニーのテレビで一家団らんを楽しんでいる人がいます。

ユニクロは服を買おうとしている人、JRは切符を買おうとしている人をいちいちチェックしていません。

上場を目指す会社は、どのようなタイミングでどのような対象に対して、反社会的勢力を調査しているのでしょうか。主な例としては、次になります。

  • 取引先(外注先、仕入先、販売先、リース契約先等)の新規契約時の契約予定先
  • 人材採用選考時(役員選任選考時、顧問等も含む)の採用候補者
  • 増資時や株式譲渡時等の株主候補者
  • 資金や資産(不動産含む)の借入又は貸付を行う際の賃貸借人
  • 接待や寄付をする際の接待・寄付先(可能であれば、接待を受ける場合、寄付を受ける場合も含む)
  • 会社が新規に団体に入会しようとする場合、その団体
  • 継続的な購入(特に雑誌関係)をする場合の購買先

多くの会社で抜け漏れがあるのが、接待・寄付先です。

反社会的勢力と接待・寄付をしている場合、その重要性に金額の軽重は、あまり関係ありません。

反社チェックの方法

上場を目指すとなると、証券会社等から「反社会的勢力の調査・検索(以下では「反社チェック」といいます。)をしてください。」と言われます。

そこで「どうやって、反社チェックするのか?」は、社内で議論になるはずです。

各金融機関や東証、また一部の超大手企業は、独自に反社会的勢力をデータベース化して、検索できるようにした「反社チェックシステム」というシステムを自社保有しています。

しかし、これから上場を目指すベンチャー会社がそのようなデータベースを独自構築することは、不可能と言って過言ではないと思います。

そこで世間では、どのようにして反社会的勢力を調べているのでしょうか。

上場を目指す会社であれば、昨今、インターネットを使った反社チェック専用ツールの利用が不可欠になっているようです。

昨今、上場を目指す会社の中で、反社チェックをヤフーやグーグル検索だけで済ませるような会社はゼロらしく、証券会社からNOとほぼ間違いなく言われます。

そこで今、日経新聞社の日経テレコンという新聞記事検索サービスを使って反社チェックするスタイルが多く活用されています。しかし、それも今や古いらしいです(ひょっとすれば、近い将来、主幹事証券会社から、日経テレコンでの反社チェックは、認められないと言われる可能性さえ出ています)。

その理由等について、次に述べさせていただきます。

上場を目指す会社で必要な反社チェックのレベル

上場を目指す会社に対して求められる反社チェックのレベルとは、主に次のような点があります。

ネガティブキーワードの更新がされている

今や、ロシア政府に近い組織や個人も反社会的勢力に位置づけされていることは間違いないと思われます。

つまり反社会的勢力の概念や範囲は、時期によって変化するということになります。

日経テレコンを使った反社チェックであれば、自社内でネガティブキーワードを検討して更新しなければいけません。このようなワードを社内で検討して対策・更新することは、限界があります。

また、それとは少し意味が異なりますが、野球の外野のポジションの中で「中堅」以外の2つのポジションがあります。この2つのポジションである「〇翼」や「〇翼」という単語もネガティブキーワードとして検索することが考えられます。

しかし「〇翼」や「〇翼」を日経テレコンで調べてみると野球に関する記事ばかりになってしまうのではないでしょうか?そこで日経テレコンだけで反社チェックをしている会社は、「〇翼」をネガティブキーワードから、除外している会社が多いと思われます。

以上のような理由から、日経テレコンによる反社チェックは、上場を目指す会社として、信頼性が乏しいと判断されつつあります。

反社チェックを適切に実施したエビデンスがある

反社チェックは、取引先等との新規契約時や人材採用時、さらに一定額以上の資産購入や経費消費に関する稟議決裁時等に必要になります。会社によっては、毎日複数回、反社チェックを要する事になります。

そして、”反社チェックが適切なタイミングでキチンと行われているかの内部監査”を実施することが上場前に求められます。

そこで、”反社チェックが適切なタイミングでキチンと行われているかの内部監査”について、少し詳しく説明します。

反社チェックに関する業務フローに関する内部監査は、主に次の2点での監査が求められます。

  • 反社チェックをマニュアルや規程等に定められた適切なタイミングで実行している
  • 反社チェックを行う実務担当者がサボっていない

が必要になります。さらに内部監査しやすいよう反社チェックを行った記録を整理した台帳等の整備も検討が求められます。

一方、日経テレコンは、記事検索をしたログ、つまり反社チェックした形跡が残りません。

そこで、日経テレコンで記事検索する都度、検索画面をプリントアウトもしくはPDFで保存することで証跡を残す手間が求められます(こんな面倒な手順を行っている会社は、限りなく少数だと思います)。

なおIPOAtoZは、日経テレコンの機能やサービスを否定しているのではありません。日経テレコンは、そもそも反社チェックを主眼とするサービスではないため、上場を目指す会社が日経テレコンを反社チェックのツールとして応用することは間違っているのではと申しているに過ぎません。マーケティングや事業企画などにおいては、最高のビジネスツールのひとつであると考えております。

(実は、ブログの中の人は、この記事を書く直前まで、日経テレコンで十分だと思っていました。しかし、あるIPOコンサルから「それは、もうあかん!」と言われてしまいました。)

反社チェック専門ツールの活用

以上のような理由から、上場を目指す会社にとりましては、もはや遅くとも上場直前々期末までに反社チェックの専門ツールを契約して、運営することが求められそうです。

ググってみますと、色々あるようですね。新聞記事だけではなく、SNSもチェックするサービスもあるようです。次に紹介します(なお、IPOAtoZは、これらのサービスの機能や品質等について、一切、保証等をいたしません。また、これらの会社やサービスと一切関係を持っておらず、アフィリエイト収益等も一切ありません。神様に誓ってステマではありません)。

反社チェック専門ツールに対して、ありがちな誤解

反社チェック専門ツールを活用しようとする方にありがちな誤解があります。

それは反社チェック専門ツールが「Aさんは、反社会的勢力です!」または「A社は、反社会的勢力ではありません!」というように反社チェック専門ツールが反社会的勢力かどうかを判断してくれるという期待に対する誤解です。

反社チェック専門ツールは、調査対象者を反社会的勢力であるかどうかの判断をしてくれません(判断する反社チェック専門ツールが存在する場合、非常に画期的であり、勇気のある決断だと思います)。

「あの反社チェック専門ツールがあなたを反社だって言っているから、取引出来ません」と利用者が言ってしまえば、反社会的勢力であるAさんは、反社チェック専門ツールの運営会社に殴り込みをするかもですよね。

反社チェック専門ツールの運営会社は、そんな覚悟出来ませんよね。

反社会的勢力であるかどうかの判断は、反社チェック専門ツールの利用者側が行うことになり、反社チェック専門ツールは、その判断を助けるツールにすぎないという事になります。

したがいまして反社チェック専門ツールを導入したとしても、反社会的勢力に関する知識を反社チェック専門ツール任せには出来ず、利用者側にも一定の知識の知識を要することになります。

反社チェック専門ツールの限界と対応策(2023/1/23更新)

上場前には、主幹事証券会社が反社チェックを行うため、主幹事証券が上場を目指す会社の取引先や役員等のリスト提出を求めます。

主幹事証券会社は、上述するような反社チェック専門ツールを使って調査をするのでしょうか?

ブログの中の人は、1社しか証券会社に勤務していませんが、主幹事証券を行っているような大手証券会社の答えはきっと「否」と出てくると思われます。

これ以上の説明につきましては、↓のブログ記事をご覧いただく事になります。

反社チェック専門ツールの限界と対応策【IPO事例-39】

この記事の目次は、以下のとおりになります。

  1. IPOAtoZがおススメしている反社チェック専門ツール
  2. 反社チェック専門ツールと大手証券会社の反社チェックシステムの違い
  3. 上場を目指す会社の対応策と注意点

IPO AtoZが推進するオンラインサロンでは、この内容を参考にした議論を行っています。

ぜひご参加下さい!

反社チェックマニュアルの整備

反社チェックをする際のマニュアルの整備を検討することになります。

反社チェックマニュアル作成のポイントは、次の3点であると思います。

  1. どのような場面で反社チェックが必要になるのか。または、どのような場面で必要としないのか。
  2. 継続的(最低1年に1度)に反社チェックを必要とする対象者は、どのような人・団体なのか。
  3. 反社チェックを行った記録をどのようにして残すのか。

ブログの中の人が最近、上場準備企業のために作成した反社チェックマニュアルを参考にして、ひな型化してみました。某証券会社の引受部門担当者のチェックが入っていますが、内容を保証するものではありません。

コピペしてお使い頂いて可能ですが、IPOAtoZは著作権を放棄したわけではありません。

ご利用頂く際は、info@ipo-atoz.comまでご一報ください。やる気が出ます。

反社チェックマニュアル

1.チェック内容について

調査対象とする属性
  • 取引先(法人・個人)

※ 寄付金の寄付先及び接待交際の相手先含む

  • 取引先の代表
調査方法 【某反社チェック専門ツール】より取得した犯罪情報等の確認

2.使用媒体

【某反社チェック専門ツール】

3.検索キーワード

【某反社チェック専門ツール】内部にて、設定済。暴力団排除条例に基づく、暴力団属性情報や属性隠しへの対応施策となる行為要件を検知する為のリスクキーワードや広くグレー情報も検知を行う事が出来るよう設定。

4.【某反社チェック専門ツール】での検索方法

  • 個人名での確認

検索条件に氏名を入力しチェックする。

  • 法人名での確認

検索条件に法人名を入力しチェックする。

5.犯罪行為への関与が疑われる記載があった場合

【某反社チェック専門ツール】で検索した結果、犯罪行為への関与が疑われる記載があった場合、次のような行動を実施する。

    1. 反社チェックを行った者が、反社会的勢力としての関与が疑われると判断した場合、速やかに〇部部長に相談する。
    2. 〇部部長は、速やかに社内関係者を集め、検討する。
    3. 反社会的勢力としての関与が明確となった場合は、取引不可と判断する。
    4. 上記3.において反社会的勢力に属している者であることが明確に記載されていないものの、反社会的勢力に属していることが疑われる場合は、暴追センター等にて、調査対象者が暴力団関係者かどうかを確認してもらい、その結果をもって判断する。
    5. 上記4.に該当しない場合であっても、犯罪行為の内容及びその行為の重大性に着目して、当該案件の担当者並びに統括責任者と審議の上、取引の可否を判断する。

6.取引先(寄付金の寄付先及び接待交際の相手先を含む)及び新規取引先の調査

取引先(寄付金の寄付先及び接待交際の相手先を含む)について反社会的勢力のチェックを行う。

新規取引先については、原則としてすべての取引先を対象とし、取引先が法人の場合は代表者(必要に応じて役員も含む)についても反社会的勢力か否かの確認を行う。

7.継続的調査【少なくとも「東証へ上場申請する際、リストに提出する個人法人」については、1年に一度は、継続的に反社チェックを行う必要があります。業種業界によっては、以下に挙げた対象に新たな対象を加えることが求められるかもしれません。】

1)継続的調査対象

以下の取引先等については、原則毎年1回、継続的に反社チェックを行う。【本当は、毎年〇月〇日に入れたかったのですが、現場から反対があったので、このような表記になっています】

  • 当社グループの仕入先及び販売先(直前事業年度の連結ベースで上位10社。連結での算出が困難な場合は、各社の別で差し支えない。)
  • 当社グループの役員
  • 当社グループの役員に準ずる者(執行役員、相談役、顧問等)
  • 大株主上位50名(新株予約権の行使等により発行される可能性のある株式も含めて順位を計算すること)
  • 不動産賃貸借人
  • 産業廃棄物業者
  • 関連当事者等
  • 特別利害関係者等

2)継続的調査方法及び調査記録保管【「某反社チェック専門ツール」を場合を書いております。】

【某反社チェック専門ツール】による調査を行う。

継続的調査方法については、「取引先一覧画面」より「最終スクリーニング日:1年以上前」に調査を行った法人個人に関し「前回差分」の記事を選択することにより、調査することとする。そして「一括証跡」を選択し、画面を印刷し、保管すること。

8.反社チェック対象外

下記に該当する取引先は反社チェック対象外とする。【反社チェックを導入する時、どの会社でも、どの範囲の取引先等が反社チェックが必要になるのかが議論になるはずです。そのため、反社チェックの対象外を明確化すべきだと思います。】

  • 官公庁及び官公庁関係団体
  • 電力、都市ガス、水道及び官公庁の許認可を得て地域に特化して営業を行い、その地域で同業他社に依頼ができない等の理由がある取引先
  • 既存取引銀行で、当社グループの口座が開設され取引が行われている銀行
  • 第一種金融商品取引業者、生命保険会社、損害保険会社等、金融庁からの反社会的勢力排除に係る検査を受けている会社等
  • 鉄道、航空機、船舶等の輸送サービス
  • 宅配便、郵便等の生活インフラサービス
  • 当社〇に入会しようとする個人【⇒この会社は、教育事業をしています。入会希望者に反社チェックをすることは現実的では無いため、対象外としています】
  • 商品を現金またはクレジットカードによる即時決済にて、単発で当社商品等を購入しようとする個人法人【⇒この会社は、教育事業をしています。入会希望者に反社チェックをすることは現実的では無いため、対象外としています】
  • 文房具、備品や消耗品、ガソリン等を販売する小売店、ECサイト

9.役員・従業員の調査

役員・従業員の選考の際に反社チェックを行う。

【某反社チェック専門ツール】にて、証跡機能で文書化、または証跡のURLを保管する事により、調査結果を実施証拠として保管する。(「某反社チェック専門ツール」の証跡をURLで保管出来るのは、1社だけらしいです。なお文書保管の場合、著作権上、問題が発生するリスクがあるようです」

10.改廃について

本マニュアルの所管部門は、管理部とし、改廃はの取締役会の決議に基づくものとする。

反社会的勢力排除に関する相談先

反社会的勢力排除に関する相談先は、その道の専門家に相談すべきだと思います。

表4に相談先になりそうな所をピックアップしましたので、ご参考下さい。

表4 反社会的勢力排除に関する相談候補先

団体 サイト
各都道府県暴追センター こちらになります
各都道府県警察本部 こちらになります
匿名通報ダイヤル こちらになります
全国各地の弁護士会 こちらになります

相談する際には、確認を求める契約相手の氏名、生年月日(可能であれば住所)が分かる資料や、お持ちの場合は暴力団排除の特約を定めた契約関係資料、契約相手が暴力団関係者の疑いがあると判断した資料(理由)などを準備しましょう。

気をつけなければいけない業界

反社会的勢力と関与しないように予防するための基本として、まず”反社会的勢力との関係が強いと思われる場所や業界に近づかない事”が重要になるはずです。

そこで「反社会的勢力との関係が強いと思われる場所や業界」というものは、どういうものでしょうか?

芸能界、格闘技界

大阪市では、次のような例を出しています。

暴力団の利益になる使用の例
  • 斎場における暴力団員等の組葬
  • 暴力団組長等の襲名披露パーティ
  • 暴力団員等の出所祝い
  • 暴力団主催による歌謡ショー格闘技等のイベント
  • 暴力団員等による慰安旅行の宿泊、宴会
  • 暴力団員等によるスポーツ大会等の行事
  • 暴力団主催による暴対法対策、資金源獲得その他公序良俗に反する会議

出所:「公の施設からの暴力団排除」大阪市より

格闘技や芸能界は、伝統的に暴力団との関係が強いと言われています。

昭和の大横綱や、超大御所の歌手、プロレスラー、名司会者。。。

宣伝広告にタレントを使う際に注意が必要になります。

産業廃棄物処理業者

反社会的勢力との関与については、色々な場面で気を付けなければいけませんが、特に産業廃棄物処理業者との関係について注意が必要であると言われています。

反社会的勢力の産業廃棄物処理業者とは、不法投棄を平気で行うような集団です。

廃棄物処理法には、「排出事業者責任」というものがありまして、委託先の産業廃棄物処理業者が不法投棄を行っていた場合、排出事業者が不法投棄された産業廃棄物の除去等の責任を負うことがあります。

排出事業者責任に関する環境省のサイトをご覧ください。こちらになります。

ブシロードのIPO

2019年7月29日に東証マザーズへ上場した株式会社ブシロードは、上場時に、プロレス運営会社「新日本プロレスリング株式会社」とキックボクシング運営会社「株式会社ブシロードファイト」という会社を子会社として保有しています。

このように格闘技を運営している会社がIPOを果たすというのは、初めてのケースになります。

格闘技業界と反社会的勢力の関係は、歴史が深く、プロレス団体や格闘技団体が、特に地方で興行を行う場合、チケット販売面で暴力団と友好な関係を保っていたという発言は公然とされています。

ブシロードが展開している事業は、格闘技だけではなく、芸能界も深く関与しています。

芸能界も格闘技業界と同様、反社会的勢力との関与の歴史が深く、例えば昭和の歌姫と暴力団組長の関係は有名であり、現在に至ってもクスリで逮捕される芸能人や、吉本興行所属の有名芸人が反社会的勢力と関与をしていたというニュースなどが後を絶ちません。

しかしブシロードはIPOを達成しました。

ブシロードの有価証券届出書には、次のような記載があります。

反社会的勢力排除に向けた基本的な考え方及びその整備状況(出所:株式会社ブシロード有価証券届出書より引用)
  • 反社会的勢力とは一切の関係を持たないこと、不当要求については拒絶することを基本方針とし、これを各種社内規程等に明文化しています。また、取引先がこれらと関わる個人、企業、団体等であることが判明した場合には取引を解消することとしています。
  •  経営管理本部を反社会的勢力対応部署と位置付け、情報の一元管理・蓄積等を行っています。また、役員及び使用人が基本方針を遵守するよう教育体制を構築するとともに、反社会的勢力による被害を防止するための対応方法等を整備し周知を図っています。
  • 反社会的勢力による不当要求が発生した場合には、警察及び顧問法律事務所等の外部専門機関と連携し、有事の際の協力体制を構築します。

ブシロードに対する審査は、上記の内容が有目無実と化していないことが重点的に確認されたものと推察します。

なお、ブシロードが展開しているサービスの利用規約には、いわゆる「反社会的勢力排除条項」が記載されています。

「えせ同和行為をはじめとする不当要求行為対策セミナー」に参加しました(2022年2月17日)更新

公益社団法人人権教育啓発推進センターが無料でセミナーを行っています。

ブログの中の人は、オンラインで参加してまいりました。

そのセミナーは、「えせ同和行為をはじめとする不当要求行為対策セミナー」でありまして、そのサイトは、こちらになります。

このセミナーで配布された資料「えせ同和行為対応の手引」は、こちらになります。

音声の調子が悪く、聞き取りが難しい箇所がありましたが、公演者の話を聞きますと、次のような話がありました。

  • コロナの影響により、反社からの飲食店等に対する不当要求は減った
  • SNSで反社と関係があった会社と拡散され、金融機関からの融資が断われてしまい、1週間後に倒産した会社がある
  • 会社案内や登記簿、現地の本社の状況等からは、暴力団事務所かどうか、わからなくなっている
  • 不当防止責任者向けのセミナーがある
  • 暴追センターに相談してきた案件には、今更どうしようもない案件が多い。早めの連携が必要。

総務部門の方は、チャンスがあれば、一度、受講されてみてはいかがでしょうか?無料です。

まとめ

反社会的勢力についてまとめましたが、その考え方や定義を含む実務においては、会社によってまちまちです。

ある証券会社から「反社会的勢力だ!」と決めつけられていた会社が、他証券会社でも同様に決めつけられるとは限りません。

警察などの専門家に相談しながら、進めていきましょう。